マジック・レコーダー
「これに乗ったまま空中から補助を掛ければ良いのだな?」
「私は一緒に地上で戦えば良いんだな」
空中から補助の姫様。地上から魔法攻撃のドナークさんの編成で島の調査に向かう。今回はゴーレムのルーンをバイクの分とクラウディアシープ用の水飲み装置分確保するくらいの気持ちで行くか。欲張る必要は無いから無理はしない方向で行こう
「はい、可能な限り安全に行きましょう」
「って思ってたんだけどなぁ……」
「はっはー!そんなんじゃ私を倒そうなんて土台無理な話だ!【ウォーターカッター】!」
ドナークさんがノリノリで迫り来るオートマトンをバラバラにしていく。魔法の力もさることながら連射数もエグい。姫様のバフで魔法の発動速度アップ、消費MP20%カットとか使っているのでドナークさんの殲滅力がかなり上がっている様な気がする
「ちょっと防御力上がったかな?はぁ!」
一方僕はゴーレムを担当して連続討伐数を稼いであの小柄なゴーレムが出てくるのを待つ。前に比べると若干ゴーレムの防御力が上がったのか、足の関節を外すのが難しくなったような気がしないでもない
「アイツが例のレアタイプだな!」
「こっちも出てきました。ほう?ちょっと学習してるみたいだな」
オートマトンの方は足パーツをくっ付けて8本脚になっているタコみたいな……一応スキュラオートマトンとでも言っておくか。そんな形の奴が出てきた。僕の方は小柄なゴーレムなのだが、今度出てきたタイプは両手がちょっと長い。リーチが有ればこっちが攻撃出来ないだろうという感じだろうか
「どんだけ足や手を増やしても使いこなせないなら意味ねーんだよ!」
「リーチが長いと確かに接近は難しいけど、接近されると逆に弱いんだよね」
足が増えたスキュラオートマトンはドナークさんの【ウォーターカッター】の連射で、僕の方は姫様のバフ効果も相まって倒れ込むような低姿勢からの足払い。そして関節を極めて、両腕を破壊し剥き出しになっているゴーレムのルーンを引き抜く。小柄なゴーレムは確かに速度が上がって戦い難くはなっているけど、装甲が大分脆い。守るべき部分が剥き出し状態だから下手すると一撃で倒せてしまうなこれ
「欠片はもう必要ないレベルで集まってるな……まぁでもヘックスさんに渡せば何かしらの素材にはしてくれそうか」
もしくは素材が増えればバイクとか少し大型化とか出来るかもしれないし、たくさん集めておくのは別に悪い事では無いだろう
「これで残すは魔力レシーバーだけか……あれの封印みたいなのはどうしようかな」
正直あの横たわっている奴は非常に気になる。でも今はクラウディアシープの水飲み設備をどうにかする方を優先した方が良いかな
「よし!今日はここまでにしよう。ここの調査も進めたいけど、まずは新しい空島の仲間の為の設備を早く作ってあげよう。そうしたら空島に残っている誰かがいつでも水やりが出来て僕も安心出来る」
「お、帰るのだな?」
「無理に進まないのは良い事だ」
「調査としては敵が若干強化されているから少し急いだ方が良いかもしれないが、まぁ今はそちらを優先してもまだ大丈夫だろう。では帰還しよう」
今日の調査はここまでにして空島に帰還する事を決定した。次は絶対に心置きなく調査して、アイツと対面するまでは進めるぞ
「早速ですけど、ヘックスさん。クラウディアシープ達の為の魔法記録装置的な物を作って貰えますか?」
「良いぞ。ゴーレムのルーンをくれ」
「はいどうぞ」
今回採取したゴーレムのルーンをヘックスさんに渡す。欠片に関してはもう既にヘックスさんに渡し済みなので、これですぐに製造出来るはずだ
「これをこうして、コイツをここに……」
パーツを組み立てて、プラモデルが組み上がって行く様にヘックスさんが装置を作っていく。見てて結構楽しいな?これバイクの時も見られるとするなら絶対にその時はフォヴォスは呼ぼう。あとダイコーンさんも呼んであげたい所だけど、ヘックスさんはどうなんだろう?見られても問題無いのかな?その辺聞いてオッケーだったら村じゃ無く、城の方でヘックスさんにバイクを組み立ててもらおう
「よし。ハチ、これに魔法を記録してくれ」
「はーい」
手渡されたのは単一魔法記録装置というアイテム。1つの魔法をこの装置に記録して、魔力を流せばその魔法を発動させる事が出来るという装置。これに【ミスティックミスト】を記録しておけば誰でも(MPを使えば)クラウディアシープ達の餌を用意する事が出来るようになった訳だ
「そうだ、姫様。早速テストしてみてよ。これに触れて魔力を流せば記録された魔法が発動出来るはずだから」
「分かった。やってみよう」
姫様にラグビーボールくらいのサイズの装置を渡す。流石に村の中で発動させるのは良くないので、クラウディアシープ達の所で実験してみよう
「ではやるぞ?」
「「「いつでもどうぞ」」」
姫様がクラウディアシープ達の前に立ち、装置を構えて僕達3人はそれを少し離れた後ろから見ている。爆発するんじゃないか心配しているのではなく、ただこういう試運転みたいな時は周りに人が居ない方が良いと思ってそうしていただけだ
「おぉ!霧が出たぞ!」
姫様の持つマジック・レコーダーがキチンと起動して、【ミスティックミスト】が発動された