決勝トーナメント出場者
「やった!勝ち抜けだ!」
「あ、あぁ……」
決勝トーナメントに進出出来た事を喜んでいたら若干アイリスさんが引き気味で返事をした。あっ……
「あっ、これは……」
「ひっ……」
そっかぁ……これが普通の反応だよなぁ……何だか僕の事を余り引かなかったハスバさんに会いたくなってきたな……
普通の人は目の前で心臓を抜いた奴が喜んでいたらそれは恐怖の対象だ。あれ?ひょっとして僕もピンク髪の方?
「オーブさん。次の戦場に送ってください」
アイリスさんから視線を外し、空中に居たオーブさんに話しかける。ここに残る意味ももう無い。グランダさんの時の様に会話する必要も無い
「分かりました。では転送します」
「あっ、ちょっと……」
今更呼び止められても困る。もう転送途中なんで
「トーナメントで会いましょう」
軽く首だけ振り返り、それだけ言い残して転送が完了する。正直ちょっと傷付いた所はあるけどこれでトーナメントでアイリスさんと当たった時、申し訳なさで手加減してもらえるだろう……ふっふっふ。もうトーナメントは始まっているのだ
ポリゴンになり、また違うフィールドに飛んでいく。今度はもう完全にコロシアムって感じだ。今までのフィールドより小さい。まぁタイマンで戦うとするなら広すぎるフィールドは遠距離武器持ちに有利過ぎるし、ある程度小さめの方が派手な戦いになるのかな?
「というかアイリスさんはなんか見た事あるような気がするんだよなぁ……」
ポリゴンになっている最中にアイリスさんの顔を思い出す。ゲームだからキャラメイクの関係で現実の顔と全く違う可能性もあるけどなんか見た事がある様な気がする……んー?
「もしかして知り合いだったり?……まさかね?」
たとえ知り合いだとしてもゲームの中じゃまた別だ。現実の付き合いとゲームでの付き合いは別ってね?
「いやぁでも大分疲れたな……」
ピンク髪の相手をしたことで大分精神を削られた。正直このままだと最後までトーナメントを勝ち上がっていけるか若干怪しいな……
「どこかで休みたいな」
【レスト】を使うと何故かHPとかMPだけじゃなく、脳というか精神的な物が楽になるから一度何処かで自分に使用しておきたい。でも、この待機中じゃ魔法もスキルも使えないんだよねぇ
「皆様、お待たせしました。無制限ソロ決勝トーナメントに参加する8名を紹介します」
え?また減ってるんだけど?残り2人のヤベー奴また全滅させたの?
「ここまで戦闘してきた全ての敵を倒す脅威の強さ!ロザリー!」
コロシアムに白い軽装鎧で真っ赤な髪の女性が現れる。どうして美人とか可愛い人って全滅させたがるの?
ぎゅうぎゅうの観客席からは歓声が聞こえる。あの人かなり人気があるみたいだ。手を振ってこたえてる……アイドルかなんかかな?
「同じく、戦闘してきた全ての敵をその魔法で吹き飛ばしてきた大魔法使い!ガチ宮!」
金ぴかのローブに正直糸ようじみたいな形をした杖を持った眼鏡をかけた男。うん、お約束の様に現れた時に眼鏡をクイッとやった。とりあえず全滅してきた奴2人が誰か分かった。これは出来れば最後まで当たりたくないなぁ……
「正統派剣士!尖っていない分、逆に倒すのが難しい!タナカム!」
鎧と直剣。人が良さそうな顔をしてるけどどうしてもさっきの2人に比べたら霞んでしまうな……登場した際もなんか会社員みたいな会釈をしてたから現実だとサラリーマンっぽそう……勝手なイメージだけど
「正確な狙い!相手を追い詰める様はまるで狩り!レイカ!」
あれは……マスケット銃?そういう武器もあるんだ……というかもうすっごいお嬢様感……金髪の縦ドリルだ。あんなのアニメくらいでしか見た事無いぞ?
「両手に持った拳銃から逃れられない!戦う姿は見所満載!小悪魔!キリエ!」
衝撃。痴女みたいに肌を露出した恰好に太ももにある2つのホルスター。水色のツインテールとさっき戦った顔。絶対ピンク髪と姉妹かなんかだ……
「その一撃はまるで爆撃!耐えられるプレイヤーは居るのか!グランダ!」
おっ!グランダさん決勝トーナメントまで上がって来たんだ。何だかちょっと嬉しいな?
「華麗に素早く斬り伏せる!その抜刀をしかと見よ!アイリス!」
戦場に降り立つアイリスさん。ん?なんかロザリーさんとアイコンタクトしているような気がする?
「正直言ってここまでに公式動画で使えるシーンがありません!何とかして下さい!エントリーナンバー815!」
えぇ!?何か僕だけ愚痴言われたんだけど!?
コロシアムに向かって吸い込まれる様な感覚の後、他の7人と並ぶように実体化する。あんまりこっちを見ないで欲しいな……?
公式動画って言ってたけど、僕ほとんど【擬態】で隠れて煙に紛れて……ってやって来たから確かに見所らしい見所は無いかもしれない。心臓抜き(ポリゴンだけど)とかモザイク無しでは子供に見せられないよね……
この8人でトーナメントかぁ……
「ねぇ?君もしかしてキリアを倒した人?」
「へ?キリア?」
突如痴女……キリエさんに話しかけられた。やめてくれよ……
「私と似たようなピンクの髪の女の子。私の妹なの」
「あっ」
「その反応……ふーん?君がやったんだぁ?」
察し。僕はこの姉妹にロックオンされてしまったようだ