温泉開放
「おぉ、結構人来てるな?」
オープン予定の時間に行ってみたら結構な量の人が並んでいる。これは早めにオープンしないと小競り合いとか起きちゃうかもしれないな
「あ、来た!」
「待ってました!」
「温泉!温泉!温泉!」
いや?普通になごやかな感じか?僕を見つけた人達が「待ってました!」と言ってたり、何か桶持参してる人が居たり、とりあえず説明だけしようか
「皆さんどうも。この温泉は男湯と女湯の他に両者とも入れる温水プールが有ります。基本何処に入っても効能は一緒なのでリラックスするなり、フレンドの方と遊ぶなり自由にしてください。例外として、個室風呂があり、そこでは自分で素材を持ち込んで、自分好みの効能の温泉を作る事が出来ますが、お金を要求しない代わりに、風呂掃除をしっかりしてもらうという条件がありますので、それを守れる方のみ利用してください。順番とかも言い争いにならないように譲り合い精神を持って各々対応して頂けると助かります。温泉全体の原則として他の方に迷惑を掛けないというルールを守って楽しく入浴!って事で。ただいまから温泉を開放します!」
長々と説明をして温泉をプレイヤー達にも開放する。初日だし、一応監視の意味合いも込みで僕も入っておこう
「す、すげぇ……」
「温度も結構種類がある!」
「全部露天風呂だ!」
良かった。普通に楽しんでくれてるみたいだな
「おいこれ……」
「まじ?じゃあ俺が入る!」
「いやいや俺が!」
「じゃあ俺が!」
「「どうぞどうぞ」」
50℃風呂を見つけた男3人組がもう約束されたかのような流れをやっている。そしてそうなると……
「おい!絶対押すなよ!絶対だぞ!」
「「分かってるって」」
もうその後はどうなるか見なくても分かる。他に人が入ってないからスルーしてるけど、他にお客さんが入ってたらあれは迷惑になるからそういう時は注意しないとな
「まぁ、こっちは問題無いか。温水プールの方はどうかな」
男湯の方は問題無さそうだから温水プールの方に向かう。一番心配なのはナンパとかそういうのが無い事なんだけど……ちょっと心配だなぁ
「さて……」
ちょっとだけ緊張しながら温水プールのドアを開く
「……大丈夫そうだな」
本当にちょっと言い方は悪いけど、あの時のボスを攻略して魔王側に入ってた人って、それこそチャラい人とか人の話を聞けない人は多分攻略出来てないから、ここに居る人はある程度人間性が確保されていると言っても過言では無いと思う。そのお陰か、今の所迷惑を掛ける様な存在は見当たらない。平和だな
「あっ、居ましたよ!」
「ハチさん!」
「ハチ君」
「まったく、コソコソ逃げ出すと思ったらこんな物を作ってたなんてね」
「お手伝いしたのにー」
チェルシーさん、アイリスさん、ロザリーさん、キリエさん、キリアさんの5人が来た。しまった囲まれた……
「ハチ君、あの時こっそり逃げたのはこの温泉を作る為だったのか?」
「……はいそうです。島の皆にサプライズしたくて出来るだけ作っている事を知られる存在を少なくしたかったので、黙って逃げちゃいました」
そう勘違いしてくれてるのならその勘違いを利用させてもらおう。どうせ、否定しても面倒な事になるだけだし
「それじゃあ温泉を楽しんでください。流石に個室風呂を優先的に使わせてほしいとかは出来ませんが……」
フレンドだからは優先するとかは無い。というそれっぽい理由を付けて、これ以上ツッコまれないようにその場を後にしようと包囲網をサラリーマンとかが使うすいませんチョップしながら脱出を試みる
「あ、ハチさん?個室風呂の事でお話が聞きたいんですが……」
「何でしょう」
チェルシーさんに止められた。普通女性に囲まれるこの場面。嬉しいのかもしれないけど、僕の場合は何処に地雷が埋まっているか分からない地雷原の真ん中に立っている気分だ。正直早い所撤退したいが、温泉について聞かれた事には答えないとそれは不自然だろう
「個室風呂の効能変化ってどういう素材がどういう変化をするとか分かってたりします?」
「それに関しては、僕も時間が無くて調査出来てないんですよね。何となく、薬草って言うより唐辛子的な辛そうな物とか使うとSTRがアップしたりするかなぁみたいな予想ですが……そうだなぁ、じゃあ使うアイテムによってどういう効能が出るか調査をしてくれるって事なら一番右の個室は入浴剤の調査優先って事で優先使用権をチェルシーさんのクランに与えようかな」
実際、どういうアイテムを入れればどういう効能が出るかまだ分かってないし、使える人材としてチェルシーさんの所に調べてもらうのが楽かな?
「ありがとうございます!それじゃあ右端に入浴剤調査中の看板を掲げてもよろしいですか?」
「それなら良いですよ。クラン名を出さないで貰えるとありがたいですね。一応何処か一部のクランに肩入れし過ぎって思われると良くないかなって思うんで、調査中って事だけ掲げてもらえると助かります。何か他に報酬とか必要ですか?」
個室風呂の優先利用権が報酬と言う事で、他に報酬を必要とするか聞いてみる。何となく周りの包囲網の空気を緩くなった気がする
「それじゃあハチさんがどのくらい進んでるのか聞きたいなぁって」
「今はシクサームの街まで進んだかなぁ……」
「「「「「………」」」」」
警戒強まっちゃった