第11話
モンスターがいない丘で俺は装備を確認した。
最初に見たのは悪鬼蜘蛛の衣って言う上下黒色のロングシャツとズボンだ。
装備効果は任意で気配を遮断できる。通気性もよくて着心地もいい。
次に見たのは光帝飛蝗の長靴。茶色の革で作られてい脛の辺りにひし形の装飾が施されていた。
装備効果は跳躍力の上昇。試しに履いて飛び跳ねてみるとかなり高くまで飛べた。
「おお! 着地時の衝撃がほとんどない! 凄いなあ!」
履き心地がよくて俺はこの長靴を気に入った。
次は鋼鎧蟻の硬革鎧。色は濃い目の茶色。蟻って書いてあるけどほとんど革で出来ている気がする。
装備効果は防御力と魔法防御力が上昇だ。着けてみると物凄く軽い。着けていないのかと錯覚するほどの軽さだ。
次のは将軍蟷螂の革手袋。黒色で指が切れているタイプ。
装備効果は打撃攻撃が低確率で斬撃攻撃に変わるそうだけど、殴ればいいのかな? もしくは盾で殴るのかな?
俺は近くにある木を拳で殴ってみて検証してみたけど、何回殴っても効果は出なかった。
今度は盾で何回殴ってみると木に斬られたような傷が出来る。かなり低いみたいだな。出ればラッキーぐらいで思っていた方がいいな。
最後の装備は聖天道虫のマント。表生地は森で隠れるには最適な緑色だけど、裏生地が真っ赤で白の水玉模様が付いたちょっと変わったマントだ。
「装備効果は火傷、麻痺、毒、睡眠、出血、衰弱、暗闇、凍結、気絶、石化、混乱、魅了の耐性っと……盛り過ぎだな」
効果を読んでて俺は思わず苦笑いした。
耐性ってことは効かないじゃなく、効きづらいってことだよな。気を付けよう。
それよりもなんであの女性がこんな上等な装備をくれたか分からないけど、くれるなら貰っておこう。
「よし、コガネお待た……あれ? コガネ?」
装備に夢中になっていた俺はコガネがいないことに気付く。辺りを見渡すと遠くからコガネの声がして、そちらに向かうとコガネは角の生えた兎みたいなモンスターに噛みついていた。
角の生えた兎のモンスター――ホーンラビットは体をぴくぴくさせて口から泡を吹いている。
ステータスを見ると毒と麻痺状態になっているみたい。麻痺? コガネにそんなスキルあったけ?
そう思いコガネのスキルを確認したら新しく【麻痺の牙】ってスキルを覚えていた。
うーん、なかなかエグイコンボだな。しばらくしてホーンラビットの体力がなくなり素材だけ落として消滅した。
「お待たせコガネ。早く街に戻ろうか」
「シュ」
コガネが頭に乗っかったのを確認して俺は走り出す。マップを見ながら道を進んで行き橋の所まで戻ってこれた。
「やば! もう五時過ぎてんじゃん! まだ距離あるしどうしょう……」
とりあえず走ろうとしたらメッセージが来て足を止めた。
『ハルナ君、こんばんは、昨日ぶりだね。今大丈夫?』
『モレルさん、こんばんは。大丈夫――あ、モレルさん。今どこにいますか?』
『私? 今ははじまりの街にいるよ』
『ちょっと今急いでて……すいません! そっちに転移します!』
俺はコガネを戻してからメニュー画面を操作してモレルさんのプレイヤーカードを選び転移した。
視界が一瞬暗転したら目の前にモレルさんが立っていた。
「急に転移するなんて、驚いたよ」
「ごめんなさいモレルさん。今度埋め合わせするから、それじゃ!」
「あ、待って」
ログアウトを押そうとしたらモレルさんが呼び止めた。
「この後ログインする?」
「え、多分……夕飯食べてからだけど」
「それじゃ、夜の八時にここで待ち合わせは大丈夫かな?」
「うーん、それぐらいなら」
「じゃあ決まり。待ってるからね」
「わかりました」
手を振るモレルさんに軽く頭を下げ俺はログアウトした。
ヘッドギアを外して急いでキッチンに向かうと兄ちゃんが料理していた。
「ごめん兄ちゃん。当番俺なのにやらせちゃって……」
「いいよ。それぐらい楽しんでいるんだろう? 話を聞かせてくれるか?」
「うん!」