すれ違いドラゴン
「本当に話をするだけか?」
「この子は僕の友達ですから、この子に殴らせるとかはしませんよ」
「メイレイサレレバ、ナグリマス」
「ちょちょ待ってゲヘちゃん?そこは「シマセン」って言って欲しかったんだけど……」
まさかのドラゴン相手にも怯まないで殴りますって言うゲヘちゃんにちょっと焦る
「テメェ!やっぱりやる気か!?」
「やらないやらない。だから一旦落ち着いて」
「ハチサン、スミマセン……」
ゲヘちゃんも多分冗談気味でやったんだろうけど、それのせいで僕が不利になると思って謝ったんだろう
「まずは落ち着いて話しましょう。急に呼び出してごめんねゲヘちゃん」
「オヤクニタテズ、モウシワケアリマセン……」
「気にしないで。失敗は誰にでもある事だから」
話し合いを進める為にゲヘちゃんを一度帰す。一応これでケアはしてるハズだからゲヘちゃんは大丈夫だと思う
「とりあえず一旦帰したからこれで話をしてもらえますか?」
「お、おう……何か調子狂うな……」
ドラゴンさんの調子が狂う……良いぞ。調子が崩れたらこっちのペースにしやすくなる。ゲヘちゃんはしっかり仕事を果たしてくれたな
「座っても良いですかね?」
「あぁ、もう好きにしろよ」
ドラゴンさんの寝ていた地面の所まで行って座る。一応僕も攻撃とか出来る間合いまで接近出来たかな?
「じゃあどうして家出したのか聞かせてもらえますかね」
まずはどうして家出したのか。それを聞きださないと話が進まない。方針を決める為にもこの情報は必要だ
「……言いたくない」
「言いたくないですか……それは困りましたねぇ……」
うーむ、言いたくないと来たか……これは困ったな
「言いたくないって事は君に原因があるのかな?」
「いや……うーん……」
歯切れが悪いな?自分に原因があるのなら完全沈黙とかだろうし、親に原因があるのならさっきの聞き方でこのドラゴンのヤンチャっぽさなら即否定が入ると思う。という事はお互いに何か原因があると見た方が良いか
「……じゃあ親に何か言われて、それが嫌、もしくは納得出来なくて家を飛び出した……かな?」
「おまっ、分かるのか!?」
「おぉー当たった」
人の観察とか思考を考えて罠を仕掛けるとかやってたら結構相手の考えを読む事が出来るようになってきた気がする
「お前の観察眼はとんでもないな」
「お褒めに与り光栄です。で、どんな理由で?」
ここまで追いつめたなら流石に白状してくれるだろう。さぁ、どんな理由だ?
「……親の言葉が気に喰わなかったからだよ」
「言葉……えっとそれはお前はダメな奴だーとかそういう?」
自己否定されたから逃げてしまったのならまぁ時間が経てばある程度は回復すると思うけど……
「まぁ、ダメな奴なのかもな?でも、あんなのになるくらいならダメな奴でも何でも良い……何触ってんだ?」
「あ、ごめん。何て言われたか分からないけど、辛かったんだなって……」
口調から結構酷い事を言われたんだろう。何となく手が自然に伸びていた
「辛いに決まってるだろ?お前は親から「孤高なる翼」とか言われた事あるか?」
「っ……」
撫でていた手が自然に止まった。待って?龍王だよね?完全にそれは厨二病患者では?
「孤高なる翼よ。晩餐の時間だ。とか、新たなる創造の幕開けだとか訳の分からない事を言われてみろ?」
「君は何も間違ってないと思うよ。これは相手にも考える時間が必要になってくる問題だと思うから今は家出でも何でも時間を設ける事が必要だと思う」
龍王と呼ばれる存在がまさかの厨二病……これは子供が可哀想になってくる。もし、一時的な物だったなら冷却期間が必要だな……
「それは……言われ始めたのは最近?」
「まぁ……ここ最近の話だな。今までの話し方で距離感を感じてるのか知らねーけど、あんな接し方されたら家出するしかねぇ」
「今までの話し方はどんな感じだったの?」
「そりゃあ、飯だ。とか、朝だぞ。みたいな感じだった。あれで充分だったのに……」
これは親子のすれ違いっぽいなぁ……子供とちゃんと接したい親が今までの話し方じゃダメだと無理して余計に距離を置かれているのかな?この状態……どうにかしてあげたいが、まずはショックから立ち直る時間を持たせた方が良いな。後は、厨二病発言を直してあげたいが、相手が気が付いていないとマジで地獄の様な問答をする事になりそうだ……
「……もしかすると何とか出来るかもしれない」
「何?何とか出来るのか?」
「今はまだ可能性があるとしか言えない。あと、これは君の協力が必要不可欠になる。失敗してしまうかもしれないけど、成功すれば傷は浅く済んで普通の言葉遣いに戻るかもしれない」
上手く行く確証は無い。協力も得られるか分からない。でも、これが上手く行けば親自身が自分の言動を見直してくれるかもしれない
「どういう事をするか言ってみろ。場合によっては考えてやる」
「相手がそういう口調で話して来るのなら、こっちも相応の言葉で返してあげれば良いのさ。夜露死苦!」
「っ!?」
僕の言葉に何かを感じ取ったのだろう。ムクリとその巨体を立ち上がらせて反応を示した黒いドラゴン。さぁ、今から仏恥義理で行くぜ?