シンボリックキラー
「隠れてねぇで出て来やがれ!」
「それはお互い様では?」
その辺にあった地図みたいな筒状の紙を拾い、ボスの耳にだけ聞こえる様に話しかけて挑発する
「クソがぁ!」
「「「ちょっ」」」
守るべき対象が急に暴れるんだから守れと言われた方はたまったもんじゃない
「自分を守らせておいてそれはダメですよ」
今度は反対サイドから挑発する。正直この仲間割れは練習には良くないかもしれないけど、あの自分だけ守ろうとする態度がちょっと気に喰わない。王様にでもなったつもりなのだろうか
「うおぉぉクソがぁ!【トルネードスラッシャー】」
「は、離れろー!」
「危ないぞ!」
「巻き込まれるぞ!」
挑発した事で怒った盗賊のボスが両刃の斧を振り回し、回転する事で周囲に攻撃するスキルを使ったみたいで【ミスティックミスト】がかき消された。何故最初に使わなかったんだろうと思ったけど、ボスがそのスキルを使ったせいで周りのテントが全て破壊されている。なるほどね。挑発してすぐに距離を取っておいて正解だった
「何処行きやがった!まさかさっきのでバラバラになってる訳がねぇよなぁ?」
「自分の攻撃が当たったかどうかも分からないのはどうかと思いますよ」
「皮肉も分からねぇ奴はミンチにしてやるぜぇ!」
斧でミンチにはされたくないなぁ?
「おやおや、すぐに怒るのは良くありませんね。そんな事では周りの人間はついて来ませんよ」
「うるせぇ!おい、お前ら!奴を囲め!」
「「「は、はい!」」」
とりあえず戦闘しやすいように盗賊団の広場に降り立ち、自分から囲まれる。自分に対する負荷として、この場から逃げない事と、誰一人殺さない事を念頭に勝負する
「ほう?どうやら覚悟が出来たみたいだなぁ?」
「あまり帰りが遅くなるといけません。さっさと来ていただけますか」
手でクイックイッと更に挑発する。冷静な暗殺者への対応と言うのも必要になるだろうけど、その手の相手は遠くから狙撃して来るか、近距離ですれ違いざまにやって来るだろうからそうなると相手と僕の反応勝負みたいな物だと思うし、今回は追い込んで自暴自棄になった相手、ほぼ何も考えていない暴徒のような連中が襲ってくる事も仮定すると、ここのボスは後者の練習としてはうってつけな気がする。胸を貸してもらうつもりで行こう
「いいぜぇ……キレちまったよ。もう俺は誰にも止められねぇぞ!」
「どうぞ」
右に左に薙ぎ払い、大木も切り裂けそうな勢いで振り下ろされる斧……正直物足りないな?キリアさんのフランキスカ乱舞の方が手数は多いし、こちらから攻撃する隙も少ないから割と余裕を持って躱せる。両手で1つの斧を持ってるから手数がそもそもそこまで多くないし、ここは周りも煽って周りからも攻撃をして貰った方が訓練になりそう
「周りの方達は見ているだけですか?正直このままだと退屈で紅茶でも淹れてしまいますよ?」
「キッサッマァ!」
両手にティーポットとカップを用意したのが相当頭に来たのか、攻撃の速度が上がった。やっと訓練らしくなってきた!
「アイツの足を撃て!」
「ボスの援護だ!」
「撃て撃て!」
流石に剣で攻撃しようとしたらボスの攻撃範囲に入ってしまうからか、近接の人達は来ないけど、僕が動きにくい様に弓持ちは援護射撃を始めた。正面からは斧を振り回る大男。側面や背後から僕の機動力を奪う矢。良いぞ。燃えてきた!
「こいつ……どうなってんだよ」
「矢が、当たらねぇ……」
「背中に目でもついてんのか!?」
「何で……一発も、当たらねぇ!?」
あんな斧を振り回せば幾ら力持ちとはいえ疲労するだろう。武器は確かに自分の力になるし、重ければそれだけで威力も増す。だが、そんな武器を休憩なくずっと振り続ければ肉体が悲鳴をあげる。何度振っても当たらなければイラつき、更に力を込めて振るう。自分の限界を縮めているとも知らずに。そして矢も、味方に当てない様にと配慮をすれば、撃たれる方向も、誰が撃つかも掴めてくる
「なるほど、このくらいですか」
盗賊なら誰かに依頼されて違法行為をする事もあるだろう。安い金で雇われる奴の実力としてはこのくらいか……
「いえ、油断大敵ですね」
ここでこのくらいなら楽勝だと高を括ったら、突如とんでもなく強い奴が現れるかもしれない。ここが最底辺。これより上の実力者がゴロゴロ会場に潜んでいるくらいの気持ちにしておこう
「そろそろ終わりにしましょうか」
「何を、ぐほぉぉ!?」
ベルトの力で加速して急接近からの男なら一撃で仕留めると言っても過言ではない金的キック
「「「「ひっ」」」」
男の盗賊の人が股間を押さえてる。やっぱりコレを目の前で見せられたら皆怖いよねぇ
「さて、死なない程度にやりましょうか。逃げて金的を後ろから喰らうか、逃げずに戦い金的を喰らうか。お好きな方をお選びください」
「「「「うわぁぁぁ!」」」」
無力化する事は変わらない。まだ残っている盗賊達の金的を狙う
「恨むなら股間を鍛えてない自分を恨んでください。もしくは盗賊をやってる事ですかね」
かなり理不尽な事を言って、掃討戦に移行した




