繋がり
「フォヴォス、お前はもう俺が守らなくても良いんだな。既に立派に成長していたみたいだ。だから好きに生きろ」
「親父……分かった!たまには帰るよ!」
「そ、そうか。ならこの島の端の方にゲートを作っておく。帰って来たかったらいつでも来い」
「あぁ、そん時は夜露死苦!」
「え、あぁ……分かった」
そうなんだよなぁ……認められないと反発するけど、認められたら案外素直になる物だ。ここまであっさりだと戦わなくても良かったかと思うけど……
「人間の可能性を見れただけでも今回の旅の様な物は充分に収穫があった。また会おうハチ」
「あぁ、すぐ来ても良いぞ」
「ふっ、ゲートを繋げたらすぐに挨拶に向かおう」
ドラゴンが使うゲートは入口と出口を起動して繋がるタイプか。どこでも扉みたいなあの地点に行きたいから出口が勝手に出来るとかは無さそうだ
「騒がせてしまい申し訳なかった。ここへのゲートが完成したら詫びの品を持ってこよう。アト爺とも話したい事もあるしな」
「まぁ、何をしていたのかは聞いておきたいのう?」
色々とアトラさんと会話をしてみたそうなファーカインとわざとおじいちゃんぽく喋るアトラさん。昔アストライトの住人だったみたいだし、確かに僕もその時の話は聞いてみたい。ゲートが繋がった後でその辺はゆっくり話そうかな
「すっげー!ハチ!すっげー!あんな熱い戦い方があったなんて知らなかった!」
序盤の理不尽殺法よりも後半の男と男のぶつかり合い勝負がフォヴォスの中で焼き付いているみたいで良かった。実際序盤のアレは、僕にヘイトを貯めてフォヴォスへの不満とか不意打ちを喰らった事への怒りを僕へのリベンジに使う原動力にさせる為、後半で拒否されないように僕が勝たねばならなかった。お陰で上手く事が運ぶことができ、後半戦では男同士の殴り合いに持ち込むことが出来た。殴り殴られた痛みは決闘システムの仕様で、ある程度軽減したみたいだけど、脳は疲れを感じてる。今日はこれ以上は止めておこう
「これでフォヴォスは自由になったんだけど……どうだろう?この島でちょっとした事を手伝って欲しいんだけどどうかな?」
「何でも言ってくれ!」
「じゃあさっきやってた空へのサーキットの作成。アレを楽しみにしてる人達が居るみたいだからフォヴォスとイグニスにそれをしてもらいたいんだけど、どう?」
「勿論やってやるさ!これから夜露死苦ぅ!」
「やりますよ!やらせてもらうっす!」
「あぁ!」
サーキット場建設は何とかなりそうだ
「いやいや、私の出る幕が無かったねぇ?」
「あ、モルガ師匠居たんですね。ファーカインに話を聞いてもらえなかったらむしゃくしゃしておやつ抜きにしようと思ってました」
「ハチ君ハチ君、最近私へのフリが雑になってないかな?」
「えーそうですかね?まぁそういうならこのマフィンは僕が食べちゃいます」
「うわうわー!美味しそう!雑でも良い!だからそのマフィンをー!」
それで良いのか元救世主……
「どうなる事かと…思いましたが…何とか…なった様ですね」
「ドラゴンに強化も何も無しで挑むとかとんでもない事をするんじゃない。心配するだろう」
「師匠はやっぱり頭がぶっ飛んでますね!」
「モニク?実は最近頭皮マッサージを覚えたんだ。少し試してあげよう。なに、遠慮はいらないよ。頭が柔らかくなるだけだから」
「ひえっ……」
「モニク、命、知らず」
教会前で集まってたから教会の面々も割と心配だったようだ。何気にこの空島で結構な危機に瀕してたしなぁ……今はモニクの頭が物理的に柔らかくなるように両手でがっちりホールドしてるけど
「あ、頭がぁ!割れるゥ!」
「割れない割れない。ほら、この辺にストレッチパワーが溜まってきただろう?」
「頭はストレッチするものじゃないですよぉ!?あががが」
「あの……ハチさん?」
おっと、ルクレシアさんに話しかけられた。そうだ、口止めはしておかないと
「ルクレシアさん、実は今見た事で相談が……」
「私もその頭皮マッサージとやらをするんですか!?」
「しませんよ。さっきのドラゴンの事で、ドラゴンの見た目の情報は話しても良いんですけど、この島の住人と知り合いだったって情報はチェルシーさんとかには内緒にしてくれませんか?この空島に住んでいる住人には多数の人間には知られたくない方もいらっしゃるので、その辺だけ配慮してくれないかと」
「わ、分かりました。秘密が洩れちゃったら私……消されるんでしょうか?」
「そこまではせんと思うぞ。だが、もしも情報が洩れたら……そこのハチが何をするかは儂も分からんぞ?」
ルクレシアさんと会話していたら、アトラさんが入ってきた。まぁ、存在を喋られたくない所のトップだしなぁ……
「き、肝に銘じておきます!」
「よい返事だ。ところでハチよ。そろそろそ奴を放してやったらどうじゃ?」
「ん?あ、忘れてた」
話の間ずっと頭皮マッサージをしていたモニクの事を忘れていた
「どう?」
「どうって、頭が痛……くない?むしろなんかスッキリした気がします!まさか本気でマッサージを!?」
「無意識だったからかなぁ……もうちょいやった方が良かったか……」
なんか頭皮マッサージが効いたらしい。適当にやってただけなんだけどな……
「ところでハチ、よく無事だったな?」
「あの空間は決闘をする為の場所みたいな物だから死にはしない……まぁ本当に死にはしないだけでしっかり痛いけどね……皆ごめん。寝かせてもらうよ」
ワリアさんに心配されたけど、流石にファーカインに何度も吹き飛ばされたりぶっ飛ばされたりしたので、その戦闘過程で疲労も溜まっている。今日はもうアルターは止めておこう
「「「「「おやすみ」」」」」
皆に見られながら寝るのはなんだか不思議な気分だなぁ……
「今回は何とかなったけど、これで接点の無いドラゴンとかが相手だと搦め手らしい搦め手が効かないかもしれないし、なんとかまた新しい力とか覚えたい所だな……」
現実のベットの上で起き上がり、今後の展望とかを考える。あ、空島閉めっぱなしだったけど……開けるのは明日以降で良いか!