支援攻撃
「そこを左に曲がれば切り立った崖に行ける」
「はい!」
普通に最初からこうしておけば良かった。さっきまで実際に走って逃げていたが、今は紫電ボードに乗って優雅に逃走中だ。走って逃げて必死感を出していたけど、どうせ何しても追ってくるんだから紫電ボードで楽しながら逃げても変わらない
「よし、まずは一か所目……」
切り立った崖と下は岩場。落下したら確実に死にそう。海に落ちて奇跡的に……なんて事が起こらないようになってる辺り、中々なキルゾーンだなこれは……
「ワタサナイ……コノシマハワタサナイ……」
「おー、分かりやすくて良いね!」
崖の先端に到達して、やっと落ち着いて背後を振り向けるので、振り返ってみるとそこには横たわっていた巨大なオートマトンが下半身を引きずりながら上半身の力だけでこっちに向かってきていた。周りにゴーレムとオートマトンを引き連れて、その上「この島は渡さない」と言っている辺り、例の魔術師の魂か怨念かがあのオートマトンに入っているのだろう。要するにアイツを倒せば周りの奴らも止める事が出来るのか、もしくは操作する権限的な物を入手出来るかもしれない……まぁ、魔力レシーバーが欲しいからアイツを倒すのは最初から決まってる事なんだけどね?
「ワタサナイ……ゼッタイニワタサナイ……」
「うーん、何か押すなよ押すなよって言ってるのを聞いている気分……」
別にこの島の事はどうでも良いんだけど、このボスを倒せたとしたらこの島は誰の物でも無くなるというのなら、その後の島の管理をするのも良いかも?まぁ倒せたらの話だけど
「とりあえず1発お見舞いしますか。ヘックスさん、崖ぶっ壊しちゃってください」
「ハチも落ちるぞ!?」
「勿論覚悟してます。準備は出来てるんでやっちゃってください。ちのりんは落ちないようにちゃんと捕まっててね」
「なら攻撃する地点を精確に指示しろ。これが今の状態だ」
ヘックスさんの支援攻撃をする場所を指定する為に、俯瞰の地図みたいなのが出てきたが、崖の先僕と肩に乗ってるちのりん。そして追い詰めるボスとかの姿がリアルタイムで映っている様なので、これは今ドローンで見ているって事なのか。それなら、この地点に攻撃したら丁度良い感じになるかな?
「この地点でお願いします」
ヘックスさんの支援攻撃1発目は崖の破壊に使用する
「ワタサナイ……コロス……」
「着弾するぞ!」
「おー来た来た!行くよちのりん!」
空から飛んで来たドローンを目視し、僕を追い詰めてきたボスと取り巻きが崖の上に集まってきた辺りで紫電ボードに乗り、崖から飛び降りる。後ろでは爆発が起こり、崖が崩壊してボスとその取り巻き達が落下していく。支援攻撃ってマジで近接航空支援ですか?何かの映画で見た発煙筒を投げるのミスって自分達の所を砲撃しちゃうアレじゃん……
「おぉ!ナイス砲撃です!」
「本来ならもう少し安全な支援をするハズだったんだがな……」
崩壊した崖と一緒に落ちていくボス達を上から見下ろしながら紫電ボードでゆっくり降りて行く。さぁ、あれだけ渡したくないって言ってた奴がこれだけで倒せるわけがないよなぁ?
「ユルサナイ…ゼッタイユルサナイ……」
「あぁそうだ。それで死んだら面白くないだろう?」
見上げるボスオートマトンと上から見下ろす僕。普通は構図が逆だと思う
「許さないって言うのならついて来いよ。そうじゃないとこの島は貰っていくぜ?」
ゆっくり落下はしてるけど、移動は出来るのでそのまま崖の残った方に飛んでいく。下の方で一応ボスは動いてはいるが、取り巻きはほとんど破壊出来たんじゃないかな?
「コノシマハ……ワタシノモノダァ!」
よしよし、ちゃんと追いかけてきた
「ヘックスさん、次のキルポイントに行きます。またさっきみたいにピンポイントの支援お願いします」
「あぁ、任せろ。それに関してはしっかりと保証しよう」
アイツは多分取り巻きを集め直してからまた来てくれるだろうから、そこをもう一度破壊出来れば非常に美味しいが、そこまでは上手く行かないだろうからとりあえず奴を視界に入れた状態で逃走する。一気に距離を離してしまうのも良いかもしれないが、少し確認したい事もあるからこのちょっと回りくどい方法を取る
「どうした?まさか疲れたのか?おいおい、その程度の実力でこの島は自分の物だとか言ってるのか?そんなんじゃ何も守れないぞ?」
「キサマ……」
あの感じ……やっぱり怒ってるよな?オートマトンだとしても、中身が人間であるなら奴には感情がある。なら常に正常な判断を下せる訳じゃない。ここはどんなに煽られてもまずは自分の兵を集めなければならないのに、アイツは僕を追いかける事を優先している。と言う事は僕が上手く誘導出来れば次の支援攻撃も刺さるな?
「君1人じゃ出来る事は限られてるよ?仲間が居ない、ただデカいだけって……正直惨めだよね」
「ゼッタイニコロスゥ!」
ヘイトを集め、相手の正気を奪い、正常な判断を下せない様にする。人数差があろうと、指揮する奴が冷静でないと、嵌めるのは割りと簡単なんだよなぁ?