温泉完成!
「これは旅人用区画に、それは露天風呂区画に」
「「「「はい!」」」」
「運べ運べー!」
「仕事だ仕事だー!」
「早く組み立てるぞー!」
あっちを見ても、こっちを見てもモフモフ尻尾と狐耳が生えた人が沢山居る。木材に札を張って空中に浮かせて必要な所まで持って行き、組み立てていくという効率化でクレーンとかトラックが無くてもあっという間に建材が建物に、浴槽に変わっていく。魔札が使える人が多いのでもの凄い建築スピードだ。そして……
「「「「美味~」」」」
「「「んふぅ~」」」
そんな作業をしてくれている狐さん達は魔力を使うからお腹を空かせる。そうなってくると……
「酢飯足りないよ!」
「食材持ってきて!」
「ごめん、もう少しだけ待ってて?今来るから……」
差し入れの稲荷寿司を作る場所も大賑わいになっている。ライブキッチンスタイルで僕、【ジェミニ】【イリュジオ】の3人体制で作り、更に【バリアント細胞】で腕を2本増やし、深淵も用いて9つは即座に作れるようにしているが、ここも戦場みたいだ。自分達の憩いの場と稲荷寿司の為に頑張る者と、その稲荷寿司作りで切り札の1つを切ろうか迷っている僕。多分だけど、あのエリアボスの時より遥かに難しい気がしてきた
「持ってきました!」
御稲の国から酢飯と稲荷寿司用の油揚げを持ってきた狐さんから食材を受け取り、また稲荷寿司作りを再開する
「作業はどう?もう終わりそう?」
「後ひと踏ん張りで終わりそうです!」
「オッケーそういう事ならこっちも頑張っちゃうぞ!【暴走因子】起動!」
この場合の相手の判定が狐さん達になってくれたお陰か、5人の追加人員(僕)が現れる
「ここに居る全員分の稲荷寿司を作る!用意は良いか!」
「「「「「勿論!」」」」」
5人の僕が【ジェミニ】と【イリュジオ】を使い、18人体制で稲荷寿司を作る。もはやライン工場みたいなレベルだ
「「「「すげぇ!」」」」
「「「「もの凄い速さで稲荷寿司が!」」」」
1人1つ稲荷寿司を取ったら別の場所に行って食べるドライブスルー方式なので、作る速度が上がれば差し入れの回転速度が上がる。稲荷寿司を食べたらまた元気になって作業に戻り、お腹が減ったらまた列に戻って稲荷寿司を食べる為に仕事の速度が上がるという力業のお陰で一夜城もビックリな速度で温泉施設が出来上がった
「な、なんとかなった……」
稲荷寿司を作る速度と食べられる速度。どちらが速いかと言えば勿論食べる方が速い。なので、こちらも全力で対応し、深淵を使ったり、腕を増やしたりしてギリギリ間に合う位のペースまで速度を上げる為に死力を尽くした。正直、寿司を作るという単一作業だったお陰で何とかなっていたけど、頭がパンクしそうだ。何処かで【レスト】を使おう
「おーい、ハチ…大丈夫か?」
「ちょっとごめん。今は少し寝させて。【レスト】」
ウカタマが僕の様子を見に来たみたいだが、ちょっと疲れたので流石に寝させてもらう。ウカタマに倒れ込む様にしつつ【レスト】を使った。最後にモフモフの感覚だけ感じて、意識を失った
「っは!?おはようございます!」
「おっ、起きたか」
30秒経過して意識が回復したと思ったら狐スタイルのウカタマの上に乗っていた。モフモフで良い乗り心地だなぁ
「ハチ。風呂が出来てるぞ!」
「おぉ!」
そこかしこから湯気が立っている温泉エリア。ヒノキ風呂みたいな感じになっている個室風呂。そして、形としては楕円状にした流れるプールと簡素だけどウォータースライダーもしっかり付いている。本当に温泉エリアが出来ちゃったな?
「とりあえず資材の搬入口として作ったあの門はウチの国と繋がってるからあそこはこっちが管理して、この温泉はお互いに自由に使って良い。それで良いか?」
「勿論です。農作業で疲れたとか、ストレス解消に一風呂入って来るとかお好きにどうぞ」
丸1日も掛からずに温泉が出来てしまった。魔法と人海戦術の合わせ技で作業ってここまで速くなるのか……まぁ僕もそれに対応する為に切り札1つ切ったけど、その価値はあったと思う
「とりあえず皆さんお疲れさまでしたって事で温泉をただいまよりオープンにしましょう」
温泉にはもう既に湯が張ってあるし、温水プールももう稼動している。それならもう皆入っちゃおう
「「「「やったー!」」」」
よし、せっかくなら僕も温泉に入ろうかな?あ、そういえばアストレイ・オブ・アームズってタトゥー扱いになるだろうし、温泉って入っても良いのかな?いや、僕が別にそこは厳密化しなきゃオッケーか
「それじゃあ僕も入ろうかな」
多分、装備を外してインナー状態で入って問題無いよね?
「ん?」
入口で男湯と女湯を分ける暖簾とかは良いと思う。ただ、真ん中になんで「ハチ」って暖簾があるんですかねぇ?
「これ何?」
「ハチ専用の入り口だが?色々話を聞いたり、実際に見たりしたらもうハチは性別とか些末な問題だろう?男でも女でもどちらでも好きな方に入れるようにしてある。そのままプールの方にも行けるぞ」
今は左が男湯、右が女湯となって真ん中少し奥に温水プールと個室風呂がある状態だけど、入口から僕は何処にでもアクセス出来るようになっているのか。よし、女湯側の扉は封鎖しておくか