師匠からの手紙
「これならそれなりにやれるんじゃないかな?」
シスター服が基本装備になるけど、【精神防壁】での足場確保と防御、縛占貨での中距離攻撃、それに隠し玉のアレ。これなら見た事無い相手との戦闘になってもある程度は戦えるかもしれない。仮に戦力にならなかったとしても、囮は最低でもこなせると思う
「充分行ける。これなら私が教える事はもう無い。立派な戦士」
お墨付きを貰えた。でも正直まだ不安がある。砂漠と言えば流砂が付き物だと個人的に思うが、これに戦闘中にはまるようであれば、一発アウトだろう。その辺の対策とかってあるのかな?
「ありがとうございます。ところでニーニャさん?この砂漠って流砂とかあるんですか」
「忘れてた。砂の色が濃い所は気を付けて」
色の濃い所……あ、あった。確かに砂の色が濃いし、渦巻きのような模様がある。あれは足を踏み込んだら飲み込まれるって分かりやすいな
「はい。因みに戦う相手ってどんな奴なんですかね?」
「ミミズ、サメ、モグラ」
「わぁ……分かりやすい」
完全に地下から襲いますって言ってるような物だなぁ……
「ミミズはデカい。サメは人型で地上に出てくる。モグラは人を砂の中に落とす」
「それはかなり面倒そうだ」
ミミズが施設破壊。サメが敵の足止め。モグラがその足止めした敵を無力化して全員で撃破してくるみたいな感じかな?
「その中だと一番面倒なのはモグラかなぁ」
ミミズとサメは誘導出来そうだけど、モグラは多分思考ルーチン的な物が違う気がする。自分が敵を倒すと思って居る奴はそれなりに誘導しやすいが、味方が倒しやすいように敵の動きを止めたりする奴は単体になると逃げたりする。そもそも敵が砂の中だし、これは苦戦しそうだな
「モグラに埋められて、サメにやられたり、動けなくなった所をミミズにやられたりする。だからモグラは一番厄介」
まぁ、その場合だと地上で戦ってくれるサメとかミミズが優しいまである。モグラはしっかり自分の優位性を相手に押し付けているに過ぎない
「モグラが来る前兆みたいな物とかってあります?」
「地面が揺れるから槍で刺す」
接近して来る時に揺れで分かるって事か。にしても対策も凄いな……揺れたら地面に槍を突き刺してモグラを倒すって事か。これは奥の手を率先して使用して戦うのもアリかもしれないな……
「そいつらが来たら僕も戦闘に参加します。でも、皆さんと一緒には戦いません」
「どういう事?」
「街が危険って要するに街に対して敵が来るんですよね」
「逃げるなら、構わない。こっちが勝手に巻き込んだだけだし」
おっと誤解されてるな
「全員が正面からぶつかる必要が無いって話です。でも、大量に街以外に兵を置くのもリスクが高いので、僕が側面、あるいは敵の背後から強襲を掛けて戦場を混乱させる事が出来たら皆さんは戦いやすくなりますよね?僕が失敗したとしても、一応は特に今までと変わらないでしょうし、損害も特に無いでしょうから」
奇襲を仕掛けるのが1人であれば、街の方で特に対応を変える必要は無いし、情報を広める必要性も無い。すぐ敵が来るのであれば、すぐに行動した方が良いだろうし、即座に動かせる駒はどれかと言えば……僕だよね
「さっきのは確かに凄いけど、1人じゃ流石にどうしようもない……」
「まぁ、1人じゃ難しいでしょうね」
縛占貨を指で弾きながら答える。確かに1人きりだと出来る事はたかが知れてる。でも、1人じゃ無ければ出来る事は沢山ある
「分かった。ハチが個別で動いて何かするって伝えておく。今日中には敵が来る。その時が来たら街から知らせを出す」
「お願いします。こっちは待機しておくんで」
これで今日来ないだと凄い困るけど、それならそれで砂漠でサバイバルするのも良いかもしれない。一応モルガ師匠に日除けとか貰ってるし、水も食料も、シロクマコスチュームがあるから暑さや寒さもへっちゃら。だから砂漠に放置されても割と問題無い。何気にこれ凄いのでは?
「大丈夫なの?」
「ええ、まぁ流石に来るまで1週間とかだとちょっと食べ物とか水の残りが心配になりますけど、1日2日程度なら問題無いです」
「流石、紹介されただけはある」
「紹介?」
「モルガ様から、とびっきりの凄いのを送るって言われてた」
それって僕の事ですかねぇ?これはどうしよう。判断に困るな……
「こんな感じ」
銀髪さんが手紙らしき物を僕に見せる。とりあえず読んでみよう
「えっと何々……『やあやあ、街が今大変らしいね?そこで良い話があるんだけど、私の一番弟子をフィフティシアまで迎えに来て欲しいんだ。常識って道が用意されてるのに非常識で新しい道を勝手に作っていくようなとびっきりの凄い大物だよ!(身長は小さめだけど本人は気にしてるからそれは言わないでね!)多分、女王様も気に入ると思うから宮殿まで連れて行ってみて。そうしたら多分手伝ってくれると思うから! 追伸 単独行動したがると思うからその時は自由にさせてあげて。そうしたら大抵の事は解決してくれると思うよ!』ですか……」
何だろう。もしかして見透かされてる?
「うーむ、これはおやつ抜き……いや、本来は僕に見せる物じゃないから注意事項として書いてるからセーフか」
「忘れてた。もし、その手紙を見せるならこれもって言ってた」
もう一つの手紙。これは僕宛か?
『もし、もしもさっきの手紙をハチ君が見たならあれは本当に注意事項を書いただけなのでおやつ抜きにはしないでください。あと早く解決して戻って来ておやつください』
あの人本当にブレないな?