勧誘
「流石モルガ師匠。お陰で見せたかった物を見せられましたよ」
「いやいや、おかs…弟子の為ならこのくらいね!」
もう今9割くらい言ったね?欲望駄々洩れなんだよなぁ……
「マダム、少し良いですか」
「何かしら」
「はい、師匠えらいえらーい。ほれー。こっちです」
「わーいわーい」
クッキー入りの袋をモルガ師匠の頭上に放り投げる。食べ物だから良くない行為だけど、話の邪魔されないように師匠にはクッキーでも食べていてもらおう
「マダムにとって僕はどう見えますか?」
「え?」
「周りの存在を利用しているだけのクズですか?それとも自分達から大事な物を奪おうとしているペテン師ですか?」
「それは……」
実際に詐欺師紛いの事は何度かやってる自覚はある。というかこっちに有利な状況を確保する為にはそういう騙しはほぼ必須になってしまうからね
「じゃあちょっと他の人にも聞いてみましょう。モルガ師匠、僕ってどう見えます?」
「うまうま…え?私の自慢の……一番弟子だよ」
邪魔しないようにしたのに早速利用させてもらうが……大分言葉選んだなぁ?他の候補的にはコックとか執事とかその辺か?
「ハスバさん、僕ってどう見えます?」
「ん?ハチ君はそうだな…何が起こるか分からないビックリ箱みたいな存在かな」
ほうほう、結構良い褒め言葉。ハスバさんには完成したら温泉先行入浴券とかそんな感じの物でも贈ろうかな
「トーマ君は僕がどう見える?」
「ハチさんはハスバさんよりもずっと尊敬出来る方です!」
「ん?トーマ君?」
うん、トーマ君にも先行入浴券だなこれは
「それで、マダムには僕がどう見えるんです?」
「……得体の知れない、化け物よ」
「それもまた1つの視点ですね。でもそれがどうしました?相手を見た目で判断するのが海底の占い師なんですか?」
「………」
占いをしてると言うのなら、外見で判断するのは良くないよなぁ?相手の内面を見るのが仕事と言っても過言ではない職業だよ?
「まぁ見た目で判断するのが海底式なのかもしれませんが……」
「さっきのは謝るわ。私が悪かったわ」
うーん、ちょっと追い込み方が悪かったな?これは少しへそを曲げて面倒になるかもしれない
「それは別にもう言われ慣れてるので気にしてません。それで、少しは対話をしてみる気が出てきましたか?」
「色々良い物も見させてもらったから歩み寄りも必要ね」
面倒だけど、このマダムは出来れば引き込んだ方が今後の為になりそうだな
「それで……」
「……ぉい」
「「「ん?」」」
マダムが何か喋ろうとしたら何処かから声が聞こえてきた。何処からだ?
「おぉぉい、ハチ。暇だから来てやったぞー」
「「「ドラゴン!?」」」
「ボルカさんいらっしゃい。火山放置して大丈夫なんですか?」
地上の火山からボルカさんが飛んで来たみたいだ
「あぁ、あそこは別に大丈夫だ」
「そうなんですか?ところで何かありました?」
「暇だから遊びに来た」
「本当に暇で遊びに来たんですか……」
赤いドラゴンのボルカさんがボスフィールド風展望台の上に降り立つ。人魚の3人組が完全にビビってる
「すみません、ちょっと客人が驚いてるんでもう少し小さくなってもらえますか?」
「お?おぉ、悪い悪い」
ボルカさんが光ると人間サイズになって赤いトカゲ人間…ドラゴニュートみたいになった。うん、しっかり話を聞いてくれると助かるね
「ちょちょちょっと!?」
「なんですか」
驚きでマダムに余裕が無くなってる。これはラッキー
「あんた、ドラゴンを使役してるの!?」
「使役?いや、単なる友達みたいな物ですけど?」
「まぁそんな所だな。ここは色々と面白い物が多いからな。使役という事で言えば…若干違うが、普通にこの島にはドラゴンが2体既に住んでるぞ?」
「はぁ!?」
そういえばドラゴンは普通に人の言葉を喋れるから僕しか何言ってるか分からないとか無くて助かるなぁ
「まぁこの島には色んな種族が住んでるからエギアさんとエフィーレさんが嫌じゃ無ければ遊びに来やすいように水が多い所を作ったり、何なら住める場所を作ってお引越しとかも出来るようにする事も出来ますよ?勿論これは提案であって強制しているつもりはありませんから、海底都市の方が安心出来るし、引っ越すのが面倒とかだったら断ってもらっても構いません。そもそもこの話もいきなりですからね」
空島に勧誘するにしてもこの2人は本当にただ通りすがりだったみたいな感じだから街に住みづらいとか、そういう理由とかが無いだろうから正直断られる前提の話だ
「流石にお引越しはちょっと出来ないですね……」
「俺達の家は海底にあるからな。勿論その気持ちは嬉しいがな?」
「なるほど、ハチ君ってこうやって人材を集めてたのか」
「普通に行ってみたいって思えますね」
正直、こういう勧誘みたいな所をあんまり他の人に見られたくは無いけど、今回は協力者が多いし、同時に顔を合わせたりしないと時間が足りなかったりするから今回は仕方がない
「いえいえ、わざわざここまで付いて来てくれてありがとうございました。帰りたくなったらいつでも言ってくれれば海底都市まで送って行きますから」
「心が読めない……」
マダムが後ろでうーんうーん唸ってる。どっちのお菓子を先に食べようか悩んでるモルガ師匠みたいだ