やんきぃへの一歩
「背中に入れる文字だけど、フォヴォスの中で何かこうしたいとか信念みたいな物とかある?」
どうせ背負うなら自分の想いを込めた物を背負った方が良いと思う
「信念……オレはオレだ。親父とは違う。オレだけの道を見つけたい」
「おぉ!カッコイイじゃん。自分だけの道か……轟院愚舞羽得威なんてどうかな?簡単に言えば我が道を征くって事なんだけど」
こんなヤンキー言葉は見た事ないから正直僕の当て字満載だけど、舞う羽を得て威にする的な感じでどうだろうか?
「轟院愚舞羽得威……!なんて心惹かれる言葉なんだ……」
チョロいなぁ……その内芽論藩とか書いてもカッコイイとか言いそうだな
「また凄いのにするわねぇ……終わったわよ」
「どう?フォヴォスがそれで良いのなら背中の文字はそれになるけど」
「それで頼む!」
目がキラキラしながら採寸されていたフォヴォス。というかメロにゃんさんの採寸の手際が良すぎて本当にあっという間に終わってる……
「白い特攻服で良いのよね?」
「あぁそっか。服自体の色はどうする?黒とか赤とか何か要望はある?」
「いや、白で良い。白が一番カッコイイ!」
親ドラゴンも多分黒いドラゴンだろうけど、今のを聞いたらちょっとショックを受けそうだな
「分かったわ。それじゃあ要望通りに作っちゃうから1時間くらい待っててね」
「1時間で作れるんですか!?」
メロにゃんさんすげぇ……ポンチョくらい簡素なら確かに1時間あれば行けるかもしれないけど、普通の服……しかも特攻服なんて中々大変そうな物を1時間で作れるなんてメロにゃんさんの実力はかなり凄いのでは?
「任せなさい。超特急で作っちゃうんだから!」
「お願いします」
1時間というのは他に立て込んでるだろう仕事よりも優先してその時間で作るという事なのか。まさに職人の技という物だろうか。後で別のお礼とかした方が良いかな
「「……」」
メロにゃんさんが店の奥に行って作業に入ってしまったので、取り残された僕とフォヴォス。無言になってしまったから何か会話の種でも探さないと……
「ハチ」
「どうしたの?」
と、思っていたら向こうから話しかけられた
「ありがとう」
「親と仲直り出来ると良いな」
「それはちょっと難しいかな。オレはまだあの親父を許せない」
厨二で話しかけられた事を大分根に持ってるなぁ……まぁ威厳ある父親が急に厨二は流石にがっかりする事とかもあるか
「フォヴォス。「やんきぃ」が喧嘩したらどうなると思う?」
「え?喧嘩したらそりゃあボコボコにして終わりじゃないのか?」
「やんきぃの喧嘩はボコボコにして終わりじゃないんだ。殴り合って、お互いに自分の心をぶつけあって、両方ともぶっ倒れるまで喧嘩して、敵だとしても最後にはお互いに理解して仲間になるくらい心が広いんだ。フォヴォスはそんなやんきぃになれるかな?」
まぁ川の土手で殴り合いの喧嘩をしてお互い倒れて「今度は負けないぜ?」みたいなやり取りを端的に表したらそうなるんじゃないだろうか?ヤンキー知識なんてそれ程無いので、ほぼ想像上の話だけど
「す、すげぇ!殴り合いで敵とも仲間になれるのか!やんきぃってすげぇ!」
「あぁ、不利な状況でも逃げずに戦う。そうやって自分の生き様を見せつけていたらかつての敵だった奴も一緒に戦って不利な状況をひっくり返したりするんだ。性根の曲がった奴ならその性根を叩き直して、自分の信念を持ってる奴はその信念と自分の信念をぶつけあって……また仲間が増えるんだよ」
「なんてすげぇんだ!やんきぃ!」
やんきぃ株がどんどん上がっていく。現実のヤンキーがそこまで真っ直ぐなのかは分からないけど、僕の中でのヤンキーはこうなんだ
「オレはちっぽけな事で悩んじまってんたのかも知れねぇ……」
「まだフォヴォスは「やんきぃ」にはなりきれてない。恰好はそこまで重要では無いけど、一番大事なのは心だ。その心を作る為に姿から入るのはアリだね。タンシャとトップク。それが揃って気合いが入るって物だ。今はまだどうしたら良いか悩んでおけば良い。その内答えが見つかるさ」
一番良いのは話し合いで解決する事だけど、言葉と気持ちをぶつける為に暴力というのもアリなのかもしれない。ドラゴン親子の喧嘩がどう終着するのか。結末に至るまでの道は整備はするけど、どんな道になるやら……
「出来たわよ!」
「すごっ、本当に1時間で……」
メロにゃんさんの手には白い特攻服があった。かなりしっかりした出来だ
「さぁ、着てみて頂戴!」
「おう!」
フォヴォスが試着室みたいな所で特攻服に袖を通す
「うおっ!?なんだこの手触り!すげぇ着心地が良い!」
カーテンの向こうから着心地が良いとか聞こえてくる。素材にこだわってますから
「どうだ!」
シャァッとカーテンが勢いよく開けられ、白い特攻服を着たフォヴォスが現れた。黒髪金眼と白い特攻服の対比でかなり映えていると思う
「似合ってるな。気合入ってるぜ!」
「素材が良いし、着る人も良いから服も喜んでるわぁ」
確かにそれは思うな
「メロにゃんさんありがとうございました。これからもちょくちょく糸とかは持って来る予定ですので、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそよ!」
がしっと握手をする。メロにゃんさん手デカいなぁ
「よし!これで要件も終わったし、一旦空島に帰るか」
「あぁ、服ありがとうな店主!」
「ええ、またどうぞ」
メロにゃんさんの店を出て、泉に向かう。ワープしてささっと帰らないとなぁ……
「「えっ」」
「あっ」
「ん?」
アイリスさんとロザリーさん が 現れた▼