第105話
「トランスシールド展開」
白い球体が六角形の盾の姿に変わる。
盾をカイトに飛ばし、【ラウンドシールド】を展開する。
「カイト! 交代するよ!」
「おせーぞハルナ!」
そう言ってカイトが後退する。
「春名、手伝いいる?」
いつの間にか俺の隣に来ていた颯音が提案してくる。
「平気だ、休んでて。あ、颯音」
「ん?」
颯音と話しながらハイウィッチの攻撃を防ぐ。
その間にシロガネが吸い込まれて白くなった球体を引き寄せ左手を翳すと、掌に機械の開閉口の革手袋になった。
「【共鳴技・ハニーライフボム】」
ガシャっと開閉口が開くと緑色の球体を出てきて颯音に渡す。
「これは?」
「回復爆弾、それで体力を回復してくれ」
「了解」
颯音は一瞬で姿を消した。相変わらず早いな。
ミシッと【ラウンドシールド】から音が鳴る。
そろそろ壊れると思っているとシロガネが語り掛けてくる。
『私の共鳴技に回復効果あるの、知ってたの?』
「ついさっき。なんか【共鳴】した時に頭に流れてきたんだ。話は後だシロガネ」
『わかった』
俺はコガネとシロガネが吸い込まれた球体を引き寄せ、右手にコガネ、背中にクモガネをそれぞれを展開する。
その時、展開していた【ラウンドシールド】が割れた。
「【共鳴技・フロストウィング】」
すぐさま、周囲の水を凍らせて壁を作って攻撃を防いだ。
「魔法が使えるのかい!?」
ハイウィッチが驚いている間に地面から鋭い氷の針で攻撃をする。ハイウィッチは見た目に反して機敏に動いて躱した。見た目詐欺だろう、あれは。
「お返しだよ!」
ハイウィッチの周りにいくつも炎の玉が生成され放たれた。それを、俺は氷の礫で相殺。そのせいで周囲が白く視界が悪くなる。
「【共鳴技・スパイダースネットスパーク】」
俺はその隙に電気を帯びたワイヤーでハイウィッチを捕らえる。
「なに!? ぎゃああああ!」
電気が流れ、ハイウィッチは悲鳴を上げる。
煙が上がっているハイウィッチにおまけと言わんばかりに氷漬けにする。
「クロガネ!」
『遅い』
クロガネが吸い込まれた球体を引き寄せると右腕に先端が巨大なドリルになっているアームが装着された。これがクロガネの【共鳴】か。
『合わせてハルナ』
「おう! 【共鳴技・ブレイカードリル】!」
ギュイーンとドリルが回転していく。
俺は氷漬けされているハイウィッチ目掛けて飛んでいきドリルで貫くと、氷に罅が入り崩れるとハイウィッチの残り体力も削りきって倒した。
「ふう、終わった」
「春名! ヒドラがすぐそばまで来てるよ!」
「安全エリアまで逃げるぞ!」
休んでいた颯音とカイトが走ってくる。休めないか。
急いでハイウィッチの素材を回収する。
「飛んで逃げるぞ」
駆け寄ってきた颯音とカイトが俺に掴まってくる。
俺は二人を抱え浮き上がる。
「重い……!」
「頑張って春名!」
「頑張れー」
「お前らな……! シロガネ、手伝ってくれ……!」
そう言うと球体からシロガネが分離した。
「ビー!」
シロガネも協力してくれたおかげで浮き上がることが出来た。
大分飛んでからクロガネが語りかけてくる。
『ビートルワーム忘れてる』
「あ、それ先に言ってよクロガネ……」
『ふん』
俺は内心落ち込む。
とりあえずマップに目印をつけて安全エリアに向かった。
しばらく空を飛んで安全エリアに到着。二人を降ろしてから俺も降りる。
「やっと安全エリアだ。春名、さっきの凄かったよ! 初めて見たけど……」
「ん? そりゃあ初めて使ったからな」
「またチートスキルか?」
「ちげーよ! 普通のスキルだよ!」
俺はスキルを解除すると、四体の【共鳴】も解除され、武器と一緒に紋章に戻っていく。
「安全エリアなんてよく見つけたね」
「偶然だよ、このあと二人はどうする?」
「俺は一旦ログアウトするわ、なんか疲れた……」
「俺もログアウトするかな、颯音は?」
「レベル上げしてるよ。あとでログインするんだろう? 雪原エリアでレベル上げしてるから戻ったらメッセージ飛ばして」
「了解、街に戻るとしますか」
「「飛んでいこう!」」
颯音とカイトの意見が合う。
「い・や・だ!」
俺は全力で否定した。
「「楽なのに……」」
「知らんがな。ほら、街に戻るぞ」
俺たちは時間を掛けて歩きで街に戻った。