ちょっと相談
「ハチに言っても仕方のない事だから」
「まさかゲームやりすぎて成績下がったからゲーム禁止とか？」
「……」
「ちょっ！？やめっ！うひひっ」
擽りがかなり激しくなった。まさか図星か？
「間違ってたなら謝りますから！」
「合ってるから怒ってるのよ！」
あいやー……これはまた大変な問題だなぁ
「前回から順位が２つ下がったからって……本当にムカつくわ！」
「厳しいなぁ……」
各家庭での方針があるだろうから口出しは出来ないけど、それは厳しいな……
「赤点１つくらい何よ！」
「勉強しましょう。追試とかはあるんですか？」
訂正。赤点は良くない。欠点らしい欠点はその性格くらいだと思ってたけど、まさかこんな欠点があったとは……意外だなぁ
「あるけどなによ。ハチも私の事をバカだって言いたいんでしょ」
「いえ、そんな事はどうでも良いです。まずはその赤点を取った状態でここに来てるのがマズいんで、少し勉強して現実に戻った時に勉強していたと言える状態にしておかないと、本当にゲーム禁止になりますよ？」
「うっ……」
一応キリエさんだって僕のフレンドだ。そんな人が勉強をしてなかっただけでお別れになるのは少し寂しいし、手伝える事なら手伝いたい
「赤点１つと言う事はその１つだけに勉強を絞って良いって事なんで普通の期末対策とかに比べたらまだマシかな……」
「ちょ、ちょっと？」
全教科やる必要は無いのであれば僕でも多少は教えられるかもしれない
「おーいハチ。この前の礼をしたいんだが……」
「ファーカインさんか。ごめんなさい今から少し忙しくなるんで日を改めてもらっても良いですか？」
「そうか。分かった」
一旦、こっちは問題ない。一番の大問題を何とかしないと
「今から勉強しましょう」
「いやー！」
これはもう執事服を着て、勉強を見るしかないな
「それで、なんの教科で赤点を？」
「……」
「黙って居てもダメですよ。ちゃんと勉強してこれからもゲーム出来るようにしておかないと」
「……国語」
「あぁ……ひょっとしてこの時の人物の気持ちを書けとか？」
「やっぱり馬鹿にしてるでしょ？」
「国語が難しいって言ったらその辺かなって。キリエさん自体は他の教科で赤点を取ってないと言う事で普通に頭は良いと思うんで、漢字の読み書きは出来てるのかなって」
漢字の読みと書きで躓くタイプとは思えないから、文章問題で引っかかるタイプかなぁと思ったが……
「……そうよ。筆者の気持ちとか分かる訳無いでしょ！その時は昼食の事とか考えていたかもしれないじゃない」
「あぁ……」
分かるよーその気持ち。でも、そうじゃないんだよなぁ……
「そういう問題って割とやりやすいやり方が有って……」
「教えなさい！」
もの凄い食い付きだ。本当に困っているみたいだな
「例えばですけど、運動会。A君はいつもビリでしたが、今回は２位でした。それならA君の気持ちは分かりますか？」
「まぁ、嬉しいんじゃない？」
まずは簡単な事から始めよう
「はい。そうでしょうね。では、A君は運動会で１位を目指していましたが、２位でした。この時のA君の気持ちは？」
「それは悔しいわね」
「正解です。ではなぜ結果は一緒だったのに今みたいに答えが変わったのか分かりますか？」
結果はどちらも２位。なのに答えは嬉しいと悔しいの２つに変化した
「気持ちの問題かしら？」
「惜しいですね。周りの状況……物語の背景とか、きっかけになるような物があると、同じ状況でもその結果。気持ちが変わってきます。では新しい例えを出しましょう。ある野球選手が１０００本目のヒットを出して試合に勝ちました。チームも優勝しました。ですが、その選手はとても悔しそうです。何故でしょう？」
「１０００本目のヒットも出して優勝してるのに悔しそう？ソイツ頭おかしいんじゃない？」
言動が火の玉ストレート過ぎません？
「これは情報が足りないから状況が掴めないんです。ではもう一つ、ある少年が重い病で入院していました。そしてテレビで少年が応援している野球チームが勝ったにも関わらず、その少年は落ち込んでしまいました。何故でしょう？」
「これはさっきの話と繋がるのよね？」
「はい、あえて重要な情報を隠しています。これで何か分かりますか？」
「……分かったわ！これってたまにテレビとかでやってるアレよね？ホームランを打ったら手術するとかいうモノよね？」
「正解です。少年とプロ野球選手がホームランを打てば手術するという約束をしたのにそのプロはホームランを打てず、ヒット止まりだった。でも周りの人はその約束を知らず、選手が１０００本ヒットした事を喜んでいるのにも関わらず、その選手と少年は落ち込んでしまった。です」
意外と早く結論に辿り着いたなぁ……流石にヒントを出し過ぎたかな？
「どうです？背景とかきっかけが分かればどうしてそういう気持ちになったのか分かって来ませんか？」
「なんか、私が思ってたより簡単そうだったのね……」
「単純にこの人間がどういう気持ちかを考えろとか言われてもトイレでもしたいんじゃない？となりますが、こうやってヒントを見つければ難しそうな問題でも意外と解けますよ」
ウミガメのスープと呼ばれるクイズ感覚でやれば多少は問題に対するやる気も増してくるんじゃないかな？素人の助言としてはこの程度が関の山かなぁ……
