セッカさん
「よし、ではその持ってきた食材を少し貰うぞ。新しい職場に行く為に必要だからな」
「えっと……それはどういう事なんでしょうか?」
職場に行く為に食材を貰うって普通に考えたら何を言ってるんだって思うよね。でもあの人を呼び出すのに供物が必要だから貰わないと進まない
「貴様はこの地には興味はもう無いんだろう?ならば、家ごと職場まで引っ越しさせてやる。なに、これは俺からのプレゼントだ」
「はっ!?」
「何逃げ出そうとしているんだ?」
セッカさんが野菜を置いて逃げ出そうとしたので、深淵を使って両掌を合わせる様にして拘束する。もしかすると他の場所からも冷気を放つ事も出来るかもしれないけど、確定で冷気を放つ事が分かっている両手を封じ、逃げ出さない様にする
「ひえっ…これは!?」
「ふむ、量はこのくらいで良いか」
「ちょちょ!?普通に料理を始めないでくだ…」
「何か言ったか?」
「な、なんでもないでーす……」
セッカさんを深淵で拘束したまま手持ちの食材とセッカさんが採ってきた野菜でポトフを作る
「仕事から逃げようと考えているのであれば、その両手が使い物にならなくなると思えよ?」
後ろで何とか深淵の拘束を振り払おうと悪足掻きしていたセッカさんの拘束を強める。ついでに胴体と両足も拘束して逃走は無理だと分からせる
「痛だだだだだだっ!?頑張ります!どんなお仕事でも頑張らさせていただきます!」
「良く言った。よし、こんな物だろう」
鬼教官スタイルのままで作っていたポトフが完成したので、メモにセーレさんのシジルを描いて呼び出す
「私を呼んだのは……うん、どうせハチだと思ってたけど、今回はどういう状況なんだ?」
「ちょっとした交渉の結果。こちらの家主が家ごと引っ越ししたいという要望を叶えてやろうと。これが今回の供物なんだが……」
「ここさみぃな……おぉポトフか!全く、こんなので悪魔に言う事を聞かせるなんてよ?そんでうめぇなぁちくしょう」
満足して頂けたって事で今回も契約成立だな
「え、悪魔?いや、絶対こっちの方が悪魔で、痛だだだだ!?」
何か余計な事を言いそうだったので深淵でセッカさんを締め上げる
「本当に引っ越しさせんのか」
「ここに居るとずっとだらけるから島に連れていく」
「あぁ……」
セーレさんも分かって来たなぁ
「どの辺に引っ越しさせるんだ?平原か?それともあの村の近くか…」
「雪原地帯が良いかと思っているが」
「あぁ、あの辺か。了解了解」
「本当に何処に連れて行かれるの…」
引っ越しさせる本人を置いてけぼりにして話を進める
「今回は俺も向こうに送ってくれ。そのまま説明やらなにやら済ませなければならないからな」
「はいよ。ふぅ、美味かった。そんじゃ送るぞ」
パチンと指を鳴らすセーレさん。外の景色が変わってる気がするからもしかしてもうワープした?
「そんじゃ、契約も終わったし帰るわ」
「ご苦労だった」
「じゃ」
パチンとまたセーレさんが指を鳴らすと煙の様に体が消えた。仕事を終えてすぐに帰っていったなぁ……
「あれ、僕は何を……」
「戻った?多分戻ったよね?あの、この拘束解いてぇ!」
とりあえずセーレさんが戻ったタイミングで二重人格のフリを解除しよう。オーブ・ローブに着替えて、軍帽にした仮面を首輪状に戻して元通りだ
「なるほど、何となく分かった。いらっしゃいセッカさん」
適当に小芝居をしてセッカさんの拘束を解く
「あの、ここは……」
「ここは僕が管理してる空島。この雪原地帯なら多分もう少ししたら……来た来た」
スケートするように氷の騎士のアイナさんが近寄ってきた
「コノヒトダレ!ダレ!」
あぁ、そういえばシロクマのちっちゃいアイスフィギュアがアイナさんの代わりに話すんだったな……
「この人はセッカさん。雪の中で一人暮らししてたんだけど、寂しがりで酒に頼って生きてたから自分以外の存在と触れ合えばその辺少し良くなるかなと思って連れてきた。勿論気に入らなかったら帰すつもりだけどね」
「ヨロシク!ワタシアイナ!」
「あ、ども…セッカです……」
「無理に仲良くしろとは言いませんが、仲良くしておいた方が今後の生活は良くなると思いますよ。それと、一応仕事に関してはまだですけど、今の所はやって欲しい事があるとだけ。セッカさんは粉雪程度を振らせるとか出来ますか?」
「そのくらいなら出来るけど……え、もしかして粉雪降らせるのが仕事?」
まだ作ってないけどセッカさんには今作っている物の管理をしてもらおう
「ごく一部にのみ降らせる。もしくはセッカさんの周りだけ冷やすとか出来るなら本を読んだり、編み物したりしても構いません」
「えっ!?」
「一応予定としては日に2回それをやってくれればあとは自由です」
「え?それだけ?」
「それだけです」
とても簡単なお仕事だ
「あ、アイナさん。もし良かったらワリアさんの所の野菜とかたまに持ってきてくれない?セッカさんは野菜好きだから」
「イーヨ!」
「お届けまであるんですか!」
「あぁ、セッカさん?」
「はいなんでしょう!アッハァ!これはとんでもない大当たりなのでは!?」
「仕事をしない場合は……貴様の処遇はゴミだ」
「ひゃ、ひゃいぃぃ!」
首輪を軍帽に変えて脅しをかけておく。多分、この人調子に乗ると失敗するタイプだろうし、つけあがらないように多少厳しくした方が良いかもしれない。それで凹んでしまったら……フォローは入れてあげよう




