第112話
「やっぱり暑いな、ここは……」
げんなりする暑さに火山エリアに到着してすぐに俺はぼやく。
「初めてじゃなかったのか?」
一方、カレンさんは汗一つ流さず涼しいそうな表情をしていた。
「ちょっと前に一瞬だけ来ただけですよ。カレンさんは暑くないんですか?」
そう尋ねるとカレンさんは右手人差し指に嵌めている青い宝石が付いた指輪を見せてくれた。
「この指輪には耐暑効果があるから平気なだけだ」
「へぇーそんな指輪があるんですね」
「アイスゴーレムの核があれば作ってくれるぞ」
「アイスゴーレム……あ、やっぱりあの時の人だ!」
「なんの話だ?」
頭を傾げてカレンさんは尋ねてくる。
「覚えていないと思うけど、雪原エリアで会ってるんですよ、俺たち。て、言ってもお辞儀だけなんですけどね」
「記憶にないな……よく覚えているんだな」
「そりゃ防御力が高いアイスゴーレムをソロで倒してるのを目の当たりにしたら忘れないですよ」
「うーん、やはり覚えていないな、すまない……」
「気にしないでください。それよりも、この暑さをどうにかしないと……」
「それなら――」
カレンさんが何かを言おうとしたら上空から機械の球体が降りてくる。このエリアの案内役だ。
「火山エリアにようこそ! 私案内役を務めさせて頂きますカルツと申します!」
俺はカルツにプレイヤーカードを見せて、スキャンをさせる。もう慣れたもんだ。
「ご協力感謝。なにかお困りなことがあればヘルプ機能をご利用ください」
「ありがとう、なんかあったら頼るよ」
「それでは」
カルツは上空に飛んで行った。
これで、まだ行ってないエリアは砂漠エリアだけになったな。
「あ、話を遮ってしまってすいません」
「大丈夫だ。暑さ対策ならおすすめの店があるから案内しよう」
「お願いします」
カレンさんの後を付いていく。
その間に火山エリアの街を見渡す。街並みはレンガ造りの建物しかなかった。
木材だと燃えてしまう可能性があるからなのだろう。それに街全体を囲うように白いバリアみたいのが張られている。火山エリアだし、火山灰対策なのかな?
大通りも沼地エリアよりかは賑わっていて、プレイヤーの数は多いな。
「沼地エリアよりかは人が多いんですね」
「火山エリアは様々な鉱石類が採れるからな、そのせいもあるのだろう」
「へぇー」
鉱石ならクロガネの出番だな。今度来る時にでも鉱石集めをするのも悪くないか。まぁクロガネが暑さに耐えれたらの話だけど……あとで、四体を呼び出して確認しないとだな。
しばらく大通りを進み、屋台が少なくなって行くとあちこちで、カンカンと鉄を叩く音が聞こえる場所にきた。
「ここら辺は、生産職が店を構えているエリアだ」
「樹海と海原にも似た場所ありますよね」
「沼地エリアにもあるにはあるんだが……全然人がいないんだ」
「あー確かに、人があんまりいない所で店を構えても売れないもんですよね」
「着いたぞ」
そんな話しをしていたら目的のお店の前に着いた。
お店の入り口近くにあるショーケースには一式装備が飾られていた。
「いらっしゃいませ」
カレンさんの後に続いて店内に入るとNPCの女性店員が出迎えてくれた。
「ここでは耐暑の効果がある装備が沢山あるんだ」
「あ、装備投影か」
「そういうことだ」
「じゃあぱぱっと装備探してきますね」
「ゆっくりで構わない」
「それならお言葉に甘えて」
俺は店内を歩き回りながら装備を探していく。
結局選んだのは、ブイの字ネックの七分丈の黒いシャツに、生地が薄い黒の長ズボンの二つにした。
店員の所に持っていき装備投影を行った。
「おお、暑くない。これなら動けそうだな。カレンさん、お待たせしました」
「うぬ、なかなか似合っているぞ」
まじまじと俺を見て感想を述べるカレンさん。なんか恥ずかしいだが……
「あ、ありがとうございます。そ、それじゃ準備も出来ましたし、行きましょうか」
「そうだな、行くとしよう」
お店を後にした俺たちは、道なりに進んで行き街の外に出る。さ、初めての火山エリアだ。カレンさんの足手纏いにならない様に気をつけよう。