砂漠の洞窟
「いやぁ~見事なまでに何にもないねぇ」
一面砂、砂、砂。たまに岩場。一人旅も悪くは無いけど、流石にずっと代わり映えのしない景色で一人ずっと進むのは少しだけつまらない。一旦何処かで食事休憩がてらモノと会話でもしようかな?
「何処で休憩しようか……あの岩場が少し大きめで良いかなぁ」
パッと見た感じ今まで見た岩場の中で一番大きい。何か岩と岩が組み上がって自然のシェルターみたいになってるからあそこで一旦休憩しよう
「おぉ!これはもしかして砂漠の中に洞窟があったりするパターン!?」
岩場に降り立って少し見た所、岩と岩が重なってシェルター状になっていたのはそうだけど、その奥、下方向に向かって穴が開いていた。周りが岩で囲まれた穴なので、これはもしかすると砂漠の中だけど地下探検みたいな事が出来るかもしれない
「まぁ、まずはご飯食べてからだけどね」
そそくさとおにぎりとか水を取り出し、食べる。あの洞窟が気になるから早く食べて早く向かいたい……っと
「モノ、今話せるかな?」
「何?」
ちゃんと出てきてくれた。意思の疎通がしっかり出来ればもしかして具現化のトリガー行動以外にも何とか出来たりするのかな?
「さっきは僕の事お金から守ろうとしてくれてありがとうね。でも、僕も可能な限り自分で払いのけられる時は払いのけるから、僕じゃどうしようも出来なくなりそうな時にモノに助けて欲しいんだ。出来るかな」
こういう時に否定したらせっかく僕の為を思って行動してくれたモノがへそを曲げてしまうかもしれない。だから、場面をこちらから限定してみる
「どうしたらいい?」
「そうだね……基本的に人から貰いそうな時はまず僕が説得してお金は要らないって言ってみる。もしそれでも無理矢理お金を渡そうとして来たら……モノの出番かな」
いきなりモノに出てこられたらこっちも不意打ち状態になってしまう。だから、勝手に出てくる場面をこちら側でコントロールするには、最初いきなり出てくるのではなく、僕が会話して一度断ってもまだ相手がそれで諦めない時。みたいに僕の方で出てくるタイミングが掴めるようにしたい
「……努力してみる」
「偉い!努力してくれるんだね!流石モノだ」
「ふひゅっ……」
ここで嫌と言われたらどうしようと思ったけど、ちゃんと努力すると言ってくれた。これは褒めるべきだろう。本能で僕にお金が入ってくるのは全て阻止しようとするのを、僕が断るかどうか一度見てから阻止に移行するとではかなり違う。これで少なくともモノが不意打ち気味で現れる事は無くなるだろう
「そうだ、モノも一緒に何か食べる?」
「……食べる」
「じゃあ……これとかどうかな?」
少し少な目のパスタとデザートのアイスクリーム。モノが小食かもしれないからまずはこの辺でおかわり要求してくるならその時追加すれば良い
「美味しい」
「良かった。口に合ったみたいだね」
「けぷっ……」
「ちょっと多かったかな?今度何か食べる時はもう少し量を減らす?」
「うん……」
あくまでモノは嫉妬の縛占貨というコインの化身?みたいな物だからそこまで多くは食べられないか。これは本当に主食はお菓子みたいなレベルの量になるかも
「オッケー。今度はモノに合わせたサイズのご飯を作ってみるよ。小さくて色々味わえる様に工夫してみるから期待しててね!」
「うん!」
お子様ランチより更に小さい……お寿司みたいな物が良いかな?上に乗せるネタを色々変える事でモノでも色々楽しめたりするかな……いや、米だと少し重いか?それならクッキーみたいな…クラッカーとか?
「新しい料理のイメージが出てきたな。いやぁ、やっぱり誰かに料理を振舞うって良いな」
大食いの人向け、小食の人向け、偏食の人向け、色々な人に合わせて料理を考えて、新しいアイデアが生まれるのかもしれない
「ご馳走様でした。よし!早速この洞窟を調べてみるか」
お腹もいっぱいになったし、見つけた洞窟に侵入してみよう
「おー、結構深い……よっと」
垂直に穴が開いていたのでそのままダイブしてみる。何かあったらすぐに壁に張り付くか【ディジャヴ】で3秒前に戻ったりして対処しよう
「っとと!まぁまぁ深いな?」
20mくらいはあるだろうか?結構な深さだ。灯りは無いけど、【ゲッコー】の暗視効果のお陰で先は見える。何が待っているか分からないけど、とりあえず進んで見よう。周りは全部岩で囲まれているからまだ生き埋めにされるって事は無さそうだけど、一応急ごう。制限時間付きだったりしたら困るし
「道は一応1本道だけど……、敵の気配は無いな。よし、これは罠があるかどうかは【察気術】で察知して、深淵で対処するか」
せっかく砂漠に来る前に深淵で特訓して来たんだからそれを使わない手はない。今なら壁から槍とか毒矢が飛び出してきても、対処出来る自信はある。この先に何があるのか、それとも何か居るのか……この目で確かめに行こう。最悪生き埋めになるような事になっても、絶対に地上まで戻ってみせる