ヤベー奴
「あん?815?名前じゃないのか?」
「あ、どうも。えっと……グランダさん?」
「あぁ、グランダは俺だ!」
戦場に残ったハンマーさんもとい、グランダさんと会話する。また当たるかもしれないので情報が入手出来ればラッキーくらいの気持ちだ。というか頭から角が生えてる……あの時のオーガみたいだ。ひょっとしてそれ系統の種族なのかな?
「そのハンマー凄い大きさですね……」
「あぁ、これか?これは『撃槌・ドミニオンブレイカー』っつうレジェンド武器だ!取るのに苦労したが、俺の為にあるような武器だぜ!」
ハンマーを褒めたら喜んで説明するグランダさん。聞くにグランダさんはβの時に村を1つ救ったらしく、その村にあったこのハンマーを持つ事が出来る筋力があれば持って行って良いという事で成長ポイント全てをSTRに突っ込んでギリギリ持てるようになったらしい。グランダさんの身長も結構大きいけどそれより大きいこのハンマーとか元は巨人が使っていたって言われた方がしっくりくる
「戦闘中きっと見ていたと思うが、ジェットのお陰でAGIが少なくてもそこそこ敵を追えるしな!」
「凄かったです」
見てないけど……
どうやらあのハンマーにはジェット噴射のギミックがあるみたいだ。あの質量でジェットの推進力が組み合ったらそりゃ強いか
「ま、決勝で会ったら痛くない様に一撃で決めてやっからよ!」
「は、ははは……」
うん、この人多分普通の時は良い人っぽいけど戦闘時は容赦無い感じだ。オラオラした感じだけどサッパリしてて嫌いじゃない
「僕も決勝まで残れるように頑張ります」
「おう!おっと?ここでやるんじゃないのか?」
僕とグランダさんの体がポリゴン状になって空中に飛んでいく。ここじゃなくて違う場所で戦う事になるみたいだ
「勝ちあがった方のHPとMPを回復します。他のフィールドの戦闘が終了するまでお待ちください」
さっきのフィールドより観客席が多く、少し立派になっているフィールドの宙に浮いた状態で待機させられた。この間僕の体はポリゴン状で宙を漂っていて、体の感覚が無いからちょっと気持ち悪い……
「お待たせしました。無制限ソロ、第一回戦が全て終了しました。勝ち抜けた人数は95名ですので19名で戦い、2名ずつ勝ち上がり、10名で決勝トーナメントを行います。それでは第二回戦。スタートします!」
ちょっと待って?980名だったから勝ち上がりって98人じゃないの?ひょっとして3人くらい他のプレイヤーを全滅させたヤバい奴が居る?
フィールドに向かってポリゴンが落ちていき、体が再構成されていく。自分の他に18人。一回戦を勝ち抜けたプレイヤーが居る。計算すればすぐわかる。95÷19だから5。僕の居るフィールドの他に4つのフィールドがある。ヤバそうなプレイヤーがおよそ3人居るとすれば僕がそのプレイヤーに当たってしまう確率は……
「アハッ!また全部倒しちゃえば良いんだよねっ!」
あっ、計算する必要ありませんねぇ!?
語彙力が無くなってしまうけどヤバいとしか言いようがないプレイヤーだ。恰好はお腹とか太ももとか大胆に露出した黒い服に両手に小さめの禍々しい斧を持っているピンク髪でツインテールの女の子。よく見ると頭にちっちゃい角と背中にコウモリみたいな小さい翼。あと矢印みたいな尻尾も生えてる……悪魔的な?最初の言葉が無かったら可愛いと思ったけど言動が如何せん怖すぎる
「【擬態】」
もはや本能的に姿を隠す。アレに目を付けられたらとてもじゃないけど生き残って次に進める気がしない。ついでにAGI少しとDEX多めの分配でステータスを上げておこう。何が起きるか分からないからね……
「ようよう?嬢ちゃん?俺と遊ぼうぜ?」
チャラチャラした感じの槍を持った男が一人。厭らしい目付きでその女の子に近寄る。よくあんな事出来るな……
「何?私と遊ぶの?」
「あぁ、ついでにイベントの後でお茶でもどうだい?」
僕にはあんな不用意に近寄る事なんて出来ないよ……
「私に勝てたら良いよ?早速やろっか!」
19人居る戦場にも拘わらずこの場で動いているのはたったの2人。チャラ男とピンク髪のヤベー奴だ
小さい斧を両手に持って構えるピンク髪と槍を構えるチャラ男。何でも良い。あの超怖い女の子を倒してくれるなら誰でも良い
「それじゃあ可愛い女の子とお茶する為に頑張りますかねぇ!【トライスラスト】!」
槍で3回突くだけに見えるけど槍の穂先が光っている。あれがスキルが発動している証拠かな?
「そんなんじゃ遅いよ!【斧噛】!」
体をひねって槍を避け、両手に持った斧を上下から挟む様に振る。するとまるで鰐の様な物が見え、それがチャラ男を飲み込む様に顎を閉じる
「あっぶな……」
「お茶はまた今度みたいだね?」
鰐の顎が閉じたその中から斧が一つ飛び出してチャラ男さんの脚を1本持っていく。あれは投げ斧か……というか流石にチャラ男さんでは止められなかったか……
「アハッ!」
右手に持っていた斧をチャラ男さんの頭に落とし、キルを取るピンク髪の女の子。怖すぎる……
「何人でも掛かって来てもいいよー?」
いつの間にか左手に戻ってきている斧を見るにアレは自動で手元に戻ると見て良いだろう。遠距離対応出来る近接武器とかズルいなぁ?
「こ、子供にビビってられっかぁ!」「私だって勝ち進んで来たんだから!」「うぉぉぉぉ!」
正直このままずっと隠れていたい……