逃げる者 追う者
「今回も上手く逃げられたわね」
「ハチ君は周囲の人達を仲間にする天才だからな……周りの人が協力したら私達が追跡するのは不可能だろう」
「あわわ、あわわわ…」
「美味しいけど、お腹いっぱーい」
宮殿での祝勝会。食べ物や酒など色々並んでおり、住人達が感謝として色々と話しかけて来たり、あれ食べないか、これ食べないかと囲んでくるから抜け出すに抜け出せない
「あぁ、君達。すまない。伝えておかなければならない事がある」
「何でしょう。陛下」
「こちらで預かっていたハチだが、君達が来るまで待っていてもらおうと檻に入れて待たせていたんだが、どうやら脱走したようだ。一応どんな檻だったか見ていくか?」
脱走。どうやら、私達を足止めするのがこの人達の役割だったみたいだ
「一応確認しておこうかしら、鍵を掛けてない檻だったらそんな物は意味が無いし」
「ハチ何処に入れられてたのー?」
「すみません、こんなには食べ切れません……私も檻が見たいです!」
多少酔っぱらっている人も居るからこの場から離れられるなら何でも良いと言わんばかりに全員が檻を見に行く事を決めた
「これが……」
「結構中は色々揃ってて快適そうね」
「ここに入ってもらう者は力を借りるのが目的だからな。別に懲罰の為ではないから中は色々揃っている。そして本題だが、ここを開ける鍵は私が持っている。試しに誰か1人入ってみてくれないか?」
「じゃあ私が入ります」
誰か1人試しに入ってくれと言われたので、アイリスが檻に入る
「このように扉を閉じたら鍵は閉まる。ほら、出てくるんだ」
ドアがだいたいオートロックの形式になっている事は分かった。だが、だからなんだという話だ
「ハチ君には私も色々と話を聞きたいのもあって、祝勝会がある程度落ち着いてから話を聞こうと思ってここに入れておいたのだ。だが、結果は見ての通り……もぬけの殻だ。しかもこの扉は開いていた。彼は凄腕の盗賊か何かか?」
「鍵を開けて逃走したって事ね」
「ハチ君ってそんな事出来ましたっけ?扉を破壊するならハチ君にも出来そうですけど……」
「協力者がいるという線は無いのか?」
「祝勝会に宮殿の者は全員参加でここには人が居なかった。だが、牢だけでは無く、この部屋に通じる扉にも鍵は掛けてある。それにこの入口には見張りも居ただろう?ここから人が出られるような所はまず無い。見た限り穴を開けたような形跡もないから私も本当に何処に消えたのか分からないのだ」
本当に分からないという表情をする女王を相手に全員混乱する。本当に協力者は居ないのだろう
「じゃあハチ君は何処に……」
「ねぇねぇ!あれはー?」
「あんな隙間を人間が通れる訳が無いだろう」
「「「「…………」」」」
人間が通れる訳が無いと言われる細い隙間。小柄なハチ君と言えど流石にあれは……と思ったが、その直後に「あのハチ君なら行けるんじゃないか?」と思考を巡らす4人
「あー!やっぱり!」
隙間を覗いて「やっぱり」と言うキリアに続いて他の3人もその隙間を覗くとその隙間の先で泉に向かって走るハチ君の後ろ姿が見えた
「まさか……彼は本当に人間か?」
女王も隙間を覗き、確認する
「あんな風に普通の人では出来ないような事をやって一人でドンドン進んでしまうので出来れば手の届く範囲に居てもらいたいんですが……」
「なるほどな。君らが彼を逃がさないようにしようとしていた意味が分かった。凄いな……想像以上だ。だが、そんな君達に1つだけ忠告しよう」
「忠告……ですか?」
「欲しい物は追えば追う程逃げていく。向こうに追わせる方がずっと良い。良い女ならなおさらだ」
妖艶な笑みを浮かべる女王。女という事で釣れるのであれば話はずっと簡単だっただろう
「まぁそうだな。見た所彼は好奇心が強い。何か面白そうな情報でもあれば、彼の方からやって来るんじゃないのか?」
「「「「確かに……」」」」
何か情報があればハチ君は確かに寄って来るかもしれない。押してダメなら引いてみろの発想をまさかの所で得る4人だった
「レベル差があるならデバフとバフを使ってステータスの差を埋めれば何とかならないかな」
新エリアに入るボス戦前に新しく入手した【スコピオ】の練習はしておきたいな……もしくはもう少しだけレベルを上げて更に新しい魔法とかもあれば入手もしたい
「多分だけど、この砂漠でのイベントみたいな物って1つだけじゃない気がするんだよな……」
多分これまでと一緒だと思うけど、1つの街にクエスト1つなんて事は無かったと思う。そんなのゲームとして面白くない。だから、クエストみたいな物はあの街を救う以外にもあるはずなんだ。だからそれを探して砂漠をもう少し放浪してみるのも良いかな。幸いにも僕にはモルガ師匠から貰った日除けとかニーニャさんから砂漠での戦闘法も学んでいる。何なら紫電ボードがあるから移動方法に関しても足跡を残さずに移動出来る。ここは一旦例の方法で進むべき道を1つ占ってから行こうじゃないか
「さぁ、何処に行こうか!」
棒を投げて僕の進むべき道を示す
 




