困った人同士
「とりあえずどうしようか……人魚に協力をしてもらえれば作れるみたいな事言ってたけど……」
別に人魚の知り合いらしい人が居る訳ではない。最初にここに来た時に会った人とかも別に知り合いとは言えないだろうし……まずは人魚と仲良くなる所から始めないとなぁ
「とりあえず困ってそうな人魚さんとか居ないかな?」
自分の事を手伝ってもらうには、まずこちらから手を差し伸べるべきだろう。困ったときはお互い様という便利な言葉もある訳で、まずは困っている人魚が居ればこちらからも接触がしやすい
「困ったなぁ……」
困ってそうな人魚さんを探そうとしたけど見当たらないからこっちが困った。まぁ何事も無い方が良いのは当然なんだけど
「「どうしよう……あっすみません」」
海底都市の街中を泳ぎながら悩んでいたら女性の人魚さんとぶつかりそうになってしまった。ちょっとぼーっとしてたから相手が避けてくれるみたいな泳ぎになってた。ってあれ?
「あの!何かお困りですか?」
「えっ、私ですか?」
ナンパかセールスみたいになってないよね?とりあえず相手に警戒され過ぎないように慎重に行こう
「はい、あなたです」
「あの、その、壺とかは要らないですぅ!」
うわぁ……思いっきり誤解されてるぅ
「ごめんなさい。そういうのじゃなくて、えーっと……そう!占い!今日の占いで運勢が悪かったんですけど、困ってる人を助けたら運気が良くなるって言われまして……それで、困ってる人居ないかなーって……」
流石に怪しいか?うん、怪しいな。僕ならなんだコイツってなってる奴だ
「ホントですか!実は私も困ってる人を助けたらあなたの運気は良くなるってマダムの館で言われたんです!」
マダムの館……海底都市にそういう占いの館的なのあるんだ……
「あなた今困ってますか!?」
「えと……はい、困ってますね……」
ガシッと両手を掴まれた。しまったなぁ……これは話しかける相手間違えたかな
「でしたら!私にお手伝いさせてくれませんか!」
「あ、えと、やっぱりやめておこうかなぁって……」
「まぁまぁ遠慮せずに!せっかく困ってるんですから!」
困っててオドオドしてる系かなと思ったらかなりグイグイ来る系だった。これは……本の話をした時のルクレシアさんに似てるな。仲間を見つけた!って時の……
「さぁ!一緒に助け合いましょう!要件を言ってください。さぁ!さぁ!さぁ!」
「こらっ!」
「ぎゃふっ!?」
絡まれて困って居たら、絡んできた人魚さんの後ろから男の人魚さんが頭に拳骨を落として止めに来た。一応この人の後ろに回っておこう
「お前また人に迷惑を掛けて……そっちの人が怯えてるじゃないか!」
「い、いやそんなつもりじゃ……」
「あの、すみません。実はちょっと込み入った事情で……」
「え?」
流石に頭に拳骨喰らってるのに僕は無関係ですよみたいな事は出来ない
「人魚の方に協力して欲しい事がありまして、それで協力してくれそうな人を探していた時にぶつかりそうになったのがこの人で……」
「私はこの人が占いに興味がありそうだったから……」
何があったかしっかり伝えておかないとね。上手くいけばこっちの男性人魚さんが協力してくれるかもしれない
「えっと、湧水の心ってアイテムを作りたいんですけど、人魚の協力が必要だって言われたんでどうしたら良いかなって」
「「湧水の心だって!?」」
やっぱり相当用意するのが難しいんだろうか
「それを使っていったい何をするつもりなんだ?」
「水源……というか温泉を作るのに必要なんですけど、僕もどういったものなのか分からないので、知っているのなら教えてくれませんか」
どういう物なのかまずは知らないと入手のしようが無い。人魚の協力が必要という事は、人魚ならその入手方法を知っているだろう。それにさっきの反応的にも知っているのはほぼ確定だし、聞いてみよう
「んー……その理由は良く分からないが、湧水の心は人魚の涙というアイテムが必要なんだ。他にもアイテムは必要だが、一番重要なのは人魚の涙だな」
「他のアイテムと言っても必要になるのは種類が違う魚を5匹ですから、本当に人魚の涙だけあれば作る事自体は簡単ですけど……」
人魚の涙と魚5種。なんとも凄い組み合わせだな?でもそれで水源が作れるって事は本当に人魚の涙ってアイテムは凄いんだろう。なんか他にも使い道がありそうなアイテムだよなぁ……というかちゃんと話を聞いてくれるのはありがたい。こっちから巻き込んでる様な物だから謝ったからそれじゃ!みたいにいきなり居なくなってもおかしくないから今の内に入手法を聞いてみるか
「あっ!入手法が分からなくて困ったから教えてくれませんか?それで運勢良くなるかも?」
とりあえずさっきの言い訳がまだ効きそうな今の内に聞いてみよう
「……人魚が感極まった時か……死にかけた時に生み出されるアイテムです」
「おいバカっ!」
「えっ」
それは確かに言い淀むのも分かる。最悪、人魚を追い詰めれば入手出来るかもしれないからそんな事を言うのは正直自殺行為に近いと言っても過言では無い
「「……」」
そうだよね。絶対僕の事を警戒するよね




