ファステリアスからの逃亡
「一応ハスバさんに連絡しておこう」
ファステリアスの情報を教えてもらった事だし、まだ見つかっていないって連絡しておこう
『現在森の中で潜伏中のハチです。これから脱出の為に次の街を目指そうと思います』
送信っと
「んー、とりあえずこの恰好は今の所変えた方が無難かなぁ?」
仮面とイドエゴ、オーブローブはイベントで見られたからこの恰好で居る所を発見されたら面倒だ。ならば着替えるしかない
「シロクマだベアー」
シロクマコスチュームに変更する。着替えと言ってもこれしか持ってないしね?
「そういえば木って現実と大体一緒だよね?」
遭難した時とか木の年輪を見ると方角が分かるはずだ。とりあえず3本程木を手刀で斬る。流石に太い幹は斬れないから木の上部でまだ細いくらいの所を斬る
「おぉ、3つともこっちの方が狭い」
年輪が狭い方向が3本とも同じ方向だった。って事はあっちが北だ
「僕は今ファステリアスの南東くらいに居るはずだから……平原を突っ切るか東側の森を大回りして北のボスの方に行かなきゃいけないか」
そうやってどう北まで行くか考えている最中にハスバさんからメッセージが来た
『こちらファステリアスのハスバカゲロウ。白いフード付きのローブを入手出来たのでこれから囮作戦を開始する。念の為救援の者をボスの所に向かわせたからそいつと一緒にセカンドラの街を目指してくれ』
白いローブを纏った忍者頭巾のハスバさんが何処かの店から出ようとして片手に上げて背を向けている何かちょっとカッコイイ写真が添付されていた。ファステリアスの街で僕のフリをして注目を集めてくれるみたいだ
『作戦の成功を祈る。こちらも直ちにセカンドラの街に向かって急行する』
その場のノリでそれっぽい返しを送って北に向かうルートを考える。高速移動なら久々にアレを使うか
「うおぉぉぉ……めっちゃ怖い!」
僕は草原を突っ切る方を選択した。草原に出た段階で【擬態】を使って体全体が草模様になったクマのボディを紫電ボードの上に立つのではなく、腹這いの状態で乗る。それで出来るだけ隠蔽率を上げて高速で移動する方法を取ったけど……顔が地面に近いから中々に怖い。体重移動で左右に移動して草原に人が完全に居ない訳では無いのでそれを回避するのでMPの消費を増やしたり減らしたりして加減速を調整しながら草原を突き抜ける
途中休憩なんかも入れながらなんとか草原を人に見つからずに突っ切れた。ハスバさんのお陰かとても草原に出ていた人数が少なかったように感じる……平時がどれだけ居るか分からないけど
「ふぅ……後は、この森の先にボスが居るんだよね?」
北の森の中に次の街に向かう為の道とボスが居るはずだ。うん、森だけどあからさまに草原から森の中の方に向かっている道がある。この道を辿ればボスの所まで行けるハズだけどただ道を進むんじゃなくて木の上を伝って行こう。お腹も減ってるからアプリンの実でも取れたらラッキーくらいの気持ちだ
「おぉ!アプリンが生ってる!これは幸先が良いかも!」
木の上を渡っている最中にアプリンの実を見つけた。取ってそのまま食べる。そう、このシロクマコスチューム。実は口がちゃんと動くので着たまま食べ物が食べられるのだ。その内はちみつなんか見つけたら手で掬って食べるなんて行儀悪い事もやってみたい
むしゃむしゃとアプリンを食べて空腹度を回復してから道を追う。どんどん進んで行くと道の先に何か白い霧の壁みたいな物と数人の人がその前で待っていた。木の上からその様子を確認する
「よし!それじゃあ行こうか!」「あぁ!」「初めてだけど攻略法も分かってるし何とかなるよ!」「適正レベルは15くらいなんだし余裕でしょ!」
何と言うか初心者パーティ感溢れる装備の4人組。その4人が霧の中に入って行くと霧が灰色に曇る。中に人が居るとああいう風に色で分かる様になるのかな?と思っていたらその色はすぐに白くなる。ひょっとしてこういうボスはパーティ別というか個別で僕ももう入って戦えるのかな?
「さっき適正レベルは15くらいって言ってたし行くか」
どんなボスかは分からないけど四剣の王よりは楽だろう。じゃなきゃ隠しボスの四剣の王が可哀想だ
「よいしょっと」
木から飛び降り、周りに人も居ないから【擬態】も解く。霧に触れてみると中にスルッと入る事が出来た
「ウホ?」
「ゴリ……いや、オランウータン?」
スカートを履いて杖を持ったオランウータンが座っていた
シロクマとオランウータン。熱帯なのか寒帯なのか……とにかく絶対に会わない2体が出会った感じだ
「ウホォ!」
果たして鳴き声がそれで良いのか分からないけどオランウータンが杖を構える。すると地面から蔦がわしゃわしゃっと出てきた
「おっと」
その場に立っていると蔦に捕まりそうだったのでバク転で避ける。【パルクール】効果で結構余裕で避けられた。マスコット的シロクマのバク転って何かシュールな絵面かもしれない
「蔦の射程はそこまで長くない感じか」
【パルクール】効果付きバク転一回で蔦が届かない距離まで下がれたみたいだ。オランウータンは杖を両手で持って天に祈りでも捧げているようなポーズで膝をついている。あれ?これオランウータンの所まで行けばラッシュ入れられるんじゃない?
「蔦を避けてオランウータンの方に行けば……」
蔦もそこまで早い動きじゃない。ただ数が多いだけだ……上手く誘えば行けるかな?
前に走り、蔦が届きそうな距離に行く。そうなると当然蔦がこっちに殺到する。だけどギリギリ届かないから僕の目の前の地面をぺちぺち……【リインフォース】【オプティアップ DEX】【リブラ S(STR)toX(DEX)】を発動。イベント前に練習した時DEFとDEXが紛らわしいから何とかならないかなぁと試しにFとXで区別出来るかと試してみたら出来ちゃった
「じゃあ次は僕の番だ!」
DEXを上昇させた後目の前でぺちぺちしている蔦の上を紫電ボードにMPをガッツリ流して飛び越える。紫電ボードのスピードに蔦がついて来れないのでそのままオランウータンに突っ込む
「ホッ!?」
ボードから飛び降りドロップキック。オランウータンが後ろに吹き飛ばされる
「まだまだぁ!」
起き上がったオランウータンに対して左右にウィービングしながらフック。所謂ボクシングのデンプシーロールを打ち込む。相手が強かったら逆にカウンターを喰らっちゃうけど魔法しか使わないオランウータンにそんなカウンターを撃てるわけがない
「ホッ、オゴッ、オゴッ」
「これで終わりだー!ショーリューケッ!」
最後に大きく沈み込み、左腕でカエルアッパー。オランウータンは頭から地面に落ち、動かなくなった
「K.O!ってね!」