食べられる?
「さて、レベル上げしますかー」
やっぱり目安としては60くらいまではあげたい。何となく、1つの街を越える時に10レベルずつくらい上がっていれば何とかなるかなという印象だし、ちょっとずつやっていこうか
「ちょっとちょっと~最近来てないんじゃないの~?」
「あ、すみません。そうですね……確かに最近忙しくてここに来る事が減ってました。ちょっと鍛えてもらっても良いですか?」
レベル上げしなきゃと思って居たら深淵の覗き窓が開き、中からニャラ様が呼びかけてきた。そういえば最近訓練してなかったな……ファーカインとのやり取り(決闘)は熱くなる感じだったけど、深淵での特訓は死と隣り合わせというかひりつく空気感があるからそれとは別の感じで熱くなれるというか……厳しいからこそ頑張れるし、やる気とかも出てくるんだよなぁ
「良いよ良いよ~今日は僕がやっちゃうよ~?」
今日はアビス様じゃなくてニャラ様が指導してくれるのか
「お願いします!」
普通にエリアに出てレベル上げしても良いけど、深淵の方が感覚を研ぎ澄ませるから今日はこっちで修行だ!
「来たね!それじゃあ早速始めよっか!」
「何をするんでしょうか?」
「今日はハチ君の精神力を鍛えようか」
「精神力ですか?」
一応それなりにはあるつもりだけど……いや、どんな事にも耐えられる様に鍛えてもらおう
「理由も勿論あるよ」
僕の疑問に答えるようにニャラ様が喋り出す
「ハチ君、深淵使ってる?」
「ええ、まぁ……」
深淵尻尾を出して、ぴょこぴょこと動かす
「ハチ君はその深淵。どうやって操作してるか分かってるかい?」
「そういえば……なんか体の一部みたいな気持ちで操作してました」
「それは良いね!しっかり馴染んでるみたいだ」
まぁ多分ここまではニャラ様も想定通りって奴なのかな?
「深淵っていうのは己の精神力が高ければ高いほど馴染んでいくんだ。だから精神力を鍛えるともっと色々出来ちゃうぞ~?」
精神力が高いほど深淵の操作がしやすくなると……そう考えると魔法的な攻撃手段に見える触手とかはINTを上げてもそこまで使い勝手は良くならないけど、MINDを上げると複雑な動きとか出来るようになるから攻撃性能が上昇する……とも受け取れるのか。MINDが高くないと能力を十全に発揮出来ないとなると使える人はかなり限られてくるだろうなぁ……
「なるほど、じゃあ今日は精神力を鍛える修行って事なんですね」
「そそっ、それじゃあまずハチ君には食べられてもらうから」
「へ?」
「いただきまーす」
触手が前後左右上下と至る所から出てきて僕を縛り、顔にあたる位置にあるニャラ様の穴に投げ込まれる
「これどうなるのー!」
ブラックホールとでも言うべきなのか、凄い勢いで吸い込まれる感覚。これマジで食べられるの!?
「さて、これでハチ君はどうなるかなぁ~?」
「お前もまた何をしているんだ……」
ハチ君がニャラ様に吸い込まれたその後でゆっくりと出てきたアビス
「今回は修行はこっちにさせてくれるって言ったよね?だから修行さ」
「別に喰わなくても問題無かっただろう」
「ほら、言うじゃん?食べちゃいたいくらい可愛いとか、目に入れても痛くないとか」
「それで本当に喰う奴がいるか」
「ま、その内出てくるでしょ。出てこれなかったとしたらその時は美味しかったと言う事で」
「まぁアイツなら出てくるだろうな。腹突き破って出てきても文句を言うなよ?自業自得だからな」
修行として称して食べた。と言っても、要するに体内で自分の分身体との訓練をさせる為に取り込んだ
ので実際に修行としての効果はある。それを分かっているので、アビスもそれを止めなかった
「それは無いってー!だってハチ君だぜぇ?……いや、やるな?絶対お腹突き破って出てくる!うわーどうしよ!」
「どうせ腹の1つや2つ突き破られてもなんの問題も無いだろうお前」
「まあね」
人の様な形をしているが、不定形。その時が来ても腹を突き破られた様に見えただけで、単なる通り道を作っているだけ。ダメージらしい物は入らない。ただただ愉しむだけ。それがニャラートホテプだ
「出てくる時が楽しみだよ」
その表情は分からない。ただ暗い穴があるだけなのに笑っている様にも見えるし、真剣な表情をしているようにも見えるし、期待している様にも見える
「あぁ、楽しみだ」
そんなニャラートホテプとアビスが期待しているたった一人の人間。確実に他の人間と違う精神を持っている。その人間がどのような成長を遂げるのか。今までの退屈な時間を忘れさせるようなその存在の成長に目が離せない。こんなワクワクした気分は生れて初めての感覚と言っても過言ではない
「では早速……」
「おーっと、覗き見は今回やめとこう。出てきた時にその成果とどういう事をしたのか話してもらおう。そういうのもたまには良いんじゃない?」
「なるほど、確かにそれもアリだな。ハチが出て来たらどんな事をしたのか聞かせてもらお……待てよ?分身体を使ってるならお前は何してるか分かってるじゃないか。それはズルいぞ。こっちの分身体もお前の中に入れるぞ」
「おわっ!ちょっ!?」
抜け駆けは許さないと言わんばかりにニャラートホテプに分身体を撃ち込むアビス。何気に少し楽しんでいた




