十八番
「どうやったかは知らないけどお礼はしないといけないかなぁ?」
ホルスターから銃を引き抜き、僕に突き付けるキリエさん。リボルバー2丁かぁ……もうこの姉妹は地獄姉妹か(胃が)キリキリシスターズとでも呼べばいいかな?いや、言ったらそれこそ殺されるな
「はい!バチバチするのは結構ですが、これからトーナメントの組み合わせを決定します。上をご覧ください」
オーブさんが声を掛けて来てくれたお陰で注意が僕から上空のトーナメント表に移る
8人だから3段のトーナメント表になって下の空欄に僕達の名前がシャッフルされる。頼む!あの人とは会いたくないから出来るだけ反対側に……
「初戦はアイリス様対エントリーナンバー815様!グランダ様対ガチ宮様!レイカ様対タナカム様!ロザリー様対キリエ様となります!」
僕はバレない様にガッツポーズをした。真反対ですよ真反対!これであの姉妹との呪縛から解放される!
「はぁ……流石にこれじゃあダメそうね……」
キリエさんが露骨にガッカリしている。僕と戦えないって諦めてるって事はロザリーさんはそれほど強いって事なのか……
「よろしく頼む」
凛とした佇まいのロザリーさん。あれがクールビューティって言うのかな?
「せめてもう少し強そうな人と当たりたかったですの!」
マスケット縦ドリルさんのレイカさんがタナカムさんに悪態をついている。というか喋り方までお嬢様っぽいな……あの人
「あはは……お手柔らかに」
大人な対応のタナカムさん。いや、単純に気弱なだけなんだろうか?
「よっしゃ!ぶっ倒してやるぜ!」
「我が魔法でぶっ倒してやるぜ!」
お互いに指を差しながら牽制しあっているグランダさんとガチ宮さん。あの2人、意外と似た者同士なのかもしれない
「あの、さっきは済まなかった……」
「いや、別に気にして無いからもういいよ」
悪いけどつんけんとした態度を取らせてもらう。初戦は勝ちたいんでね?
「ではトーナメント初戦を開始させていただきます!」
オーブさんの掛け声と共に僕とアイリスさん以外の人がポリゴンになる。オーブさんと同じ様な形になって空中に浮いてる……決勝トーナメントはこうやってポリゴンと実体を入れ替えて一つのフィールドで戦っていくのかな?
「私は……姉に勝ちたい」
「えっ?」
「私の願いを聞いてもらう為にも、私自身が認めてもらう為にも」
「あ、はい……」
なにそれぇ……そんな大層な理由があったの?僕とりあえず上位目指すかぁくらいのフワッとした理由なんだけど……
「さっきの事は謝る。だが、私も負けられないから手を抜く事は出来ないという事だけは理解してくれ」
その場で深く礼をするアイリスさん。これ、不意討ちしたらとんでもないくらいバッシングを受けそう……
「分かりました。僕も手を抜きません」
相手がこれだけ真剣なら僕もそれに応えなければならないだろう。禁じ手でも何でも……
正直何を考えているか分からないキリアさんみたいな人よりもアイリスさんの様に真っ向勝負を仕掛けてくるタイプの方が戦いやすい
「じゃあ、やりましょうか」
【リインフォース】【リブラ ItoA】【オプティアップ AGI】を発動し、僕の速さを上昇させる
「勝たせてもらう!」
宣言しながら腰の刀に手を伸ばす。居合の構えをしている。さっきの技ならもう通用しないよ?
アイリスさんに向かって一度両拳を打ち鳴らして走り寄る
「【刃雷】!」
鞘から抜き放たれる雷の刃に向かって手持ち最後の1G(鉄貨)を指で弾きながら地面をアイリスさんに向かってスライディング。【パルクール】の効果で普通にするよりも長く、速く滑るのでアイリスさんとの距離をかなり詰められた
「なっ!?」
鉄貨は避雷針替わりというか、アイリスさんが2回戦で【刃雷】を使った時、雷の刃が飛んで行った時に横幅が結構大きかったのに1人に当たってその背後に居たプレイヤーに当たっていなかったのをみるに、範囲では無く、単体に対しての高速の一撃だと思ったのでデコイがあればそれで無効化出来るんじゃないかと思って投げてみた。結果としては大成功だ。【刃雷】を無効化してアイリスさんに接近出来た
「くっ!」
刀をまた鞘に戻すアイリスさん。アイリスさんのスキルは居合によって発動する感じなのかな?
「【熱刃】……えっ!?」
幻影の腕は殴りかかる様な恰好をしているけど僕の実際の右腕は刀の柄頭を押さえている。だからアイリスさんは刀を抜く事が出来ない。ついでに右足の踵も2回地面に打つ
「はっ!」
「っ……えっ?」
右足の蹴り上げがアイリスさんには見えているけど、僕が実際にやるのは足払いだ。【幻影手】と【幻影脚】によってアイリスさんは混乱している所悪いけど刀相手だから手を抜いたりしたらバッサリ切られるし、抵抗されない様に徹底的にやる
虚像の左手で目潰しの構えをする事で咄嗟に目を守ろうとするアイリスさん。だが、それはブラフだ
「長い髪は戦闘に適して無いよ?」
「ぐっ!?がはっ!」
腰まで届くような長い髪を脇から伸ばした本当の左手で引き、頭部を強制的に上を向かせる。そして刀から手を離した右手で喉に手刀を落としながらアイリスさんを地面に倒す。【幻影手】を発動して見えない様にしていなければ周りの人にドン引きされてもおかしくない……やっぱり美人の人とかと戦うって凄く大変だよこれ……
「これ、ある意味僕の十八番なんだよね」
アイリスさんの顔を踏みつける。もちろん【幻影脚】の偽の脚はアイリスさんの顔の横に置いて踏んでいないアピールをしている
「あっ……あぁぁ!」
恐怖によって身動きが取れなくなるアイリスさん。こうなってしまえばもうどうしようもない。AGIからDEXに上げるステータスを変更して左手を構える
「姉と戦うのはまた今度にしてね?」
「こふっ……」
アイリスさんの胸に直接貫き手を刺すのはセクハラだーとかなんとか言われるかもしれないなぁと思って腹部からアッパー気味で刺し込み、心臓を引き抜く。やっぱり防御無視は強いね?
「「「うわぁぁぁ!」」」「何だアイツ!?」「モツ抜き……いや、ハツ抜き?」
あっ、【幻影手】の効果切れてる……