追加1体
「っ……うぐっ!くっ」
熱すぎる!ドラゴンに戻ったフォヴォスの背に乗って溶岩の中を突き進んで外に向かうが、ダメージでHPゲージがガリガリ削れている。こんな状況では流石にシロクマコスチュームに着替えられない。【アダプタン】で適応が出来なければ確実に死んでた……最低限顔を防御しなければいざという時に魔法が使えなくなる。目なんて開けてられないから早く溶岩から出てくれ……
「うおっ!?急になんだ!?」
「出たかっ!熱すぎぃ!」
外に飛び出したら何やらのんびりしていたみたいなボルカさんがビクッと驚いていた。こっちは割と大変な目に遭っていたのに……
「おいおいおい、人間用の道を用意してたのにお前どうやってこの溶岩を抜けて来たんだ?人間なら確実に燃え尽きるぞ?」
そりゃあそうだよね。確実にあれは人間用の安全な通路だったハズだ。でも、そこを通ろうとした前に特攻服の話とかした後で、日和ってるとか言われたら引く訳にはいかなかった
「ボルカ!邪魔したな。オレは新しい道を見せてもらったからその未知を進んで行くぜ!」
「ど、どういう事だ?あれだけ外には出ない、引きこもるって言ってたのに……」
「新しい可能性って奴さ!夜露死苦!」
あぁ……これはヤバい。完全にこれ黒歴史になっちゃう奴だ……
「お前……遂に見つけたのか!?」
「え?どういう事?」
ヤンキー言葉を使っているフォヴォスに対して何か嬉しそうな感じのボルカさん。なんだ?
「そうか、人間のお前には分からない事だったな。我等ドラゴンは皆強大な力を持っているが、その力の根源となっているのは歴史だ。長命なドラゴンはより多くの歴史を持っているからとても強い」
ボルカさんが途中から小声で話す。まぁ、色んなゲームでもただのドラゴンより名前にエンシェントとか付いてるドラゴンは強いのが常識か
「ドラゴンの歴史。それは何もプラスの面だけでは無い。強くなる為にはマイナスの面も必要なんだ。忘れたくなるような過去もな。そういう物を経験出来ると龍は一回り強くなる」
「そういう物なんですねぇ……」
つまり、何かに勝利した、貢献した、記録を残したみたいな輝かしい結果以外に、忘れたくなるような失敗とかも積み重ねる事で人生……ドラゴン生に深みが出て強くなるみたいな事なのか?って事は、ドラゴンの中でも強いとされている龍王達って結構な失敗……黒歴史的な物があるのか
「ん?だとするとフォヴォスの親って……」
壁にぶつかったフォヴォスを助ける為に自分から黒歴史を見せたって事なのかもしれない。これは説明した方が良いのか、自分で気が付くまで何も言わない方が良いのか……
「ここは黙っておくか」
「おーい、何話してるんだ?」
フォヴォスに何も言わずに厨二病発言をしたとするのなら、フォヴォスが知らない事を知っている上でその発言をした可能性がある。だとしたら、僕がその事を喋ってしまうのは違う気がする。喋ってしまえば誤解は解けるかもしれないけど、親がやりたかった事とは違う結果になってしまうかもしれない
「いや、何でもない」
歴史が強くするとか言ってたし、自分で気が付くとかが大事なのかもしれない。何でも答えを教えると言うのは実はあまり良くない事なのかもしれないな……まぁ時と場合によるか
「それで?ここから出て俺の所に来るのか?」
「まだまだ学びたい!行かせてくれ!夜露死苦!」
ボルカさんの所から僕の所に移動するって事で良いみたいだ。正直ヤンキー言葉が黒歴史としてこのアルターで認められるのかは分からないが、空島で人の手伝いとかするのもしっかりと貢献した歴史としてフォヴォスの力になるとは思う
「よし、なら一緒に行こう。案内はするからまた背に乗せてくれ」
「良いぜ!乗りな!」
ヤンキー的になったお陰か、割と話がスムーズに進んでくれる。とりあえずこれで空島に連れて来る事が出来そうだ
「おう、待て待て。それなら俺も行こう」
「え?」
まさかのボルカさんもついてくるのか?
「空島なんて面白そうな所、行きたいに決まってるだろ?居候も出ていくみたいだからな。せっかくなら行かせてもらう」
ドラゴン2体も連れて行くのかぁ……滅茶苦茶目立ちそうだなぁ?
「まぁ1体も2体も変わらないか。それじゃあどっちが乗せてくれる?」
赤のボルカさんか、黒のフォヴォス。なんかポケットに入るモンスターのゲームでどっちのバージョンを買うか悩む時みたいだなぁ……
「さっきも言ったがここは俺が運ぶぜ!夜露死苦!」
「分かった。じゃあ頼むぞフォヴォス」
最初に頼んでいたし、そのままフォヴォスの背に乗って空島まで飛んで行こう
「よし、それじゃああっちに向かって飛んでくれ。そうしたらその内空に島が浮かんでるはずだから」
「任せてくれ!仏恥義理で行くぜ!」
「すげぇなぁ……」
ボルカさんの反応を見るに、多分だけど恥を乗り越えられる奴が龍王への道が開けるんじゃないかな?龍とかプライド高そうだし、そのプライドの壁を乗り越えられた者にのみ龍王になれるかもしれない