増えるクイーン
「フォヴォス」
「おう、どうし……本当にどうしたその恰好!?」
「うひゃひゃ!なんすかその恰好!」
スク水姿の僕を見て、驚くフォヴォスと笑うイグニス。まぁ、イグニスみたいな反応の方が少し助かるかな
「これか?これは今回のレースを開く為に払った代償みたいな物だ。いいか。これからフォヴォスが生きていくその先で、困難な事とかにぶつかるかもしれない。だけどそういう時は今の僕の姿を思い出して欲しい。僕は仲間が手助けしてくれたお陰でこういうイベントが開けた。だからそれを成功させる為に自分が恥をかいても構わない。そういう覚悟でこれを着ている。もし、フォヴォスが何処かに行くとしてもその時は真っ直ぐな心で突き進んでくれ。イグニスもフォヴォスを助けられるくらい覚悟を持って生きてくれよ。正直このイベントが終わった後、僕がどうなるか分からない。だからそれだけを伝えておく」
その後は無言でレース場に続く道を進む。習ったモデルウォークで歩きながら気持ちを落ち着けていく
「「か、かっけぇ……」」
いよし!なんとか乗り切ったぁ!
「この間はすまなk……えぇ?」
「えぇ?」
誰かがレース場に続く最後の扉の前に立ち、こっちに挨拶をしてきた。このイケメン……人型になってるファーカインか?なんで今来るんですかねぇ?
「お前……何という恰好を……」
「復興のレースを開く為だ。誰かが盛り上げ役をやらねばならないのなら、僕がやるべきだろう。恥になろうと関係ない。僕がこういう姿をする事が一番盛り上がると言うのなら、それに応えるのが僕の役目だ」
「何たる覚悟!やはり只者では無かったみたいだな」
一応ファーカインとは殴り合いで多少は分かり合えたからスク水についてのツッコミはそこまでされなかった。ドラゴンって結構覚悟とかそういう事には感動してくれるタイプなのかな?
「良いだろう。そういう事なら手伝おう!」
「え?」
「ハチ!オレも手伝うぞ!」
「ん?」
「すいやせん。さっきの話を聞いてアネさん絶対手伝うって言ってるんで、手伝わせてくださいっす」
おぉー?やり過ごせれば良いと思っていたけど、まさかのお手伝いをしてくれると?しかもファーカインも手伝ってくれるとなると……これは2人も一緒に引きずり込むか
「なら2人とも僕みたいな恰好になれるか?それが出来なければ申し訳ないが手伝わせる事は出来ない」
「「分かった」」
そういうと2人とも鱗?でスク水風のデザインを作り、ぱっと見は尻尾が生えてるけどスク水を着ている美少女とイケメンという何とも言えない2人になった。親子にこんな恰好をさせているという事に若干の罪悪感を覚える
「イグニスは……流石に人にはなれないよね」
「すいませんっす。今度ヘックスのアネさんに頼んでみるっす!」
まぁ流石にそれは無理だろう
「イグニスは2人とも役目を終えた後ですぐに回収する係をしてもらえるかな。あくまで2人は巻き込んだだけで、嫌になったらすぐに裏に帰る事が出来るようにしたい」
「分かったっす!でも、アネさんも親父さんもそんな中途半端な覚悟では無いと思うっすよ!」
「ああ!」
「無論だ」
この状況がスク水じゃ無ければカッコイイ台詞だったんだけどなぁ……
「それじゃあ行くぞ。この日傘をさして人がバイクに乗り込む所まで送るんだ」
「それだけか?」
「あぁ、ただ、絶対にここから先は好奇の目で見られる。だから絶対に恥じらうな。それがこの仕事を手伝う条件だ」
とりあえず神妙な空気感を出しておけば乗り切れる……かなぁ?
「人間に見られる程度ではどうという事はない。この仕事任された」
「やってやるぜ!」
「あぁ、分かるっすよ……多分親父さんの方はダメっすね」
イグニスが僕にコソっと話しかけてきた。イグニスも何となく、親父さんの方がフラグを建てたと感じ取ったのだろう。にしても結構言うねぇ?
「その時は回収頼む」
「了解っす」
こればっかりはやってみないと分からない。もしかしたらフォヴォスの方も好奇の目に晒されてプッツンしてしまうかもしれない。イグニスが今回かなり重要な役割かもしれないな……
「皆様、今回はお越しいただきありがとうございます。それではこれからレースを開催します」
サーキット場に来てくれている人達にアナウンスを掛ける。さぁ、頑張るぞ!
「い、良いんですか!?」
「ハスバさんにこういう事をする条件で告知作業してもらいましたので」
「あの人本当の事言ってたのか……」
たまにはハスバさんの株も上げてあげよう。ハスバさんにまた何か手伝ってもらう事もあるだろうし
「それでは行きましょう」
「よーし!そこのお前!行くぞ!」
「我はお前を連れて行けば良いのだな」
「いやぁ……心配っすね」
まさかのイグニスが保護者枠みたいな所に収まるのか……
「おーいハチ君……なんだか増えてないかい?」
「あ、ハスバさん。どうしたんですか?」
ハスバさんがやって来た。僕がアナウンスしたからかな?
「いや、私もネタ枠としてレースクイーン役をやろうかと思ったんだけど……もう既に粒ぞろいな気がして来たね……」
まぁ……でも人は居た方が良いよね
「うおぉ……なんだこの美少女……」
「うおぉ……なんだこのイケメン……」
「うわぁ……なんでこの変態……」
「ひえぇ……なんでこの御方……」
なんだか扱いの違いを感じるなぁ……