イグニス
「うぉぉぉ!かっけぇ!」
「ヒャッハー!自分の愛車が目の前で組み上がってすぐに乗れる機会なんてそうそうないぜぇ?」
「どのくらいの速度が出るんだろう……」
ミスリルが入ったお陰か、黒い装甲はラメが入っているみたいな感じでキラついてる
「魔力レシーバーに自身の魔力を流せばいよいよ完成だ」
魔力レシーバーは鍵と燃料を入れる場所を兼任してるのかな?
「よし、オレの魔力を受け取れ!」
バイクに命を吹き込むとでも言うべきか。右手をバイクに当てて、魔力を流すフォヴォス。バイクの装甲がぼんやりと光り、エンジンが掛かる
「ブォォォ……くぅ!おざまーす!」
「「「は?」」」
「よし、成功だ」
バイクが喋った?
「普通のバイクではすぐに壊れてしまうだろうからな。命を与えておいた」
「「えぇぇぇ!?」」
「おいおいおい、そんな事が可能なのかよ!?」
「タイヤにルーンが1つずつ、本体に4つのコアとレシーバー1つ。意思を持たせるには充分過ぎる。込める魔力次第ではその辺の奴らより強くなるぞ」
「アネさんがオイラの所有者っすか?よろしくお願いします!」
「アネさん?……良いぜ!お前の事をバリバリに使ってやる!夜露死苦ゥ!」
「あざっす!」
その場でターンを決めるバイク。そうか、球体のタイヤだからその場でターンも出来るのか
「命を与えるなんてそんな事もアリなのかよ……すげぇな?」
「フォヴォス。そのバイクに名前とか付けるの?」
「名前……確かに生きているのなら付けた方が良いか。そうだなぁバイ太郎とかどうだろう?」
あ、フォヴォスは名前付けるの苦手なタイプだな
「それじゃあ僕も候補を出そう。ダイコーンさんとヘックスさんも候補を出してくれません?その候補の中からバイクが自分で選ぶのはどうかな?」
「おっ!良っすねそれ!正直さっきのは……」
バイクが余計な事を言いそうだったので、静かにするように口に指を当てて黙るように合図する。余計な事を言ったらそれこそ乗ってるフォヴォスに殴られるぞ?
「バイクの名前か……わりぃ、俺もそこまで名付けは得意じゃねぇんだが……ガンモとかどうだ?」
「そうだな……イグニスでどうだろう?」
「バイク、ドラゴン……アクセラとかどうかな?」
名前の候補はバイ太郎、ガンモ、イグニス、アクセラの4つ。さぁ、どれを選ぶかなぁ?
「おぉー、それならイグニスが良っすね!カッコイイっす!」
「イグニスか。バイ太郎は良いと思ったんだが……分かった!今日からお前はイグニスだ!」
「了解っす!」
イグニスと名前の付けられたドラゴンバイクはこれからフォヴォスの相棒になってくれるだろう。バイ太郎にならなくて良かったなぁ?
「ところで、ハチ。島を改装するみたいな話を聞いたんだが……」
「あぁ……それですか。ダイコーンさん?他言無用でお願いしたいんですけど、実はアレ。嘘なんです」
「何?」
「ダイコーンさんってもしかして漆黒龍云々の話って聞いてます?」
「あぁ、あの話は俺の方にも来たな。というかアレはギルドの話じゃ無かったか?」
「その漆黒龍を何とかする為に空島を動かすので、他の人が居ない様にする為に改装をするから島から皆一旦出てくれと言いました」
ダイコーンさんくらいなら言っても問題無いだろう。まぁハスバさんも大丈夫だと思うけど……というかロザリーさん達しっかり秘密にしてくれてたみたいだな
「漆黒龍を何とかする……まさか一人で戦う気か!?」
「まさか、戦うつもりは今の所ありませんよ。話し合いで何とかしようかなって」
まずは話し合いだろう。それでダメならいよいよもって肉体言語で話すしかないが
「話し合いで何とか出来る物なのか?」
「何とかする為に空島を動かすんです。それに他の人を巻き込まないようにする為の嘘なので」
他に人が居るとどうしても作戦が歪む可能性がある。こういう時に邪魔はされたくないから極力外的要因を減らしたい
「だとしても流石に何も用意してないのはそれが終わった後が大変じゃないか?勿論フォローはするつもりだが……」
「やっぱり何も変わってないと皆不満が出ちゃいますかね。何か改装の良いアイデアとかあります?」
ここは僕以外の話を聞くのも良いと思う。自分じゃ思いつかないアイデアとかを貰えるかもしれない
「アイデアか……空島を改築する規模の様な物か……」
流石に無茶振り過ぎたかな?
「そうだな、無理だとは思うが、サーキットなんてどうだ?マウントアイテムを使ってレースが出来そうな所を作るなんてどうだろう」
「サーキット!?それは確かに改築するって言ってもおかしくない……」
サーキットなんて凄い物を作るとするなら確かに空島を一旦閉じるっていうのも無理は無いと思う。ただ、空島にサーキットを作るとなると土地を大分使用しなければならないから既に住んでいる眷属達が可哀想だな……
「何かお困りっぽいっすけど、手伝える事とかあるっすか?」
「競争が出来るような場所を作ろうと思ったんだけど、使えそうな土地がちょっとね……」
「なら空に作れば良いじゃないっすか!オイラやりますよ!」
まさかの提案。そんな事が出来るのか?