第10話
「さて、ここはどこだろうな……」
俺はマップ機能を使って今いる場所を確かめた。
「マジか……森の奥に来てたのかよ」
ここら辺はレベル10は無いとキツいってヴェルガが言ってたっけ。
どうにか向こう側に渡らないとな。俺はマップを見ながら道を探した。
崖沿いに歩いて行けば橋みたいなものがあるみたいだな。戻り方もわかったしさっさと戻ろう。
モンスターに襲われても対処出来るように盾を展開して進んで行く。
しばらくすると丸太を組み合わせて作った橋が見えてきた。
頑丈に作られていそうだけど渡っても大丈夫だろうか。
「シュ」
「ん? どうした?」
「シュ!」
コガネは森の方を指さす。
「あっちになんかあるの?」
コガネは頷き俺の頭から飛び降り森の方に歩き出した。
俺はコガネの後ろ姿を見ながら軽く溜息をつき、直ぐに追いついてコガネを持ち上げ頭に乗せた。
「危険だと思ったら逃げるからな」
コガネの案内で森の中を進んでいく。
何体かモンスターを見かけたけどレベル差があり過ぎて敵わないと思い、迂回しながら進んで行くと白い花が咲き乱れている丘に出た。
「すげぇ綺麗なところ……コガネが来たかったのここなの?」
そう聞くとコガネは頭から飛び降り白い花に近づき中身の蜜を飲んでいるようだ。
俺は花を踏まないように腰を下ろしてコガネが満足するのを待った。
「あれ? コガネがもう一体いる?」
コガネを見ていると横から別のスパイダーが現れ一緒に花の蜜を飲み始める。さらに、一体と次々に増えていく。スパイダーだけではなく、他のモンスターも姿を見せ始めた。
蜻蛉の姿をしたモンスタードラゴンフライや、黒い蝶の姿したモンスターバタフライ、蜂の姿したモンスターハニービーなど俺が見たことない虫のモンスターたちが花に集る。
レベルはどのモンスターも15以上。数も圧倒的だし、無理だよな……
今はまだ俺の存在に気づいていないようだけど見つかったら抵抗しても瞬殺だろうな。俺は思わず苦笑いした。
『人ガ何故ココニイル?』
背後から冷たく威圧感のある声を掛けられ俺は冷や汗を流す。俺は恐る恐る振り返った。
そこにいたのは腰までの長さがある黒い髪に黒のドレスを纏い、背中には幾何学模様が入った翅を持った容姿端麗な女性だ。
この女性のステータスを見て俺は顔を青ざめさせる。
女性の名前は読めなかったけどレベルは50。このゲームの上限に達していた。
それに、読めない名前の隣にBOSSと表示されていた。
普通に考えるならここら一帯を統べるボスモンスターってことだよな。ここまでくるともう色々と諦めがつくな……
『我ノ声ガ聞コエヌノカ?』
「あ、いえ。聞こえています。すいません……」
『ナラ、何故スグニ答エヌ? 答エニヨッテハ容赦セヌゾ?』
女性は俺の首元に鋭い鎌を向けてくる。
俺は両手を上げてありのままを伝えた。
「仲間のコガネがここに来たかったみたいで、俺も一緒に同行しただけです。この場所を荒らす気もないですし、あなたたちと戦う気はないです」
『コガネ トハ誰ノコトダ?』
「えっと……スパイダーのコガネって言いまして……いたいた。コガネ!」
大声で呼ぶとコガネは顔を上げるけどまた花に顔を突っ込む。なにやってんだあいつは。
コガネの所に駆けつけ持ち上げた。
「シュ!」
「ごめんって。串焼き買うからそろそろ帰ろう?」
「シュ……」
仕方ないなと言いたげに鳴くコガネを頭に乗せる。
「それじゃ俺達はこれで」
軽く頭を下げ俺は立ち去ろうと踵を返す。
『待テ。オ主ニ尋ネルコトガアル』
「な、なんでしょうか?」
『オ主ニトッテ、ソ奴ハナンダ?』
「コガネがですか? うーん、俺にとって一まだ短い間だけど一緒にいて楽しい仲間かな? まぁ振り回されがちですけど」
『ソウカ。ソノ答エガ聞ケテ満足ダ。行クゾ皆ノ者』
高々に女性が言うと一斉に虫のモンスターたちが空に舞い上がっていく。
壮観な光景に俺はただただ眺めていた。
『オ主ノ名ハ何ト言ウノダ?』
「ハルナって言います」
女性は微笑むと突然風が吹き抜け花弁が舞い上がり俺は思わず目を閉じた。
ゆっくり目を開けると目の前に木箱が置かれていて、一面咲いていた白い花もモンスターたちも何もかも消え去っていた。
「夢……なわけないって痛っ! 噛むなよ!」
「シュ!」
木箱の上に飛び乗るとコガネが木箱を叩く。
「開けろってこと?」
「シュ」
木箱に触れると周りが消え底だけ残りその上に装備一式が置かれていた。