何でもアリなら……
「じゃあ命のやり取りでは無く、どちらが先に戦いの場から離れるかで決めましょう」
「力比べか?ふん、良かろう。待っていろ、今からコイツをコテンパンにしてやる」
「別にそんな事は望んでない……」
フォヴォスに向き直って僕をボコボコにする宣言をする親ゴン。そしてそれを別に望んではいないフォヴォス。もうすれ違ってる……
「じゃあ、この島が壊れたら困るので、決闘出来る空間で勝負しましょう。一応周りの皆にも見れるようにはしておくから」
「良いだろう」
決闘システムを使って親ゴンと勝負をする事にする。スタイルとしては相撲だが、勿論アレを使っていこう
「じゃあ準備出来たので良いですか?」
「あぁ、その鼻っ柱をへし折ってやろう」
「この玉に触ればスタートです。そうしたら別空間に飛びますのでそこで勝負開始です」
「いつでも良いだろう。我は挑戦を受ける!」
「では始めます」
決闘システムを起動しているので、デッドガードも採用している。これでお互いに死ぬ事も無いし、周りが壊れるとかの心配もない。のびのびと戦える
「ここが……」
「【インヴァル】」
相手が回りの確認とかしている間でも問答無用で接近、【インヴァル】を親ゴンに使用。そしてシンフォニアを演奏する。僕は言ったよ?玉に触れればスタートだと
「何の真似d……なっ!?」
「あ、終わりです。ありがとうございました」
出てはいけない範囲は半径20m程度。巨体の親ゴンだと数歩下がれば終わりのこのステージで【インヴァル】による超回避状態とシンフォニアの範囲デバフ魔法を組み合わせるとある意味とんでもないノックバックが発生する。自分の意思とは関係無く勝手に回避が発動するのだからこれはほぼ回避不能初見殺し性能特化と言っても良いかな
「ふぅ、勝った勝った」
「ちょちょちょっと待てェい!今ので終わりだと!?認められるか!」
「えぇ?だってエリアから出たじゃないですか」
「なんて汚い人間だ……」
ドラゴンにドン引きされてる。まぁ、これはあくまでお遊びと言っても良い
「仕方がないですね……じゃあ今みたいなのが出来ない様に今度はHPの削り合いでもしますか?」
「そ、そうだ!そうしよう!」
「別に殺し合いじゃなくて貴方は僕をコテンパンに出来れば良いんですよね?それならHP半分くらい削れれば充分ですか?それとも娘さんが見てる前で、家出から保護した僕をぶっ殺したいですか?」
「は、半分で良い……」
悪いが使えるモノは何でも使う。娘が見ているとなると良い所を見せたくなるのがお父さんという存在だと思う。これで僕の提案を呑まざるを得ないだろう
「また何でもアリで良いですよね?まさか娘さんが見てるのに人間相手にハンデを要求なんてそんなダサい真似をしてまで勝ちたいですか?」
「そんな物は要らん!何でもアリだと?こちらこそ望む所だ!」
程よく煽り、何でもアリの同意を得る。向こうも今度は何かしらして来るかもしれないけど、多分決まる時は一瞬で決まるなこれ
「それじゃあ2戦目行きますよ?」
「せめてスタートのカウントくらいはしろ」
「分かりました。では3カウント入れます」
さっきはカウント無しでスタートしたのを根に持ってるみたいだ。3カウントが終わったその瞬間に親ゴンにどれだけ距離を詰められるかが勝負かなぁ……
『3、2、1、スタート!』
機械的な音声が3カウントして勝負が始まる。両者とも一瞬で行動を開始する
「燃え盛れ!闇の炎よ!【ダークヘルフレイム】」
「【ディスラプトマイン】」
相手が開幕範囲攻撃で僕のHPを消し飛ばそうとするのは読めていた。何でもアリと言えば、絶対にそうするだろうとの予測の下、その範囲魔法、あるいは、範囲攻撃スキルを消す為の【ディスラプトマイン】だ
「炎がっ!?」
「そのHP貰うね。【ライフシェア】」
何でもアリという条件を付けた事で相手の許諾を得たという、超特殊条件下でのみ使用可能なビックリドッキリマジック。本来はHPの半分を相手に与えるという自己犠牲的な回復手段であるはずが、【弱食強肉】と相まって敵からHPの半分を奪うというとんでもなく凶悪性能な魔法に生まれ変わった【ライフシェア】。オーバーヒール分が僕のHPに加算されて僕のHPが億を超えるというとんでもない事になったが、これは決闘システム内だけの話だから空島に戻れば普通のHPに戻るだろう。とにかくこれで相手のHPを半分奪ったので勝利条件をコッソリHP55%以下になったら負けにしていたので、HPの50%を失った親ゴンの負けである
「い、今のはいったい……」
「僕に対して何でもアリを許容した時点で負けなんですよ。勝負は戦う前から始まってるって良く言うでしょう?まぁドラゴンと純粋な殴り合いなんてしたらそれこそ1発か2発で消し飛んでしまうでしょうけどね……」
搦め手を使わないとこんな相手は倒せない。とりあえず2回倒したという実績を作るのが今は大事だ
「な、納得がいかない……」
「どうしてもと言うのなら、遠距離攻撃、さっきのみたいなHP吸収とか無しの純粋な殴り合いだけで勝負しましょう。僕もフォヴォスに色々教えた中で正々堂々と戦う事を教えたので、その教えに反しないように今度こそ正々堂々と戦います。フォヴォスに顔向け出来るようにね」
「もう騙されない……と言いたい所だが、本当なんだな?次に何か変な事をしたら問答無用であの島を破壊するぞ」
「分かりました。今装備している全アイテムの効果も全て無効化、魔法も使用しません。本当のまっさらな自分の状態で貴方と戦います」
「本気か?貴様……さっきまでの行為の贖罪のつもりか?」
「その気持ちも0ではありません。ただ、嘘偽りの無いこの拳を貴方にぶつけたくなりました」
「良いだろう!もう一度だ!」
フォヴォスとこの親ゴンの仲直りの為にも気持ちの整理を付けさせる為に僕がボロボロになるだろうけど、構わない。やるだけやってやるさ