第109話
「はぁ〜……眠い……」
大欠伸しながら俺は弁当に料理を詰めていく。
少しだけ寝過ごしたけど兄ちゃんが起きてくるまでには出来そうだな。
「よし、出来た」
弁当袋に仕舞うと兄ちゃんの部屋のドアが開く音が聞こえてきて、直ぐに兄ちゃんはリビングに来た。
「おはよう〜……早いな春名」
「兄ちゃん、弁当出来たから持ってて」
「助かる」
「朝飯食べるなら作るけど?」
「うーん、コーヒーとパンだけでいいや。顔を洗ってくる」
そう言って兄ちゃんは洗面所に向かった。
俺はパンをトースターで焼き、コーヒーを注いでテーブルに置く。
俺は洗面所に行って、顔を洗っている兄ちゃんに言う。
「兄ちゃん、俺寝るから」
兄ちゃんは顔をタオルで拭いて俺を見る。
「徹夜したのか?」
「してないしてない、ちょっと寝足りないだけ」
「夏休みだからってあんま徹夜すんなよ。課題は終わったのか?」
「七月中には終わる予定だから」
「それならいいが……ゲームばっかりしないでたまには外に遊び行けよな、もしくはバイトしていいからな」
「わかってる、じゃ部屋に戻るね」
俺は自分の部屋に戻ってベットに横になり瞼を閉じた。
だけど、あんな眠たかったのに寝付けず何度も寝返りを打つ。
そうしていると玄関の鍵の音が聞こえてくる。兄ちゃん行ったのかな?
俺はスマホに手を伸ばして時間を見ると、いつも兄ちゃんが仕事に行く時間だった。
眠気もどっかに行ってしまい、俺はダラダラと動画を見ながら時間を潰すことにした。
しばらく動画を見ていると、突然電話が掛かってくる。電話してきたのは颯音だった。
俺は仕方ないく出ることにした。
「もしもし……朝早くからなんの用だよ颯音」
『春名、今日昼から遊びに行っていい?』
「昼から? 悪い……昼から予定があるから今日は無理だ」
『じゃあ明日とかは?』
「明日かあ……多分大丈夫だと思うけど、無理そうなら後で連絡するよ」
『わかった、じゃあ取り敢えず明日行くから』
「用件はそれだけ?」
『え、あ、そうだけど?』
わざわざ電話して言う必要ないじゃんと内心思った。
「そんじゃ切るぞー」
颯音と通話を終わらせ、すっかり眠気が消え失せた俺は少し遅めの朝飯を食べることにした。
食べ終わり部屋に戻って課題を進める。ある程度進みふと時計をみると、カレンさんとの待ち合わせ時間まで三十分前になっている気が付く。課題を片付けせずに俺はログインをした。
沼地エリアの転移門を潜り、樹海エリアに移動して、転移門付近を見渡す。だけどカレンさんの姿はどこにもなかった。早く来過ぎたようたな、適当に時間を潰すか。
「見つけたぞクソガキ!」
なんか後ろの方が騒がしいな、どっか行こっと。
歩き出すと数人のプレイヤーが前を塞いでくる
俺は嫌々振り返ると、そこにはモレルさんのことをナンパしていた二人組だった。前を塞いでいる奴らも仲間か。
「おじさんたち、通報したと思うんだけどなんでいんの?」
「お前のせいでペナルティを喰らい何週間もログインが出来なかったが、ようやくペナルティが終わったのさ! だから、クソガキに復讐しに来たんだ!」
「復讐って意味分かります? おじさん」
「舐めた口を……! ぶっ殺してやる!」
「何事だ!」
騒ぎを聞き付けてNPCの門兵たちが集まってくる。
「NPCの分際で邪魔するな!」
取り押さえようとする門兵たちを蹴散らして俺に向かってくる。すると、一人の門兵が俺の前に出て、俺を見る。その門兵は友人のヴェルガだった。
「これ以上の行いは見過ごせません! 通報させて頂きます!」
「うるせ!」
通報しようとしたヴェルガを殴り飛ばす。
俺は殴り飛ばされたヴェルガを受け止めた。
「無茶すんなよヴェルガ、大丈夫?」
「平気だよ……いてて……」
「平気じゃないじゃん」
俺は暴れるおじさんを睨んだ。
「おじさん、俺と戦おうぜ? おじさんが勝ったら俺のことはこき使って構わない。だけど、俺が勝ったら二度と俺や友人たちに関わらない条件でどうだ?」
「お前が俺に勝つだって? がはは! そんなことはあり得ねーよ!」
「負けるのが怖いのおじさん?」
「……ぶっ殺してやる……!」
「じゃ決まり」
俺はおじさんに対戦を申し込む。
「ルールは時間無制限の体力が無くなった方が負けでいいよね?」
「追加だ、こっちは五人だ!」
「一対五ってこと、負けるのが怖いんだおじさん。まぁ別に良いけど」
おじさんが対戦を承諾すると俺とおじさんとプラス四人を囲うように大きいステージが生成された。
おじさんたちはそれぞれ武器を構える。
大盾一人、剣士一人、弓士一人、魔法使いが一人。そして、おじさんはギザギザした刃の大剣か。面倒くさいけど本気を出すか。