囚われの献身
「これに関しては喋る事は出来ません」
村の皆との約束だしね
「ふむ、では質問を変えよう。何故、紋章を体に刻みながら正気を保てる?先程の打ち合いの様子からも何も不都合が無さそうなのが不自然だ」
んー、もしかして過去に紋章を人間に付けようとした事があるのかな?
「そういう体質だった……としか言えませんね」
「紋章については絶対に喋らないか……」
「では、こちらからも質問です。私をここに閉じ込めて何をなさるつもりでしょうか」
少し騙すような感じで監禁してきたから何かしらの事情がありそうなんだよなぁ……しかもアレに対抗出来るとか意味深な事言ってたし
「単純に力を借りるだけだ。この牢獄は中に居る者の能力であるスキルや魔法、装備品の効果を私に付与出来る。お前と戦って分かった。お前は私が今まで戦ってきた相手の中で一番強い。だからお前の力を借りて、この街を救う」
やっぱりそういう系だったかぁ……ってちょっと待って?スキルと魔法は別に真似されても問題無いけど、装備品の効果を付与ってどういう事だ?
「私が装備している物の効果を陛下が得るのですか?」
「そうだ。この牢獄は『囚われの献身』と呼ばれるアーティファクト。中の者の力をこの『受け止める重圧』を装備している者に付与するのだ。お前のような一流の戦士は失う事は許されない。だから私が戦う」
つまり僕を何かと戦わせない為にこの牢獄に監禁して、その能力だけ借りて陛下自らが敵と戦うって言ってるのか
「それでしたら絶対に使わない方が良いです。碌な事になりませんよ」
能力は確かに上がるだろうけど、僕はかなりピーキーな性能してると思う。しかも今しっかり言っていたけど、僕の魔法とスキルと装備品の効果を付与するって言ってた。その中に称号の効果が入っていない……装備のデメリット効果を称号の効果で消している所もあるからそれが無くなると間違いなく僕の能力コピーはデメリットにしかならない
「大丈夫だ。心配しなくても君に危害を加えるつもりはない」
「あ、逆です。僕の能力をコピーしようとしたら陛下に危害を加えてしまう事になるので、止めておいた方が良いという理由です」
「なんだと……」
流石に危害を加えるというワードが周りに居た護衛みたいな人達の耳に入ったから警戒モードになって檻を取り囲んで槍を向けられた
「STR90%減少、狂暴化、常に暴走の危険性アリ、金銭入手不可能、その他諸々を受け止めて自分のステータスとマッチしていると言えるのであれば協力は惜しみませんが、先程拳を合わせて感じたのはパワーによって相手を圧倒する戦闘スタイルだと思ったので、僕の能力をコピーしても弱くなるだけでは……と」
能力の方向性が合っていないのに、僕を付与するみたいな事をした場合。絶対にマイナスにしか働かない
「STR90%減少……」
「なにそれ…」
「そんなの絶対要らない…」
「デメリット重すぎ…」
おうおう、槍を突きつけながら言ってくれるねぇ?
「でまかせか?」
「いえ、事実です。先程挙げた中で称号の効果は入っていなかったので、称号の効果が無い場合はそういう危険性が残ります。勿論、これは仕方がないと受け入れている物もありますがね」
まぁ、狂暴化と暴走の危険性アリくらいしか消せないけどね
「……分かった。先程から失礼な事をしてしまい申し訳ない。今檻を開ける」
どうやら僕に見切りを付けたみたいだ
「力になれず申し訳ありません」
「君が謝る事ではない」
開けられた扉から外に出る。正直脱獄的な事をちょっとしてみたいと考えてたから、ちょっと残念
「そうだな、おい。彼を街まで送ってやれ」
「分かりました」
おや、さっきの銀髪さんだ。え?街まで送るって言った?
「お待ち下さい。街まで送るとは?」
「フィフティシアの街まで送ります」
銀髪さんが答えたけど、それじゃあ意味が無い
「どうしてこの街に居てはいけないのでしょうか」
「もうじき戦が始まる。奴らは砂の中から現れては人を喰らう。この街も危ういのだ。雑魚の相手なら住人達でも出来るが、親玉はそうもいかん。だから対抗する為の力が欲しかった」
「じゃあお手伝いしますよ。僕も先に進む為にはボスを倒さなければいけないので。あ、良かったら砂の上での戦闘法とかご教授してもらえませんか?」
不謹慎だけど願っても無いレベル上げのチャンス到来。これはお手伝いしない訳にはいかない
「何?良いのか?さっきは客人に対する対応では無かったと思っているのだが……」
「僕としては困ってる人は見過ごせませんから。それに、この街もまだ全然観光してませんからね」
折角砂漠の街というちょっと面白そうな所に来たのに、探索もしないで、危険な敵が来るから帰ってーはつまらない
「ぷっぷはははは!観光と来たか!良いだろう!事が済めば幾らでも観光するが良い!」
「それではえっと……この方に砂上戦闘を教えて頂きたいのですが」
「私ですか?」
僕を運んで来た銀髪さんを指名する。あの砂漠を走る足さばき。絶対に戦闘でも使えるハズだ
「良いだろう。ニーニャよ。教えてやれ」
「分かりました」
砂漠戦闘の先生としてニーニャさんがついてくれたぞ!




