宮殿に
「これで良い……のか?」
「……いやぁ、これはどっちもどっちか?」
女の子にずっとお姫様抱っこさせるのと、見た目的にはペットか奴隷みたいな手枷に鎖を繋いで街中を歩くってどっちが悪いんだ?僕が恥ずかしいのか、この銀髪さんが恥ずかしいのかの違いになるのか
「僕は自力で歩けるので出来れば自分で歩きたいんですけど……今の状況を見られると良くないって言うのならさっきみたいに肩に乗せて運んでもらっても構いません。街ならそこまで走るとかは無いでしょうし」
「私もこれは何だかいけない事をしている気がする。また運ばせてもらう」
「はい。それじゃあ運び方に提案があるんですけど……」
お互い、流石に鎖で引き連れ回すのは見た目が良くないと意見が合致したので、また運ばれる事になる。一応今回は僕の提案でファイヤーマンズキャリーと呼ばれる銀髪さんの両肩に僕の体重を分散出来る運び方にしてもらった。これは消防士とか自衛隊とかもやってる負傷者を迅速に運べるような持ち方だし、体重を分散してるから運びやすいハズだ。実際の火災現場だとどうしても運ばれる人が高い位置になるから煙を吸いやすくなってあんまり使ってないらしいけど……
「これなら楽に運べるかなって」
「確かに、バランスは取りやすいし、両手も一応は使えるからこのままでも戦えない事はない」
人を運ぶついでに戦闘しようとか考えないで欲しい
「それで、何処まで行けば僕はその仮で入っている状況を何とか出来るんでしょうか」
「あそこだ」
インドとかにありそうなタマネギ屋根の宮殿みたいな所を指差された。余所者をいきなり宮殿に運ぶってなんか不用心だなぁ……
「どうせこの街に来た奴はあそこを目指す。この街の住人じゃない奴は見れば分かるからそういう奴を見かけたら、皆道案内してくれる」
見た限りだとこの街の人達はアラビアンな恰好をしているからまぁ確かに一目でわかると言えば分かるのかな?
「にしても不用心なのでは?変な余所者とか来たら大変でしょう?」
「この街の住人は皆戦いが好き。一人で居たら凄く声を掛けられる」
ヤバいって。この街バトルジャンキーの街だったって
「誰かが街の外から人を連れてきたら、それは客人で手を出してはいけない。1人で来たらそれは挑戦者だから歓迎する。だから私から離れるのは良くない」
この街の人達と話した訳じゃないけど、鎖で繋がれて歩いていたら鎖を破壊されて戦闘を挑まれてたりしたのかもしれない。この街怖……
「あの宮殿に持っていればバトルを挑まれないように出来る木札がある。挑戦者はその木札を目指して宮殿に向かう。客人にはその木札を渡すから宮殿まで連れて行く。どちらにしても宮殿には行く事になる」
「へ、へぇ……」
住人がバトルジャンキーだからゴールの宮殿まで無事にゴール出来るかみたいなのがこの街を偶然発見した人には発生しそうだな。確かにその話を聞けば、こっちを見る住人の目は一瞬獰猛な鷹みたいな鋭い目で見られるけど、僕が運ばれてるから客人だとしてすぐに柔和な目になる。頼むから屋台のおじさんとかもそういう目付きで安いよーって言ってくるの止めて
「この状態なら挑んでくる奴は居ないから安心しろ」
「はい」
とりあえず銀髪さんから離れちゃいけない理由が分かったし、少し渋っていた理由も分かった。隣で歩いていたとしても、わざと肩をぶつけて手が離れたらチャンス!みたいな事を思っている人が居るかもしれないから降ろすのを渋っていたんだろう。闘技場が必要でしょこれ
「うわぁ、近くで見ると結構大きいですね」
「我等イクサバンの民の宮殿」
「イクサバン……」
戦場?やっぱり戦闘民族じゃないか
「本来ならこの宮殿で精鋭達と戦えば木札が貰える。でも、モルガ様の紹介だから強さの証明は不要」
強くないと戦わないって選択肢が取れないんだなぁこの街
「来たか」
「はっ、連れて参りました」
宮殿に入ると、いきなり「来たか」と言われて、銀髪さんが僕を降ろして片膝をついた。一応倣った方が良いかな?僕も片膝をついておこう
「あのモルガの弟子だったか。それなら木札はくれてやる」
まだ面をあげよ的な事は言われてないから相手がどんな人かは分からないけど、声的には女性か?女性が統治してバトルジャンキー盛りだくさんの街になってるって何だか相手を見るのが怖いな……傷だらけのゴリッゴリの女戦士みたいな人か、はたまた細い人なのか……
「だが、モルガの弟子と言うのならそれ相応の実力を持っているのだろう?ならば!」
ん?あっなんか飛んで来てるわ
「いきなりなご挨拶ですね。えっと、陛下?」
飛んで来た物をキャッチして、顔を上げずに答える。相手の名前は分からないけど、通された所が玉座の間っぽい所だし、統治してる人風の雰囲気があったからとりあえず陛下と呼んでみた
「ほう!これは逸材!よし。そこのお前。私と手合わせしろ」
はい、対応間違えましたねぇ!