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982/2011

生きてるだけで偉い

「な、なんだ!?」

「勝手にお邪魔した事と騙していた事は申し訳ありません。でも流石に死のうとしている人を無視は出来ないので正体を晒しました。ハチと申します」

 挨拶をして流れでそのまま正座する。うぅ、シロクマコスチュームを脱いだらやっぱり寒いな……


「あ、どうも…私はセッカ」

「とりあえず一旦落ち着いてください。それとその縄を貸してくれます?」

 いったん縄を預かれるかやってみよう。この精神状態で何処まで聞き出せるかな……


「……ん」

 おっ良かった。貸してくれた


「とりあえずクマに料理で負けた訳じゃないので……ね?」

「どうせ私なんか火で炙るくらいしか出来ないから生きてる価値もない。死んで楽になった方が良い……」

 あ、地雷踏んだわ


「まぁ料理が苦手な人とか僕の知り合いにもそれなりに居ますから……」

「私、友達とか居ないし……やっぱり死のう。死んでも誰も悲しまない」

 あ、地雷踏んだわ


「そんな事言ってたら親御さんが悲しみますよ?」

「もう両親は2人とも死んじゃったし、遺産ももうこの家くらいしか残ってないからこのまま朽ちていくだけならもう死んだ方が良いわ」

 ダメだ。もう既に地雷原のど真ん中だったみたいだ。何を言っても地雷を踏んじゃうこれ。ぐぬぬ……これはどうにか立ち直らせないと僕が居なくなった途端にやらかしてしまう危険性が高いから何とかしないと……もしかしてそれを誤魔化す為にお酒を使って酔っていたのか?だとしたら僕がやった事は余計なおせっかいだった可能性が高い……いや、ここで僕が関わってお酒に頼らない様に出来るかもしれないと考えた方が良いだろう。となるとちょっとアプローチを変えてみるか


「えっと、嫌な事を聞いてしまってごめんなさい。にしても、ここで一人暮らしをしてるって凄いなぁ」

「……ん」

 今ピクってしたな?


「親御さんから受け継いだ家をたった1人で守る孤独と戦える精神力!自給自足が出来るサバイバル能力!これはもう凄いと言っても過言じゃないよなぁ……」

「……んん!」

 これ、さては人と接触する事が少なくて自己肯定感が足りない奴だな?ヴァイア様で鍛えた褒めで肯定していけば多少は何とかなるかもしれない


「そ、そんな事無いし…」

「いやいや、並の人なら出来ませんが、セッカさんだから出来てる凄い事だって気が付いた方が良いですよ。辛い時に辛いと言えなくて、お酒に頼る事もあったんでしょうけど、それでもずっと続けてきた……これは褒められるべきです。誰も褒めないって言うのなら僕が褒めます。まぁ、見ず知らずの人に褒められても嬉しくないかもしれませんが、セッカさん。あなたは本当によく頑張ってる。偉いです!」

「ちょ、やめろし……そんな事言っても別に何も無いし」

 口元が凄いにやけてる。やっぱり褒められるのが嬉しいのは皆共通なんだなぁ


「何も無い?追い込まれてない人は生きてるのが当たり前です。でも、この極限の状況で生きる選択をし続けているセッカさんは追い込まれても最後に踏み止まれる意思の強さがある。死ぬという逃げをしないで生きるという戦いを続けているセッカさん自分自身を認めてあげてください」

 簡単に言ってしまえば「生きていて偉い」って事だが、まずは自分自身を褒めて気持ちをもう少し前向きにしておかないといつまた地雷を踏んで後ろ向きになるか分からない。心のケアをゆっくりしていこう


「そ、そうかな…私って偉いのかな?」

「偉いです!凄いです!」

「毎日酒に頼ってたけど…偉いかなぁ?」

「………生きてるんだから偉いです!」

 正直それは肯定するべきでは無いだろうけど、一人で頑張ってた事を考慮して精神安定剤的な物だったという事で目を瞑ろう


「私、褒められた事無くて……ぐすっ」

「辛かったですね…本当によく頑張ってますよ」

 正座してた膝の上に泣きついてきたので、軽く頭を撫でる。褒められるって頭を撫でるとかが分かりやすいかなと思ったけど……ちょっとこれは良くないかな?頭を撫でるのが下に見られてると感じて嫌いみたいな話とか聞くし、でも髪サラッサラでもう少し撫でていたいな……




「あの、もう大丈夫ですかね?」

「なんか、ごめんなさい……」

 涙が凍り付き、膝周りが氷でバッキバキになってしまった。何とか砕いて立ちあがる事は出来たけど、正直足が冷えて今から戦闘になった場合は足さばきがたどたどしくなってしまうだろう


「さっきまでなら死んで詫びますとか言い出しそうな雰囲気でしたけど、悪い気持ちは吐き出せましたかね?」

「ちょっと軽くなった気はする」

 泣いてスッキリする感覚は分かる。ましてや、膝を凍り付かせるくらい泣いたんだ。これで軽くならない訳が無い


「不躾なのは分かってるんだけど……泣いてお腹減っちゃったからまたさっきのご飯作ってくれない?」

「仕方ないですね。じゃあちょっと待っててください」

 一応手持ちにある食材と、台所に置いてあった食材を使い簡単な料理を作る。これで少しは前向きになってくれるかな


「いただきます。美味しい…美味しい……」

「それは良かったです。天気も晴れてるみたいなんで僕はこれで」

 なんとか立ち直らせる事には成功したと思うからこの辺で失礼しよう


「ダメ!行かないで!」

「えっ」

 急にセッカさんが声を荒げたと思ったら外が吹雪になった


「もう1人じゃ生きていけない!お願いだからここに居て!」

 おっと……これは、選択ミスったかもしれませんねぇ?



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― 新着の感想 ―
[一言] おおっと!地雷源と言うか高レベルマインスイーパーでした?w と言うか、依存型だー!どこかの作家さんみたいに両足切られちゃうー!? いっそ知り合いに呼び掛けて修羅場にするべきか? 彼女たちも反…
[良い点] 魔物カウンセラー、その名もハチ君! [一言] セーレさん召喚して、家ごとアイナさんのお隣に引っ越しましょう
[一言] コウペンちゃんかしたハチ君
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