相手の気持ちになって
「ユリエール・フォン・ファステリアス。この人が護衛対象……んー?あっ」
その名前……あぁそうだ!最初に魔法学校に来た時、同じ寮の部屋に入れられそうになった人だ!
「この人……」
「お知り合いですか?」
「知り合いそうになった人ですかね」
実際に顔を合わせた事はないから知り合いではない
「ん?」
「あぁ、僕が学校に来た頃の話覚えてる?」
「え?えと……寮に住むのを辞めて森に住んだとかいうあの時ですか」
「そうそう。その時。寮に住むのを辞めた理由があの人。同室が何故かあの人だったから面倒事にならない様に寮に住むのは辞めたんだよ」
「……」
なんかルクレシアさんが絶句してる
「ん?だって、見ず知らずの女の子と同じ部屋で住むとか正直、気を使い過ぎてリラックス出来ないし、それなら森の中の方が自由だから……」
「王女と同室の部屋割りとか学校側とんでもない事してませんか……」
「だよねぇ?僕もこれ絶対何かの間違いか、僕の首を不敬罪か何かで刎ねたい奴の思惑かなぁって思って回避したんだけど……やっぱりあれおかしいよね?まぁもう終わった話だから気にしてないけど、普通は護衛の人と同室じゃないの?」
「一応、様々な人と交流をするという事で、同室の相手はランダムに決めると言われていましたが、それも最低限男女は分けていたと思います。何らかの不手際で男女の振り分けが混ざってしまったんでしょうか?でも、そんな事……」
「あり得るなぁ……というかやっぱりなぁ」
ニャラ様がなにかやった説ほぼ確定になったぞこれ
「まぁその話はここまでにして、その人の護衛をするけど、ルクレシアさん。良かったら協力してくれる?お礼らしい事は特に何も出来ないけど……そうだなぁ、僕に出来ると言ったらご飯作るくらいかな?もしくはルクレシアさんが何か必要なら取って来るのを頑張りますから。それでどうでしょう?」
「王女の護衛を私に?」
「あー、えっとガチガチの護衛というより、王女の場所の確認。そして何か起きてしまった時に敵の足止めとかをしたいので、少し離れた所で見るくらいで良いかなって。僕も一緒に模擬試合を見るつもりだけど、僕が周りを見て回っている最中に王女の方に敵が行かれたとしても、王女に付いてる護衛と、ルクレシアさんが居れば僕も安心して任せられるんだ」
「分かりました。やります」
これは心強いな。ルクレシアさんも護衛に入ってくれるなら偵察範囲を広げられる。まぁ離れ過ぎても何かあった時にすぐに戻れないからあまり遠くに行けないけど……一応模擬戦をする場所は客席に攻撃が来ない様にバリアが張ってるらしいから対面からの狙撃はそこまで警戒しなくても良いかな
「あ、居ました。あそこです。あのピンク色の髪の2人組が見えますか?」
「なるほど、うわぁ、面倒な位置に座ってるなぁ……ん?」
客席中段。一応通路のすぐそばではあるが、ピンク髪の少女が2人座っている。あれだと背後の客席、前の客席、横の客席、色んな所から狙われ放題だ。せめて一番後ろの列に座ってもらえれば守りも簡単になったのに……あれ?あの片方見た事ある様な……
「2人居る片方は護衛の人で、後ろから見るだけだと判別出来ないから暗殺が失敗する危険性が高いって感じか」
僕が暗殺者だとするなら後ろから不意を突くにしても、間違えれば対象に逃げられるだろうし、合っていたとしても護衛がその攻撃を阻止するかもしれない。護衛の人の技量がどのくらいなのかにもよるだろうけど……
「そうだな……僕が暗殺者だとしたら、殺すだけなら爆破物かな」
何処に座るのか分かっていればその場に爆破物を設置して時限爆弾で狙うのがバレる心配が少ない。周りにも被害が出るけど、護衛諸共葬ってしまえるだろう
「ルクレシアさん」
「何でしょう」
「一応、あの席の周りに誰も近寄らないか見張っててくれますか?あの席に爆発物とか設置されてしまうと困るので」
「そんな!分かりました。監視しておきます」
念の為、模擬試合と護衛対象を同時に見られる最後列の席に座る。ドーム会場的な後ろの席の方が高い位置なので2人を上から視認出来るのでありがたい。怪しい動きで近付こうとする奴が居ればすぐに発見出来る
「さて、とりあえず最初は相手も動かないだろうから僕達も模擬戦を見よう」
「はい」
事を起こすなら会場が盛り上がっている最中だろう。模擬戦の最初の方とか悪いけどパッとしない気がする。有名な人とかが出てきたら注目がそっちに集まるだろうし、ねらい目だと思う。単純に会場で何かテロリスト宣言みたいな事をするならそれは身柄の拘束で暗殺では無いだろうけど……そうだ。相手が暗殺じゃなくテロリスト的な可能性も排除出来ないのか。これは中々に厳しいかも
「何も起きないのが一番だけど、絶対に何か起きる。相手が準備を始めるなら……」
模擬戦を行う所は攻撃がこちらに来ない様にバリアで囲まれるって事はそのバリアで閉じ込める事も可能なのでは?となると、模擬戦をしている最中に客席で「俺はテロリストだ!」みたいな事を言ってもバリアが無ければ魔法とかで無力化されてしまうかもしれない。逆に閉じ込める事が可能なのなら、学園最強とかそういう大物が出てきた時を狙えば、邪魔される可能性が減る
「ルクレシアさん。2、3試合見てから護衛には気合いを入れよう」
「え、そんな感じで良いんですか?」
「僕ならそうするかなって」
相手の力量を確認するのであれば、最強が出てくる前くらいで生徒の試合を見て力量を測り、そいつらが出てきたとしても対抗出来るかどうかの確認くらいはするだろう。だから初戦や2、3試合目くらいに出てくる人の試合は相手も見ている気がするんだよなぁ