インヴァル
「オーブさん」
「ハチ様、今回はどう……」
「さっそくだけどマネキンさん出して僕を攻撃して」
「今回は中々に急ぎの様ですね。分かりました」
漆黒龍が来る前に自分の手札に加わったカードがどんな物なのかまずは確認だ。幾らジョーカーが強かったとしてもそのカードをジョーカーだと知らなければ使えないのと一緒だ
「【インヴァル】オッケー殴ってみて」
「行きます」
正直無抵抗で殴られると言うのは中々に気合いが要る。咄嗟に避けてしまわないようにしっかりと両足に力を入れて緊張状態にして、足を地面に縛り付けるような感覚でマネキンさんの右ストレートをお腹に貰う……はずだった
「おっ?」
一瞬視点が暗くなったと思ったら目の前には右の拳を前に出したままのマネキンさん。足元を見てみたらある程度の距離を分かりやすくする為の目盛みたいな物1つくらい僕が元に立っていた位置より後ろに動いていた
「オーブさん、さっきの別視点……オーブさん視点から見れる?」
「私の視点からはこの様になっていました」
オーブさんがプロジェクターみたいな光を出して、空中にさっきどんな事が起きたのかを映像で見せてくれる
『【インヴァル】オッケー殴ってみて』
『行きます』
マネキンさんが右ストレートで僕のお腹を殴った途端、僕の体は黒い煙状になり、少し後ろで再生成されていた
「これが【インヴァル】の効果か……単純だけど充分強いな?因みにこれ範囲攻撃みたいな物だとどうなるんだ?」
相手の攻撃を回避する魔法。ものすごく単純だけど、非常に強い
「では次は範囲攻撃を開始します。5カウントで攻撃します」
「オッケー。それじゃあ……」
マネキンさんの5カウントに合わせて、ジャンプする。分かりやすいように飛び蹴りの恰好でマネキンさんの範囲攻撃を喰らってみる
「おっとと、なるほど?」
マネキンさんの少し狭い扇状の範囲攻撃。口からの音波攻撃を【インヴァル】の効果で回避して攻撃範囲外らしいマネキンさんの正面からズレた位置に飛び蹴りの恰好で僕が再生成された
「【インヴァル】が発動した瞬間の恰好で現れて、攻撃が当たらない位置に出てくる……しかもこれは攻撃に感知して一度使っておけば勝手に発動するからお守りとしても優秀だな……あぁ待てよ?マネキンさん、僕に対して何か妨害系の魔法撃ってもらえる?【インヴァル】」
「はい、【スロウ】」
マネキンさんが僕に対して妨害系の魔法を放つ。すると【インヴァル】が発動して今度はマネキンさんの少し近くに出てきた
「妨害魔法も攻撃判定で発動するのか。それに少し相手の近くで出てきたって事は対象を選択する系の魔法は相手の中心に対して発動して僕が少し前気味に構えていたから一番範囲外に近い前に出てきた……って事かな?」
直立姿勢では立っていなかったからこういう結果になったのかもしれない。体勢が崩れていたらどうなるか試してみよう
「もう一発お願い【インヴァル】」
「行きます【スロウ】」
今度は右に倒れる様な姿勢で【スロウ】を喰らう。そして【インヴァル】が発動すると……
「右に出てきたな。て事は、正面からの攻撃はその攻撃から遠い後ろに動いちゃうけど、位置指定系の魔法とかなら前傾姿勢とか取っていれば距離を詰める為にも使える訳だ。しかも姿勢は維持した状態ならある程度近くで位置指定系の魔法とかであれば。殴れる距離まで急に接近してカウンターみたいな事も出来そうだな」
勿論発射系の魔法とか弓や弾丸なんかは後ろとか横に勝手に出てしまうだろうけど……でもこの魔法の一番ヤバいのはそこでは無いんだろう
「じゃあ次はマネキンさんもう一体出して片方を僕陣営にして殴られてくれるかな」
「「了解しました」」
「【インヴァル】」
僕の陣営のマネキンさんに【インヴァル】を掛けた。そして相手のマネキンさんからの右ストレート……なんかヘロヘロパンチだけど、僕に対してのパンチはもっとキレが良かったよね?自分に対してじゃないからってその差はちょっと色々言いたくなってしまうんだけど?
「よしよし、しっかり発動してるな」
パンチを受けた僕陣営のマネキンさんは黒い煙状になってパンチが届かない距離に再生成された。この魔法のヤバイ所。それは仲間にこの強制回避を使える点だろう。自分に使えるのは有っても仲間に使って仲間が不意の一撃を回避出来るのはかなり強い。しかも魔法の説明文に制限時間とか書いてないから掛けておけば1撃喰らうまで効果が持続するタイプだろう
「まぁ、ちょっとクセはあるけど普通に使えそうだな」
ただ、この強制回避はさっきの音波攻撃を見るに、相手の攻撃を回避して尚且つ一番近い位置に移動する物だから、回避方向が人によって変わってしまう可能性がある。相手の極太ビームみたいな攻撃が来た時に咄嗟にどちらかに避けようと体を傾けたら多分そっちの方向に移動する。だからビームは避けれるけど、その後仲間と分断されてしまうなんてデメリットもあるかもしれない。でも即死級の攻撃も回避出来るのなら分断されても充分か
「相手に使ってもなぁ……ん?待てよ?」
形としては棒状の攻撃だと横に、点の攻撃だと一番近い所に、そして正面からの攻撃は後ろに下がらせて回避させる事が出来るとなると、相手に【インヴァル】を掛けて正面からリーチの長い攻撃をした場合は大きく後退させる事が出来るのか?これも試してみよう