不規則
「私……本気出す」
モノが本気出す宣言をした。これ大丈夫かな?間違った方向に行かなきゃ良いけど……
「急ぎ過ぎはダメだよ。焦りは良くないからね」
下手に変化を急いで気持ちの整理がつかなくなってしまうのが一番怖い。精神が不安定なモノが焦らずにゆっくりその精神を安定化させていくのが僕の責任だと思う
「でも……」
「モノ、僕が今までどうやって戦っていたのか見てたんだろう?」
「うん」
名乗らなくても僕の名前とかを知っていた時点でアイテムの時からの記憶みたいなのがあるんだろう。それなら僕がどういう戦闘スタイルをしていたのか分かるだろう
「じゃあ、モノ。戦い方について相談があるんだけど良いかな」
危険な行動は可能な限りして欲しくないから戦い方を提案しよう
「モノ。僕が戦闘する時に囮が居るだけでも戦いやすくなるのは分かるよね?」
「うん」
「一撃与えたあと、その場に現れてくれるだけでも充分強い動きが出来るのは分かるかな」
攻撃を与えた後、急に人が出てくるという受けた側は攻撃を受けた直後に警戒する相手が増えるのは相手の集中力を削るのに充分使える。しかもモノの場合は【ジェミニ】や【イリュジオ】と違って急に消えたり現れたり出来るから警戒度が設定し辛いだろう
「なんとなく……?」
「その場に居るだけでも強いって事。だからモノが無理に戦おうとしなくても充分に役割が果たせる。その役割が果たせる様になってから攻撃に参加してもらえるともっと助かるんだ」
今は囮として、そして精神が安定してきたら攻撃にも参加させても問題ないはずだ。その時までは戦闘に直接関与はさせない方が良い気がしてきた
「……分かった」
「モノが頑張ってくれれば僕もお金を取らなくて済むから」
「分かった!」
あ、扱い方分かってきたかもしれない
「それじゃあ囮の練習してみようか。完璧な動きが出来れば今後僕がお金を取らなくて済むからね」
「うん!」
「マネキンさん。悪いけどまた頑張ってもらうよ」
「はい」
久々に【投銭術】をメインに使った戦闘を練習しよう。中距離というよりは数歩で敵に距離を詰められる近距離寄りの中距離戦闘という立ち位置がかなり重要になる戦闘スタイルだ
「ふっ」
「ん……」
縛占貨を投げ、左前方に踏み込む。マネキンさんが縛占貨を避け、僕に向き直った所でモノがマネキンさ
んの後ろに現れる
「いや、戦略バレてるマネキンさんにこれは囮にならないか」
モノが右拳で圧を掛けても既にそういう戦略を取ると言ってるからモノをほぼ無視して僕に集中している
「じゃ、もう一度アタックかけ直しますか」
「ん!」
バックステップで距離を取り直し、また縛占貨を投げる。今度は敵の正面にモノが現れる
「【ジェミニ】」
否が応でもモノが目の前に立てば見ない訳にはいかない。一瞬のブラインドで分身を出して、モノが僕の手元に縛占貨になり戻って来る
「「どーっちだ」」
僕ではない別の存在がブラインドに入る事で【イリュジオ】を囮に使わなくても良いからここで追加の【イリュジオ】とかも使うと更に複雑な攻撃を仕掛ける事も可能になる
「「正解は両方でした!」」
両サイドから回し蹴りで挟み込んでマネキンさんを捉える
「単純にモノが出てくるだけで、戦略が広がるんだ。今だってモノが出て来てくれたお陰で僕は手を温存しながら攻める事が出来たし」
「私…もっと出来る!」
モノがそう言うと縛占貨が独りでに動き出し、空中をクネクネした軌道で飛び出した
「ふぁ!?」
ファ〇ネル?そういう軌道で飛べるの?
「ちょっと待て……それって僕が投げてからでも変更出来るの?」
「出来る」
ほほう?それはまた良いじゃないか……
「と言う事は僕が投げてから敵の後ろから当たるとか出来そう」
「出来る」
「あぁもうそれだけで偉い」
【投銭術】が効いたとしても直線での攻撃には変わりなかった。それがとんでもない軌道で敵の意識外から攻撃出来るとなれば、それだけで凶悪性が上がる。意識外からの攻撃に囮も可能。貧呪の魔硬貨の時からとんでもない進化をしている。これは正直予想以上だ
「モノ。無理に変わろうとしなくて良い。今の君でも充分過ぎるくらい強い。勿論出来る事は多い方が良いけどね。1歩1歩確実に行こう」
「うん!」
目元は見えないけどかなり雰囲気は良くなったと思う。うん、モノの精神も結構安定してきたかな?
「オーブさんありがとう。かなり助かったよ」
「いえいえ、またどうぞ」
本当にプラクティスゾーンのお陰でかなり助かっている。今後も大事に利用させてもらおう
「よし、サーキットも出来たし、色々問題も片付いたからそろそろ先に進む事を考えようかな」
次の街を目指して進み始める事を考えるべきだろう
「とりあえずレベル上げしに行くかな。モノもいつでも出てきて良いからね」
返事は無いけど、多分分かってはくれてるはず
「さて、皆に挨拶してから行くか」
とりあえずあいさつ回りだけしていこうかな
「という訳でそろそろ先に進むから皆、また空島の事を頼むよ。新しく入ってきた人達の事もよろしくね」
「分かった」
「オマカセクダサイ」
「任せろ!」
ジェリス、ゲヘちゃん、姫様に言っておけばなんかもう安心出来るな。これで安心して先に進める




