凡ミス細胞
「さてと」
陛下も何処かに行き、僕だけになった。それすなわち脱獄の為に活動するチャンス。早速動こう
「これは……」
とりあえず鍵は破壊しないで、ピッキング的な行為で開けられたらラッキーと思って開けよう。流石に檻を破壊するのは違う
「おっ?これはルクレシアさんの所の本で見た気がする……」
図書館で鍵の歴史みたいな本を読んだ時にこんな形の鍵もあった気がする。これは確か本の後半……魔法鍵に分類されてた物の気がする。実在する鍵ではなく、何処かに魔法的要素が加わっている鍵。これならもしかすると僕でもピッキング出来るかもしれない
「見えるかな……」
【察気術】を発動して鍵をよく見てみる。鍵自体の構造をしっかり理解出来れば、初心者だとしても何とか出られるハズ……
「このピンを上げれば良いのか?」
鍵の中を見てみると、穴の中に無数のピンがあった。3本だけ魔力の反応があるが……これはどっちだろう?
「これは……触った方が良いのか?それとも避けた方が良いのかな」
でもこれは鍵の構造上鍵穴に入れたらこのピンには触れるよな……もしかしてこのピンには必ず触れてないといけないのか?
「いや、これは逆か」
魔力反応があると言う事は、仮に何かをこの鍵穴に突っ込んだ場合、この魔力ピンに一度は接触してしまう気がする。魔力があるのなら、触れたらそこから魔力が流す事が出来るだろう。鍵に特殊な処理がされていれば……これは完全に仮定の話だが、ピッキングを試みようとした者にこの魔力ピンから雷魔法を喰らわせて気絶させるみたいな事になっていた場合。鍵に絶縁処理的な事がされていれば何の問題も無く扉を開ける事が出来る。だからこの魔力ピンには触れずに他のピンを触って開けられるか試してみよう。それでダメなら魔力ピンを全て同時にいじってみるしかない
「この魔力ピンが防犯センサーの役割を担っていると想定してそれを回避しながらピンを上げて鍵の開錠をやってみるか」
オープンワールドのゲームとかでたまにこういう鍵開けとかあるから何となく何をすれば良いのかは分かる。ただ、今回はイライラ棒みたいに魔力ピンに当たってはいけないというルールが追加されていると想定して作業しなければならない。となると、今の僕の手持ちのカードで繊細な操作が出来る物と言えば……
「一丁やってみますか!」
そうだね。プロテ…深淵だね!
「すぅ……ふぅ……よし!」
深呼吸して一旦落ち着き、鍵穴に向き合う……と言っても扉の向こう側なので手を檻の外にだしてそこから深淵で鍵穴に侵入するから、厳密に言えば向き合っては居ないかな?前ならえ状態?とにかく、ここからは慎重に作業だ
「細く、思い通りに動かせ……」
指先よりも、鉛筆よりも、その芯よりも……細く、更に細く。手は動かさないように檻に当てて完全に深淵に意識を集中する。【察気術】で扉の鍵の中は見えている。だからその情報と深淵を合わせるようにノーマルピンだけをゆっくりと慎重に押す。緊張感凄いぞこれ
「これ、深淵と自分の感覚をリンクさせるとか出来るかな……」
意のままに動かす事は出来る。でも、今回重要なのはピンが適切な位置まで押せるのか。という事なので、深淵でピンを押して、嵌るような感覚が深淵から僕に伝わって来ないと何処まで押し込んで良いのか分からない。自分と深淵を一体化させる気持ちで指先の更に先まで神経が伸びている様に……
「あれ、何か感覚が……」
不思議な感覚。手の更に先で何かを触れているのを感じる。これは……おっ、何か嵌ったような感覚が……来た来た!回せる!
「開いたぁ!」
カチャンと音を立てて扉が開いた。やったぜ!
「いやぁ、中々大変だったけど上手くいったな。さて、それじゃあ泉に向かいますか!」
大事なのはバレずに泉まで行く事。皆を避ける気はないけど、何となく僕を捕まえようとしてくるなら逃げたくなっちゃう。追いかけられたら逃げる。これはもう自然の摂理みたいな物だ
「この隙間……ここを抜けたらショートカット出来るかな?」
牢屋の置いてある部屋に明り取りか何かの隙間があってその先を覗いてみたら外の様だ。人が通るには明らかに狭すぎる
「あっ!こういう時は……テッテレー!【バリアント細胞】」
ニクリウスさんに教えてもらったこの【バリアント細胞】で体をペラペラにしてこの隙間を出よう!
「【バリアント細胞】を使ってそのまま牢屋から出れば良かったのでは……?」
隙間を抜けて、【バリアント細胞】を解除してから思い出す。さっきの隙間が抜けられるんだったら牢屋の鉄格子なんて余裕で抜けられるじゃないか……あんなに神経張り巡らせて鍵を開錠しなくても良かったじゃん……
「まぁ気を取り直して……早速泉を登録しようか」
宮殿で盛り上がっているお陰か、人は少ない。これは……逆に目立つな?発見されると逃げるのが難しい。でも触れば登録出来るから登録したらこの街を出るか。色々と挨拶とかしてないけど、まぁ人が1人消えるくらいどうって事無いだろう。あとの事はモルガ師匠の弟子として皆に任せようそうしよう!




