レース開始直前
「……こういうモノなんですけど、店先に置かせてもらっても良いですかね?」
「も、勿論です!是非置いてください!」
「これ、置いてくれませんか?」
「どーぞ!どーぞ!置いてください。むしろお願いします!」
「こういう花なんですk……」
「どうか置いてください!」
うーん、何だか押し売りじゃないけど、それに近い事をしている気分になる。完全に僕が怖いから置いてるみたいな……
「皆許可してくれたからメインストリートになる所は全部に一応置けたけど……何か釈然としないなぁ」
クリスタルピナスをほぼ全店舗の前に置かせてもらえたので、これで夜になれば光ってくれるだろう。皆僕が言い終わる前に置いてくださいとか言ってたのが気になり1人に聞いてみたけど……まぁろくでもない理由だった。まぁやるべき事が終わったからお仕置きが良いか
「とりあえず歩き方の練習もしないとなぁ」
折角ロザリーさんに教えてもらったんだからその歩き方を練習しておいた方が良いだろう。メインストリートで練習しても良いけど、練習成果はやっぱり本番に見せたいし、城に戻ってからにしよう
「さて、そろそろ夜だけど……どうなるかなぁ?」
歩き方の練習をする為にも城に戻ってコソ練した後で、時間的に夜になりそうだったので城の天辺の展望台を起動させて夕焼けの空を見ながら夜を待つ。夕焼けも良いなぁ……
「おー!来た来た!中々良いなぁ……」
元々ランプみたいな物で明かりを確保していたけど、夜になったらクリスタルピナスが光りだして結構幻想的な光景が広がる。人が歩けばその部分が光が強くなったりして、人の動きとかが観やすいし、ちょっとした癒し効果があるかも
「あー居た居た。どうしたんだい?そんな世界征服でも計画してる魔王みたいな表情して」
「どんな表情なんですかそれ……それよりも告知作業ありがとうございます」
「どういたしまして。いやぁこれでレースはいつでも開催出来そうだね」
「ハスバさん?」
「おぅ、この氷の様な冷たさ……何かなハチ君!」
もう分かってるでしょこれ
「ハスバさん。僕がレースの時にスク水を着るって言ってるそうですが……」
「勝手に言いまわってしまってすみませんでしたー!どうぞ!ごほう…お仕置きを!」
まさかのハスバさん、ソレ狙いで告知作業していたのか。これはどうしようかなぁ……
「仕方ないですね。そういう告知は求めていなかったんですが、お仕置きが欲しいって事なら10戦で許してあげますよ」
「えっ」
「僕と10戦。お仕置きとしてはそれが良いんじゃないでしょうか?勿論金的、腕折り、心臓抜きとかも全部使います」
「大変申し訳ありませんでした。なので、それだけは勘弁して頂けないでしょうか」
即座に土下座スタイル。お仕置きが欲しいって言ったのはそっちだよなぁ?
「……冗談ですよ。告知作業ありがとうございます。お陰で空島リニューアルしても皆受け入れてくれてるので、新しい設置物とか簡単に導入してもらえましたし」
ハスバさんにも街の光景を見せる
「これは……何か置いただけでこれ程変わるのか……」
「たまには普通に感謝しますよ。ハスバさんお疲れさまでした」
「ハチ君は人の扱い方が本当に上手いね。これはまたハチ君の為にまた色々と頑張らないといけなくなってきたなぁ!」
僕が展望台の縁に座っていたので、ハスバさんも隣に座って街を見ていたが、後ろに転がってそのままバク転するように立ち上がり、帰って行った。何をする気なんだろう?
「ま、レース当日までは空島の施設拡充とかに当てても良いかな」
簡易的な宿屋とか、寝具とか色々と作りたいし、レベル上げは一旦お休みかな
「よし!これで良いだろう。おっと、そろそろレース会場に行かないと」
「最後の仕上げはゴブリン達とやっておくからハチはもう行っても良いぞ?」
「ごめん姫様。ここ、任せるね?」
「あぁ!任された!」
普通の羊毛と雲毛を半分使ったベッドをそれなりに用意したので寝心地自体はかなり良い宿屋を作った。これでログアウトする時とかにここで休むと安眠ボーナスで経験値アップ5%程度が入る。何も無いよりはマシだろう。安眠ボーナスを伸ばすには睡眠の質を更に上げる必要があるだろうから、アロマとかそういうモノが必要になるのかな?っとと、今はレース会場に行かないと
「急げ急げー!」
なんでも、今回1レース8台での勝負を企画したけど、応募者200人程度というとんでもない事になった。まぁレース数を増やせば問題は起こらないんだろうけど、応募者の中にも馬とかダチョウ?みたいなマウントもあったらしく、今回はバイク系のみでという事で絞ったらなんとか15人までに減らす事が出来た。サーキットが本格オープンしたらその時は馬系のみとか、特殊な物だけとか、誰でもオッケーとか開く予定はあるので、今回は申し訳ないけど……と話したら分かっては貰えたが、それでも憤りはあると思うから僕が説明しないといけない。一応その200人程度には普通の観客席では無く、少し見られる場所が高い観覧席みたいな所もサーキット場にあるからそこに入ってもらっている
「どうも皆さん。今回は応募して頂いたのに参加させられず、申し訳ありませんでした」
「えっ、あの人は!?」
「ハチさっ、本物!?」
「ホワッ!?」
所々で声が上がる
「お詫びとしてこのような席を用意しましたが、どうかレースを最後まで見て頂けると幸いです」
頭を下げて、しっかりと謝罪だ。運営が企画した物なら謝罪する必要は無いが、これは僕が勝手に開いているものだからこういうところはキッチリした方が良いだろう
「そろそろレースが始まりますので、お楽しみに。それでは」
「「「「はっ!?」」」」
部屋を出ていく直前にスク水に装備を変える。視線が集中する感覚……なるほど、もしかしてハスバさんこの感触が良いと思ってるのか




