イベント終わり!
「勝者!エントリーナンバー815!」
オーブさんの宣言がコロシアムに響く。これで僕は決勝進出だ
「あいつ……なんなんだ?」「普通じゃねぇ……」「あれはいったい何だったんだ?」
色んな声が聞こえてくる。なんだって言われてもただ、工夫して戦っているだけなんだけどな……?
「それではレイカ様対ロザリー様の試合を開始します!」
僕と入れ替わりにレイカさんとロザリーさんがコロシアムに出てきたが……何か様子がおかしい?
「ちょっと良いですの?」
レイカさんが挙手しながら言う
「ん?なんだ?」
「私、棄権するですの」
「なっ!?」
まさかのレイカさんが棄権を宣言した。マジですか?
「レイカ様、本当によろしいのですか?」
「ええ、このまま戦っても無様を晒すだけですの。それなら3位で良いですの」
「分かりました。ではレイカ様の棄権を認めます。ロザリー様は決勝進出です」
「はぁ……分かった」
あぁ……ちょっとこれはヤバい。ロザリーさんの機嫌が悪くなってる。ではここで問題、ロザリーさんの鬱憤の矛先が向くのはだーれだ?
答え……僕ですねぇ!
というかサラっと3位で良いって言ってたけどガチ宮さんに勝つって言ってる様な物だよね?
「ガチ宮様は先程のショックにより、安全性の確保のため強制ログアウトしてしまったのでレイカ様は3位に決定です」
えっ……これひょっとしなくても僕のせい?
「あら、あの人に勝つつもりでしたのに……まぁ楽が出来ましたわ。あの人には感謝ですの」
うん、感謝されるのは嬉しいけどこの後すぐに僕がその場に戻されるよね?
「では気を取り直して……エントリーナンバー815様対ロザリー様の決勝戦を開始させていただきます」
レイカさんがポリゴンになり、僕がコロシアムに引き寄せられる。あっ、もうやるんですか?
「やはり上がって来たな?」
「ど、どうも……」
一瞬獰猛な笑みをした気がする……妹想いって事にしておこう
「君をこr……妹の仇を取らなければならないのでな?覚悟してもらおう」
今殺すって言いかけたよね?
「それでは決勝戦!開始です!」
オーブさんの声が響く
「お手柔らかに……って言っても聞いてくれないんですよねっ!?」
レイピアによる高速の突き。顔を狙ってくるあたり殺意溢れてる
「当たり前だろう?私の可愛い妹にあんな事をしたんだ。死を持って償ってもらわなければ」
僕には兄弟も姉妹も居ないけど、自分の為にここまでキレてくれるって案外嬉しいかもしれないな……その怒りを向けられている僕はたまったものじゃ無いけど……
「それに関しては悪いとは思ってますけど、僕だって切り刻まれるのは嫌ですから」
誰が好き好んで斬られるというのか。そもそもPvPなんだからアイリスさんもやられる覚悟を持っていない訳じゃないだろう。僕はその覚悟が若干出来てなかったけど……
「まあいい、私の可愛い妹を傷付けた罪は償ってもらう!【覚醒】!」
ロザリーさんが何かスキルを発動する。体から迸る白いオーラを見るに、明らかにステータスが強化されている事が分かる。とりあえずこれはもうどうしようもないな
「さぁ、決着を付けるとしよう」
「そうですね」
「ん?」
ここで僕も【覚醒】……なんて出来たらカッコイイのかもしれないけど【覚醒】なんてスキル持ってないんだなこれが。どうせ顔は見えないなら仮面を首輪形態にして何かしそうな雰囲気でも出しておこう
正直これ以上スローモーションになると頭痛で限界だ。モンスターと戦うより人間と戦う方が脳を酷使するな……
「はぁ!【クリムゾンスラスト】!」
先程よりも更に速い突き。紅い螺旋状のエフェクトがレイピアの先からロザリーさんを包むように出ている
スローな世界でも動きが早いロザリーさん。タイミングを完璧に計れる訳じゃ無いけど出来るだけ引き寄せて……
「【インパク】」
自分の腹部に【インパク】を放つ。すると後ろに体が吹き飛ばされる
「なっ!?」
「へへっ……」
ロザリーさんの驚く顔が見える。それもそうだろう。攻撃は当たってないのに相手が吹き飛んでいるんだ。それに僕は自分に対しての【インパク】を止めていない。するとどうなるか?答えは単純だ。僕の体は後ろに吹き飛び続ける
最初から負ける(勝てない)と思ってたけど攻撃を当てられて負けるつもりは無い。あんな攻撃を受けたらそれこそ上半身と下半身がバイバイして死ぬ。それなら自分からまるでレイピアを喰らった様に見せかけ、自力で場外負けになってやる
「ぐわぁぁぁ!【インパク】」
悲鳴は大きく、詠唱は小さく、実際、相対しているロザリーさんにはもろバレの猿芝居かもしれないけど観客席から見ている人達には分からないだろう
ロザリーさんが派手な技を使ってくれたお陰で観客の人達はこれがロザリーさんの必殺技なんだと思っているだろう。実際のロザリーさんは【クリムゾンスラスト】を発動中の状態で僕が【インパク】を自分に使って当たらない様に逃げているだけなんだけど……やばっ、ロザリーさんの方が速い。これ場外までレイピアに追いつかれずに行けるだろうか?
「くそっ!」
「さよなら」
ジリジリと距離が詰められるが何とか場外に逃げ切った。体がシュワシュワする感覚と共に僕自身がポリゴンになる。あぁ、頭痛い。ダメだ……ログアウトしよう
「はぁ、はぁ、ちょっと水でも飲もう……」
コロシアムはセーフティエリアなのかすぐにログアウト出来た。街中って判定なのかな?
「遠距離攻撃手段、範囲攻撃、防御手段ももう少しあると良いのかなぁ?」
冷えた水を飲みながら一人で反省会。今後もコロシアムでは対戦が出来るようになるんだろうけどもうコロシアムに出る事は無いだろうなぁ……確かに場外勝ちが出来るのは僕との相性は良いかもしれないけどあの地獄姉妹(キリエ、キリア)とか、ロザリーさんとまた出会ったら狙い撃ちにされそうだ。そもそも街に行っただけでも見つかったら大変そうな気がする
「街はもう行かなくても良いかも?」
お金は無い、ヤベー奴に目を付けられた、特に仲の良い人も……ハスバさんは、まぁあの感じだし問題ないか……装備更新も別にしなくても良いから街に行かなければならないという訳じゃない。あ、でも泉が無いから村には行けないか……
「まあ、良いか。ちょっと寝てからまたやろう。頭をリフレッシュだ」
今後の方針をある程度決めて、酷使した脳を休ませるために仮眠を取る事にした