第102話
「ああ、もう! 面倒くさいモンスターしかいないのかここは!」
カイトは大声で文句を言う。
今俺たちはたまたま見つけたモンスターが入ってくることが出来ない安全エリアで休憩しているところだ。コガネたちも各々で休憩している。クモガネだけは俺に付きっきりだけど。
ここに来るまで色んな癖の強いモンスターに遭遇した。
麻痺にさせてくるパラライズバイパー、毒にさせてくるポイズントード、混乱させてくるブラックバット等々。一番厄介だったのは幻惑を見せてくるラフレシアという巨大な花のモンスターだ。幻惑のせいで誤って俺とカイトは同士討ちになりかけたのだ。まぁキレたカイトがラフレシアを焼き払ったんだけどね。
「な、まだ目的地には着かないのか? 疲れたんだけど……」
マップを見ながら俺は答える。
「あと半分くらい」
俺の答えを聞いて溜息をつくカイト。
「もう少し休みたい」
「了解、ゆっくり行こう」
俺はその間に自分のステータスを確認した。
レベルは37まで上がった。SPは[10]ある。今回も【トランス】に振ろう。
SPを[7]振って【トランス】を合計[40]にしたら変形回数が二回分増えた。
更に続きには、二回分の変形回数を使えば更に特殊な変形も出来ると書いてあった。
特殊な変形って何だろう、わからん。
別々に使った方がいいと思うけど……うーん、やっぱりわからん。一旦保留にしよう。
「シュ!」
気が付くとコガネとシロガネが俺の元に来ていて クロガネが地面から頭を出している。
「なぁ、いつになったらモンスターを仲間にする方法を教えてくれるんだ?」
「モンスターと絆を作る、ただそれだけ」
「は? どういうことだ?」
カイトは頭を傾げる。
「モンスターと共闘する、モンスターを助ける、モンスターに餌付けをする」
「それだけ?」
「敵対しているモンスターは無理だけど、基本的にそれでうまくいけば仲間に出来る」
「へぇー、じゃこいつらはそうやって仲間にしたんだな」
「あ、シロガネとクロガネだけは卵から孵って仲間にしたんだった」
「モンスターの卵……そんなものがあるんだ、なるほどな」
「カイトも仲間にしたいモンスターとかいるのか?」
そう尋ねるとカイトは少し考える。
「やっぱりドラゴンを仲間にしたいかな、居るかは知らんけど」
「ドラゴンか~俺も見たことないな~」
「よし、大分休めたから行こうぜ」
「おう、みんな一旦戻すぞ」
コガネたちを戻してから安全エリアを出る。
モンスターになるべく出会わないように慎重に進んで行ったけど問題が生じた。
「カイト! お目当てのドラゴンだぞ!」
「ドラゴンはドラゴンだけど、ヒドラじゃねーか!」
「「「シャアアアア!!」」」
毒と炎のブレスを吐きながら三つ首のヒドラに見つかってしまい絶賛逃走中。
ヒドラのレベルは40。今の俺たちじゃ太刀打ちできない相手だ。どうにかして撒かないといけないけど、遮蔽物がほとんどないこんな場所でどうやって……
「ハルナ! 俺を抱えて空に逃げれねーか!」
「あ、それだ。カイト少しだけ時間を稼いでくれ!」
俺は【凍てつく鱗粉】を使って自分の姿を消して離脱した。
「え、おい! 畜生!」
ヒドラは真っ直ぐカイトを追い駆けていく。今のうちに俺はクモガネを呼び出す。
「キュゥ!」
クモガネは頭をすりすりしてくる。
「早速だけど【共鳴】を頼む」
「キュゥ!」
光の粒子になったクモガネは武器に吸い込まれ、武器は背中に行きマントと一体となり薄い円盤の姿に変わる。
「行くぞクモガネ」
『うん!』
白くて透明な翅を展開して飛び立つ。
「ハルナまだかーー! もう無理!?」
カイトにヒドラの牙が届きそうにな直前で、カイトを抱きかかえ空に逃げる。
「何とか間に合ったな」
「おせーよ! 食われそうになったわ!」
「ごめんごめん」
「「「シャアアアア!」」」
地上にいるヒドラは俺たちにブレスを吐くが届かなかった。
「【共鳴技・フロストウィング】」
周囲の温度が一気に下がる。
「寒っ! なんで急に寒くなって……てか、お前の体力……!」
「少し我慢して」
俺はヒドラの足元の水を凍らせて針を作り足を刺す。ヒドラは炎のブレスを掛けて溶かして抜け出した。体力は減ったが直ぐにヒドラの体力は回復していく。回復能力持ちか……うん、逃げよう。
聳え立つ氷の壁を作ってカイトを抱えて逃げ去る。
ヒドラの姿が見えなくなって俺は共鳴技を解いた。
「おい、体力がかなり減ってるけど大丈夫なのか?」
俺はシロガネを呼び出した。
「シロガネ、回復を頼む」
「ビー!」
体力が少しずつ回復していく。
「今更だけど、その姿……」
「説明は後でするから、ちょっと迂回する」
少し遠回りになるけどヒドラに見つからないように迂回して目的地の場所まで飛んで向かった。