職場
「せっかく戻ってきたならちょっと見てみるか」
温泉の施設を作ったけど、まだ少し足りないと思ったので、ウカタマの自首を促した後でコッソリ追加で新しい設備を作ろうと熱い湯に入っていたお爺さん狐達が居たので相談しておいた。それが上手くいっていればあの建設スピードならもう出来上がっていても不思議ではないが……
「おぉ、これはこれは、ハチ様」
「やあやあ。今どんな感じ?」
「ホッホ、作ろうと思えばいつでも作れますぞ。何処に設置するか指示を頂けますかな?」
「とりあえず男湯女湯に1か所ずつと、プールの所にも設置したいですね。プールのはちょっと特別な物にしたいんでそこは少し形状を変えたいんですが…」
「勿論やらせていただきますぞ。女湯側は娘達にやらせますゆえ。にしてもあれは良いですぞぉ!」
「サウナの入り過ぎには気を付けてくださいね?」
「ホッホ」
狐のお爺さん達に頼んでいたのはサウナ。温泉は完成したけどまだサウナは作ってなかった。前に相談した時、どうやら御稲の国にはサウナっぽい物が既にあったらしく、前から入ってたみたいだけど、入り過ぎには気を付けて欲しい物だ。とりあえずこの温泉施設に設置する案として最初は男湯と女湯にのみ設置して、水風呂もあれば良いかなと思っていたけど、セッカさんという存在を空島に組み込むなら、温水プールの所にもサウナを設置しようと思った
「とりあえずこっちに来る間に考えたんですけど、こういう感じで作りたいなと」
「ん?ここに何を置くので?」
「雪女さんが新しくこの島で住んでくれそうなので、その方の仕事として雪を降らせてサウナで温まったあとのクールダウンをしてもらおうかと。水風呂に入るのは確かに気持ちいいですけど、サウナに入った直後に水風呂に入るのはあまり体に良くないので……皆さんの健康の為にもですね」
体を整えると言うけど、お爺さん達の体の負担になると良くないから急激に冷ますのではなく、ゆっくりと冷ます様にしたい。一応男湯と女湯も配慮として、サウナの出入り口に汗を流せる様にぬるま湯と桶を用意して、その先に水風呂という設計にしてある
「なるほど。この老骨の事まで配慮なさって下さるとは……」
「温泉はリラックスして欲しいですからね」
「お任せ下され!1日で、いや、半日で作ってみせましょう!」
労わるはずが鞭打ってるようになってないかな……
「では早速取り掛かりますゆえ!」
「お、お願いします」
木材が宙を飛び、温泉の中に入っていく。温泉を稼動させながらサウナが作れるって現実じゃ絶対無理だろうなぁ?
「とりあえず色々と雑用を済ませてくるか」
食料や街の様子を見たりして問題が無いかチェック。アレも一応作って、時間を潰したらセッカさんを連れて温泉に行って仕事をしてもらおう。あっ、ヘックスさんにも話を聞くか
「シクサーム……あそこは今そんな風になっていたのか。懐かしいな」
「昔話を聞かせてもらえたりは……」
「聞かせても良いが……今はまだいろいろ仕事が立て込んでるんじゃないのか?」
「そうですね……結構込んでますね。また今度お話聞かせてもらっても良いですか?」
「あぁ、時間がある時に話そう」
ヘックスさんが丁度城に居たので、話を聞いてみようと思ったけど、これは今詰まってる予定を終わらせてからしっかり聞こう。またクエストが発生するかもしれないし……
「セッカさーん」
「はいはいはい!なんでございましょう!」
チラッと家の中を覗いてみたけど、特に散らかしたりはしてないみたいだな
「セッカさんに仕事の説明をしに決ましたよ。多分そろそろ稼動してるんで行きましょう」
「え、あ、はい!」
セッカさんを引き連れて、温泉まで行く。一度温泉の方を見に行ったら既に完成していたし、人が押し寄せる前にやろう
「ここ……まさか温泉ですか!?」
「そうだよ。温泉施設」
「ここで何を……まさか!私にアハーンな事やウフーンな事を!?」
「職場はこの先なので、そのままついてきてください」
「わ、スルー……」
ここで男湯や女湯の入り口に別れてこないとかだと困るので、「ハチ」の入り口から僕も服を脱がずにそのまま進む
「この入り口……え、服を脱げとかそういう事じゃないんですか?」
「仕事内容を最初に伝えたの忘れましたか?粉雪を降らせる。ですよ」
「あ、あぁ…そういえば確かにそう言ってましたね。でも温泉で雪を降らせてどうするんです?」
「その必要があるのは……」
「「「「ハチ様!お待ちしておりました!」」」」
狐さん達が出迎えてくれたプールエリアの先に新たに作られたサウナエリア。と言ってもサウナ6室とその前にベンチが置いてあるだけの簡素な作りだが、そのエリアの中央に小さな部屋が1つだけある
「半日で本当に作るなんてすごいよ。はい、これ良かったら皆で分けて」
「「「「わぁ…ありがたき幸せ!」」」」
頑張ってくれた報酬として用意しておいた稲荷寿司を配る。作っておいて良かった
「あの部屋をお使いください」
部屋の鍵と思わしき物を渡されたので、そのままセッカさんに鍵を渡しながら説明する
「オッケー。セッカさんにはこの部屋で日に2回。このエリアにだけ雪を降らせてください。サウナで熱くなった人を冷ます。それがセッカさんの仕事です」
「それだけで本当に良いんですか!?」
「あ、一気に雪を降らすとかはダメですよ?雪が地面に積もらない位の降らし加減で頼みます」
「お安い御用です!」
セッカさんが部屋に入ると上から雪が降ってきた
「このくらいで良いですか?」
「もう少し少なく」
「はいはーい!このくらいで?」
「あぁ良い感じ!」
サウナで熱くなった体を冷ましてくれるチラチラと降ってくる雪。これは良いな?
「あ、一応セッカさん。仕事中は飲酒禁止ね。終わったらお風呂入って良いし、お酒を飲んでも良いけど、程々にね?」
「これは……天国に到達してしまったかもしれない!」
それは天国じゃなくて天職じゃないかなぁ
「ふぅふぅ、あっついー。おやおや雪降ってるー!気持ちいー!」
なんでモルガ師匠もうサウナに入ってるんですかねぇ?




