威厳崩壊親ゴン
「龍帝だと!?なんだそれは!?」
「輝ける歴史、後ろ暗い歴史。それが力になるのがドラゴンの強さと聞いた。だが、そんなのは浅い」
「浅い……?」
「わざわざ恥だと思ってやる事でそれを強さにしているというのなら、フォヴォスに勝てるドラゴンは居ないだろう。素質が違う」
「ほほう!オレ、凄いのか!」
とりあえずフォヴォスの方は嬉しそうだな
「そんなハズは……」
「誰にだって可能性はある。フォヴォスが全ドラゴンの中で一番強くなる可能性だってある。親ならその可能性を信じるくらいは出来るんじゃないのか?」
「うっ……」
そりゃあ娘さんを褒めてるんだから悪い事は言えないよな?
「だが、何故……ここまでの強さは出ていく頃には無かったハズ……」
「家出は何も悪い事ばかりじゃない。今まで自分の知らなかった世界。親によって抑制されていた情報を自分で集めたり出来るからより成長する事だって出来る。親が想像も出来ない様な成長をな」
「新しい発見は沢山あったぜ!それにオレの進む道もだ!」
正直ヤンキーの道を示してしまったのは少し悪い事をした気がするけど、フォヴォス的にはそれのお陰でかなり強くなったらしい。元から充分に強かったと思うけど、更に強くなったみたいだからフォヴォスの家出は正解と言えば正解だったのかもしれない
「むぅ……」
若干悲しそうな親ゴン。まぁ、何となく心情は察する。多分親として子育てを頑張ってたんだろうけど子供が成長の壁にぶつかって、その壁の超え方を何となく示したつもりだったんだけど、家出してグレちゃって、見ない間に強くなったとなれば……まぁ自分が間違っていたのかとなってしまうのも無理は無い
「ハチ、そろそろ良いか」
「あ、アトラさん。とりあえずもう少しだけ……」
「アトラ……だと!?」
おやぁ?これはもしかして……
「まさか、アトラ=ナトか!?」
「やはりお前か」
「お知り合いですか?」
「あぁ、昔世話してやったやんちゃ坊主だ。こんな大きくなっているとはなぁ?」
これは強力な後ろ盾が出来ちゃったなぁ?
「な、なんでこんな所に!?あの村に居たんじゃ……」
「あぁ、今も居るぞ?この島にあの村ごと引っ越してきたからな」
「村ごと引っ越し!?」
「そこに居るハチのお陰で人間の集団にあの村が見つかる前にここに引っ越す事が出来たからな。大騒ぎにならずに済んだ」
そういえば勇者かなんかが調査に来るからで急いで村の引っ越しとかしたなぁ……
「そもそもハチはお前の娘を保護しているだけだぞ?まずは感謝した方が良いんじゃないか?」
「うっ……」
まぁ、確かに僕は保護してるだけと言えば保護しているだけだ
「龍王になっても感謝すら出来んのか?儂はしっかり感謝の気持ちは忘れるなと教えたハズだったんだがなぁ……」
「そ、そういう訳じゃ……」
「何か思ってたより怖くないですね……」
「「ドラゴンって意外と優しい?」」
「ドラゴンを世話していたそちらの蜘蛛の方が気になってきました」
キャティ君、エリシアちゃんとフォビオ君、ルクレシアさんも親ゴンを見て案外悪い奴じゃなさそうと思ったみたいだ
「って違ーう!我は漆黒龍!誰もが恐れる恐怖の象徴だぞ!」
「恐怖の象徴ねぇ……僕には子供想いの良い親としか……」
「小さい頃はよく面倒を見たものだ。俺に闇魔法を教えろーとかなんとか言って後ろを良くついて来たもんだ……」
「うわーっ!昔の事は話すんじゃない!」
あぁ、アトラさんが完全に昔話モードに入ってる……
「あの頃はアト爺アト爺と良く言ってたじゃないか?」
「わ、我にそんな過去は……」
黒歴史が力になるみたいな事だったけど、やっぱり恥ずかしい物は恥ずかしいのか、アトラさんが何か過去の事を言いそうになったら止めるように騒ぐ親ゴン。もうこれは化けの皮が剥がれたと言うべきか、メッキが剥がれたと言うべきか……威厳も何も無いな?
「とりあえずあなたの過去をほじくるつもりもないですし、まずはフォヴォスと仲直りしてくれませんかね?僕はそれ以上は求めないので……」
良い感じでアトラさんが話を逸らしてくれたので龍帝云々は全員忘れてくれそうだ。それよりも今の話題は完全に親ゴンとアトラ様の関係の方に集まっている
「やだ!親父があの喋り方をしてる間は絶対に帰らない!」
「……」
「……喋り方だけ直せば仲直りしてくれるんでしょ?」
「むぅ……まぁ、それなら……」
「ほら、お互い歩み寄って仲直りしよう。ね?」
「う、うむ……普通に話すだけで帰って来てくれるのか?」
「やっぱりここが楽しいから帰りたくはないな……」
「貴様ぁ!娘を誑かしたな!」
「えぇ……」
どうしてそういう事になるんですかねぇ……
「人間相手でも関係無い。おい、お前勝負だ!」
「え、ドラゴンとタイマンですか?」
「あぁそうだ!娘が認める……アトラ=ナトが認める人間がどの程度の実力を持っているのか。この目で、この腕で確かめなければならない」
僕に対して勝負を仕掛けてきたと……これはそういう事ですな?
「じゃあ、こっちがどういう方法で戦うのか選ばせてもらいますよ?一応何でもアリになりますが、それでも良いですか?」
「よかろう。人間に合わせてやる」
「「「「「あ~あ……」」」」」
今のは何でもアリの許可を貰ったと……そう捉えてよろしいんですね?