火山の中に
「一番簡単なのはドラゴンさんが僕と契約してくれれば空島に意識だけを呼ぶような事は出来ますが……」
「うーむ……だがそれは流石に今すぐには踏ん切りが付かんな……」
まぁだろうなぁ……
「多分ですが、この火山に何か居ます?それが何とか出来るまではここを離れる訳にはいかないみたいな……」
「お前は何処まで知ってるんだ?」
そんな感じかなぁと思っていたら本当に何かあったみたいだ。これを何とか出来ればドラゴンさんが割と動きやすい環境を作れるか?
「ほぼ何も知りませんが、もし何か手伝える事が有るのなら手伝わせてください。深淵を使える人に対しての誤解もあるようですから、それの解消もしたいです」
今まで見てきた深淵を使える人のイメージ払拭とかしてドラゴンさんの理解を改めたら案外そのまま空島まで飛んで来る可能性もあるか?
「確かに、その辺に居る奴らよりは期待出来るが……」
「何か、実力を示さないとダメですか?」
「いや、その必要は無い。実力はあるだろう」
「なら、何かお手伝い出来ませんか?」
「うーむ……」
大分渋っている。これは何か人に言えない様な事なのか、それとも手伝ってほしくないという事なのか……
「確かに、誰かに助力を願えば解決出来るやもしれん。だが、この問題は我々ドラゴンの問題だから余所者に首を突っ込ませるのも如何なものかとな……」
「もしかして、ドラゴンの中になんか裏切りとか里抜け?的な事を考えてる反抗的な奴が居るとかそういう事でしょうか?」
ドラゴンの問題と言う事は、何かドラゴン達で解決したい事が有るって事なのかもしれない。となると、ドラゴンの中で裏切り?とか組織的な物から抜けるとかそういう事なのかな?
「お前は相手の心でも読めるのか?」
「いえ?別にそんな事は無いと思いますが、さっきから喋っている断片的な情報を纏めたらそういう事かなって……」
細部は間違っているだろうけど、大まかな所はそんな感じじゃないかな?というあくまで予想なだけだ
「分かった……話そう。変な想像をされても困るからな?我々、龍の中には一際強い龍王という存在が今の所6体居る。その中の1体とひょんな事から交流を持っているのだが、奴の子がな……」
「反抗期ですか?」
「あぁ、親の言う事は何一つ聞きたくないという状態で、ある程度知っているからという理由でここに居候される事になってな……何とか他の奴の目に触れない所で匿っているが、暴れ出したら街の方に行くやもしれん。故に何かあった時、止められる様にこの場から動く事が出来んのだ」
なるほど、火山の管理では無く、その反抗期の龍王の子供が他に迷惑を掛けないように見張ってないといけないから移動が出来ないと言う訳か。サラマンダーに関しても、何か危険そうなら勝手に逃げとけとでも言えそうな感じだな
「一度会ってみたいって言ったらどうします?会わせてもらう事とか出来ます?」
「うーーーーん……会わせて良いのか?教育上の問題とか発生しないか……?」
滅茶苦茶悩んでる。僕が会うだけで教育上に問題が発生するって事はやっぱり僕の事を相当信用出来ないみたいだな
「じゃあ無理にとは言いません。その子供が何歳なのかも知らないので、アドバイスも出来ません。ドラゴンさんと僕のどっちが年齢的に近いのかは分かりませんが、ドラゴンの中でも凄く偉い存在を親にして、反発して他のドラゴンの所に居候しに来てるその子がドラゴンの説得とそれ以外からの説得のどちらに応じやすいのか……それではさようなら」
「分かった待て。手伝ってくれないか?」
『特殊クエスト 漆黒龍見参 を開始しますか?』
出た出た。やっぱり出てきたぞ?
「勿論お手伝いしますよ。では自己紹介しましょう。人間のハチですよろしくお願いいたします」
「ボルカだ、よろしく頼んだ」
反抗期のグレドラゴン……どのくらいグレてるんだろうなぁ……
「今、奴は寝ているはずだが、お前が来た事によって起きているかもしれん。気を付けて行くのだ」
なるほど、いつもの時間だと寝てるけど、クエストになった事で起きているかもしれないと言う事か
「じゃあその場所まで行く許可をください」
「良いだろう。あそこを通って行くと良い」
急に火山の火口付近に洞窟の入り口らしき物が出てきた。と言う事は火山の中にその龍がいるのか
「それじゃあ行ってきます。うぉ、結構熱いな……シロクマ着よう」
洞窟入口前まで来た時に中から熱風が吹いている事に気が付いた。これはこの先にマグマがあるからその熱がこの入口から漏れ出していると思って良いのかな?これかなりの危険な環境だぞ?
「随分と愛らしい姿だな?」
「これ着ないと僕、蒸し焼きになっちゃいますよ」
普通は着ぐるみみたいな物を着た方が蒸し焼きになりそうだが、シロクマコスチュームは外からの影響を遮断するような効果があるので、これが今持っている僕の装備の中でもベストな選択だろう
「じゃあ、ちょっと話に行ってきます」
漆黒龍見参というクエスト名から察するに相手は黒い龍だろう。さぁ、どんな感じか確認してこよう!