第103話
「そろそろ降ろすけど、モンスターの反応は?」
「うーん……無い、かな。安全そうだ」
「了解」
ゆっくり降下していき、地面の上にカイトを降ろす。
カイトに続いて俺も地面に降りた。
「ここら辺なのか?」
「おう。さて、探しますか」
「ここで何を探すんだ?」
「クワガタ」
「クワガタ? あの昆虫の?」
俺は頷く。
「俺はそれを探すためにここまで来たのか……」
「言ってなかったっけ? クワガタのモンスターを仲間にするためって」
「聞いてない…ドラゴンを仲間にするときは手伝ってもらうからな!」
「別にいいけど」
「よっしゃ! 早速探すぞ!」
俺とカイトは青い色の円内をくまなく探した。
「なぁ、本当にいるのか? 全然見ないんだけど……」
あれから大分探したけど、クワガタのモンスターは未だに見つかっていない。
「てか、お前のモンスターたちにも手伝ってもらえよ!」
そう言われコガネたちを見ると、コガネは糸を張り巡らせて蜘蛛の巣を作り、シロガネは黒い花の蜜を集めている。クモガネはいつも通りに俺にくっついて、クロガネは相変わらず地面に潜っていた。
「いいよ、俺たちで探そう」
「お前……甘やかしすぎだろう」
カイトは溜息を零すも探すのを止めなかった。
俺も探すのを再開していると、足元の地面がモリモリと盛り上がり、クロガネは姿を見せる。
振り向て見上げるクロガネの顎には白い物体を挟んでいた。
「クロガネ、その咥えているのなんだ?」
そう尋ねるとクロガネは白い物体を俺の足元に置く。
「どうしたんだ?」
騒ぎを聞きつけてカイトが近寄ってくる。
「なんだそれ?」
「さあ~?」
カイトと一緒に見ていると突然もぞっと白い物体は動いた。俺とカイトは思わず離れてしまう。
「お、おい! なんか動いたぞ!」
俺はゆっくりと近づいて行くと、白い物体の目と合う。
直ぐにステータスを確認したら白い物体はビートルワームと名前が出る。こいつモンスターだったのか。ビートルってことはカブトムシ? カブトムシか~クワガタじゃないのか。
「クロガネ、他に居なかった?」
「……」
クロガネは無言で地面に潜った。また見つけてくれるいいけど。
「そいつ、モンスターだよな?」
「そうだよ」
「襲われないのか?」
カイトは触れてみようとするとビートルワームは噛み付こうとする。
「敵対してるじゃん!」
「カイトにはな。俺は虫系のモンスターには襲われないから」
「なんだそれ!? チートスキルかよ! 俺にも教えてくれ!」
俺はビートルワームを優しく持ち上げて宥める。すると、ビートルワームの動きがだんだん鈍くなっていき目を閉じた。寝たのかな?
「ビー?」
蜜を集め終わったのかシロガネが戻ってくる。
「寝てるっぽいから静かにな」
「ビー」
シロガネは頷いて、俺の左肩に止まってビートルワームを見守る。
「無視しないでほしいんだけど……」
「無視はしてない、答える気がないだけだ」
「それぐらいいいじゃんかよ!」
ぶうぶう文句言うカイトを無視してクロガネの帰りを待つ。
しばらくするとクロガネが帰ってくる。その顎には白い物体を挟んでいた。
俺は直ぐに確認したら、今度もビートルワームだった。少しだけガッカリする。
「キシャ?」
「なんでもない、ありがとうなクロガネ」
俺はクロガネの頭を撫でた。
「ハルナ、ヒドラが一体こっちに向かってくる。直ぐに離れるぞ」
「どっちから来てる?」
カイトは指さして方向を教える。
「飛んで逃げるぞ」
「分かってる――カイト後ろ!」
カイトの後ろに無数の蔦が迫っていた。
カイトは逃げ切れずに蔦に捕まってしまった。
「ひーっひっひっひ! こんなところに人間がいるとは運がいい!」
カイトの隣で杖をついている鼻が大きくて三角帽子を被ったしわくちゃな魔女が姿を見せる。
急いで確認すると、ハイウィッチというモンスターだった。しかもレベルは40とヒドラと同じ。
ヒドラが迫ってるというのに、面倒くさいモンスターが出てきたな。
「ハルナ! 俺のことはいいから逃げろ!」
「そんなことできるかよ! 待ってろ! 直ぐに助け出す!」
「出来るかね坊や! ひーっひっひっひ!」
高笑いをするハイウィッチ。
「【雷鳴の拳】」
目にも止まらない速さでハイウィッチを一発殴って吹き飛ばし、蔦に捕まっていたカイトを助け出して俺の隣に颯音が着地した。
「ナイスタイミングだ颯音!」
「へへ、間に合ってよかったよ」
颯音はカイトに絡まっている蔦を引きちぎる。
「えっと、どちら様?」
「友人の颯音、カイトに紹介したかった奴。で、こっちがカイト、イベントの時に一時パーティーを組んだプレイヤー」
「よろしくカイト!」
「よろしく、さっきは助かったぜ」
「話はそんぐらいにしてハイウィッチが起きるぞ」
むくりと起きるハイウィッチの目は真っ赤になっていた。
「貴様ら!!」
体を震わせて相当激怒しているようだ。
「本気で行くぞ!」
「分かってる!」
「やられたらやり返す!」
俺と颯音とカイトはそれぞれ武器を構えた。
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