シクサーム昔話
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします
「鍋持ち込みで安くなるのか」
自分で鍋を持ち込めば鍋の分安くしてくれるのか。容器は自分で持ち込むと安く出来るのは良いな。まぁお金は持ってないんだけどね
「おぉキムチチゲとかあるのか。温まりそう」
辛い鍋は確かに温まりそうだなぁ。しかも蒸気缶とかいうアイテムを買えば出先で鍋を魔力無しで温められるみたいだ。この雪原で誰でも温かい鍋を食べられるのはありがたいな。多分インベントリで温かいままをキープしたとしても、鍋だと食べてる最中に冷め切ってしまうだろう。それを回避出来るのが蒸気缶でここで働く人にとっては結構重要なアイテムだろうな
「食べ物が冷め過ぎたら効果も落ちたりしそうだな……」
冷め過ぎで美味しくないとか、テレビで見たカップラーメンを持ち上げたらそのまま凍るみたいな凍って食べられなくなる可能性とかも場所によってはあり得るかも
「串焼きとかは少なくて汁物が多いな。ふむふむ」
シクサームは全体的に食べ物は汁物系が多いみたいだ。やっぱり温まるという事に重点を置けば汁物になるのか。結構歩きながらマイ器みたいな物で何らかのスープを飲んでいるし、人によってはそのマイ器も蒸気で温めるのかゴツくてちょっとメカメカしい器を持った人が結構居る。雪の中で作業をするならそういう物があった方が良いのかも
「ここは多少防御力が下がっても耐寒性能装備が必要になりそうだな」
シクサームにプレイヤーが沢山到達する前に空島でそういう性能がある装備作っておけば売れるかもなぁ…みたいな事を言っておけば空島で装備作ってる人にとってはプラスになるかな?
「もう少し情報収集したいな……」
だが、この近辺で色々探るのはちょっと良くないな。ギルドの人間に絡まれるかもしれない。さっさと街の中央に行こう
「うぉぉ、カッコイイ!」
巨大な半球状の機械の上に建っている城。何本も張り巡らされた配管、忙しなく動くピストンに噛みあうギア。男の子ってこういうの好きでしょ?と言わんばかりのまさに機械城。城をぐるりと囲った堀では巨大なパイプが6方向に城から街に伸びている所が見える。あの城がまさにこの街の心臓みたいだ
「そこの君、落ちないように気を付けて」
「あ、すみません。ここまで巨大な機械とか見た事無くて……いやぁカッコいいなぁ」
堀には落ちないように柵があるのでそこからパイプとか見てたら警備っぽい人に声を掛けられた。怪しまれるというよりは、僕の身を案じてくれてるっぽい
「ははは、カッコイイだろう?この街は元々、あの城とこの堀の周り程度しか無かったんだ。だが、開拓を続けて、この街は大きくなったんだ。こんな寒い土地でも街が温かいのは蒸気の力のお陰なんだ」
ほうほう?これは良い話が聞けた。もう少し聞けるかな?
「ここを開拓した人達も、今も維持し続けてる人も凄いですね!でも蒸気の力?」
相手を褒めて、疑問をぶつけて情報をもっと引き出す
「古くからの言い伝えで大昔に不死鳥と共闘して災厄を退けた英雄が居たんだ。その英雄が不死鳥からお礼として不滅の炎という決して消えない火を貰い、故郷の小さな村でその炎で温まりながら暮らしていた。だが、村に人が増えてその1つの炎だけでは皆が温まる事が出来なくなってしまったんだ」
もうそれは村と言うより遊牧民クラスなのでは?
「そこでその英雄は皆が温まるにはどうしたら良いかと頭を悩ませた」
「それは確かに難しいですね」
相槌も入れておく。今があるから結果が分かっていても、その過程で気になる話が出てくるかもしれないし
「その英雄が困っていた時、巨大な鉄の鎧を纏った神が現れ、蒸気という存在を教えてくれたんだ」
「神が蒸気を……?」
「その神が機械の事を教えてくれてこの城を村の皆で作って行ったんだ。最初はもっと小さかったけど、住人が増えていく度に皆で協力し、今の形になったんだ」
なんか凄いブレイクスルー起きてるな?要するに不死鳥から貰った不滅の炎を無限燃料として利用して、蒸気を生み出してるのが今のこの街と。不死鳥、英雄、鉄鎧の神の3人が中心になってここまで街を発展させてるのも凄いけど……どうしてもその鉄鎧の神。それだけが気になる。英雄とかどうせこの街の領主がその末裔とかそんなだろうけど、機械の事を教えられるという部分と、この街のピストンとかギアとか、どうも見た事が有る気がする
「英雄が住んでいた村が蒸気を教えてもらえたお陰でドンドン大きくなって今に繋がってるんですね」
「そうそう。シクサームは元々小さな村だったのに今となってはここまでデカくなったのも不死鳥様に英雄様に鉄鎧の神様のお陰だ。その辺の土産屋を見て行けばそのお三方のお守りとか売ってるぞ」
「なるほど、後で見てみます!お話ありがとうございました。お疲れ様です」
とりあえず情報を得られたからお土産屋とか見てこよう。これ以上は目を付けられるかもしれないから失礼しよう
「ははは、じゃあな」
パトロールだったのか、さっきの警備っぽい人は何処かに歩いて行った
「お守りお守り……」
「らっしゃい!」
「すみません、鉄鎧の神様のお守りとかってどんな物ですかね?」
「おっ、お客さんは鉄鎧の神様派か。良いねぇ」
え、何?派閥とかあるの?
「これが鉄鎧の神様のお守りだ」
ドッグタグみたいな物に描かれた絵。そこにはいつか氷の城で見た超着込んでたヘックスさんの姿が描かれていた




