嫉妬の縛占貨さん
「うーむ……なんだこれは?」
「何かおかしい事でもありますか?」
「いや……うん、何でもない。これが普通なんだな」
アイテム説明を見て、もうなんか諦めみたいな感じで言われるのは納得いかないな
「とりあえず、これがダメなら僕は困るっ……ふむ。投擲は問題無いみたいだな」
誰も居ない上に向かって縛占貨を投げてみたけど、何も出てこない。ある程度飛んだら手元に戻ってきたし、投擲攻撃はこれまで同様に使えるみたいで良かった……最近余り使ってなかったけど、これも大事な僕の攻撃手段。減ったら困るんだ
「そんな風に使っていたのか?」
「呪いのお陰で何発でも投げられる投擲武器です。これに救われた事もあるのでこの攻撃手段が使えなくなったら困る所でした」
「…………」
そんな何言ってんだコイツみたいな目でみないで欲しい
「はぁ……何らかの行動と書いてあるからハチが何かをした場合に現れると考えて良いだろうな」
「そうですね。多分、縛占貨に何かするんじゃなく、僕が何か行動した時にその何かが出てきてくれるのかなと」
縛占貨を攻撃する、縛占貨で攻撃する。それは多分違うと思う。説明文に特定の行動をすると***が現れると書いているから誰かに何かしてもらうというよりは僕から何か起こせる行為がキーとなってこの***が現れるというのが発動すると思われるが……
「嫉妬の縛占貨……あれ?そういえば」
「何か思いついたのか?」
まさかな……
「ちょっと思いついた事が有るんですけど」
「なんだ。言ってみろ」
「これの進化前、貧呪の魔硬貨はお金が入手出来なくなるアイテムだったんです。単なる銅貨とかも持とうとしたら手から弾かれちゃうし、お金の山とかだと手がすり抜けたりしてお金を掴む事すら出来なくなる呪いがこのアイテムにはありました……というか今もついてます。もし、これはアイテムの説明じゃなく、アイテム名から考えて行くと、その能力が強化された可能性もあるので……」
「あるので?」
「僕がお金に触れようとしたら何かが出てくるかも?」
意外とキー行動は分かりやすい可能性出てきたな?
「ほう?ならば、ほれ」
「ちょ!?」
いきなりファーカインから大金貨(いつぞやボスに向かって投げた100万G)を渡された。いきなり空中で出されたので咄嗟に受け取ろうと手を出したら……その時不思議な事が起こった
「「え?」」
空中に突如現れた真っ黒な服を着た長髪で目も隠れて見えない少女。その少女が大金貨を払いのけた
「今の見ました?」
「まさか今のが?」
目隠れ少女は大金貨を払いのけた途端消えてしまったのでまだもしかしたら何かの勘違いかもしれない。とりあえずもう一回確認したい
「ちょちょ、もう一回良いですか」
「あ、あぁ……」
今度は銀貨(1000G)を僕の頭上に落とすファーカイン。僕の体に触れるか、触れずにすり抜けるか、それとも……
「……」
「待って!まだ消えないで!」
やっぱりまた現れて、銀貨を手で弾いた目隠れの少女。これはもう確定と言って良いだろう。意思疎通が出来るのか、ここで決まるぞ……
「……」
残ってる?まだ消えないで残ってるよね?と言う事は僕の言葉は通じているみたいだな?
「君は……嫉妬の縛占貨で、良いのかな?」
「……」
コクンと頷く目隠れ少女。トリガー行動はお金に触ろうとするが濃厚というかほぼ確定で良いだろう
「いつも変な使い方してごめんね。君のお陰で助かった事とか色々あるからお礼を言いたくてね。ありがとう」
「……」
頭を下げて感謝する。本当に貧呪の魔硬貨のお陰でお金に頼らないプレイスタイルを通す事が出来た。普通のプレイとは違う面白さは間違いなくあっただろう。それも考慮すると尚更攻撃手段として使ってるのは申し訳ない
「これからも僕に力を貸して欲しい。今までみたいな使い方も認めて欲しい。ダメかな」
「……」
首を縦に振っている。これは中々の好感触だ
「それじゃあ今までありがとう。そして、これからもよろしく」
右手を差し出す。意図を汲んだ縛占貨も右手を出して握手に応じてくれる。良かった。ちゃんとこれからも投擲武器として使って良いとお許しが出たぞ!
「……チ……ハチ…絶対に離さないから」
「あっ、そ、そうだね。僕も呪いを解くつもりは無いから君を手放す予定もないよ。あはははは……」
いけね忘れてた。そういえば嫉妬の縛占貨の説明文、なんかヤンデレみたいな文があったわ……
「ハチには…私だけ居れば充分……」
コインが病んでる……その内「そのお金誰よ!」とか言い出さないよね?
「そうだね。お金を使ったやり取りはしないから君が居れば他には要らないよ」
「ふひぅっ……」
ヤンデレの攻めは強いがこっちが逆に攻めると強く出れないから押せ押せで行けとかなんかネットで見たから相手の言い分に乗っかって更にこっちからも打って出てみたらなんか変な声をだして頭を抱えた。待って?これ失敗したかな……
「あ、でもこういうのは今後も許してくれるかな?武器として使うけど、特別な君とは違う消耗品で金銭としては使えないから……」
「……それなら……ふひひっ」
良かった。嫉妬の縛占貨さんからのお許しが出たから属性コインは今後も使えそうだぞ