師匠仲介人ハチ
「こっちの方が安全かと思いましたが……人が居ましたね……」
ルクレシアさんの選んだ安全そうなルートは確かに人は少なかった。だが、先生らしき人が庭の水やりをしていた
「とりあえずあの先生には見つからないように行きますか」
水やりをしているのなら割と抜けやすいと思うが、あの先生がもし、後ろを通った時に「おやおや、どうしましたか?」みたいな切れ者だった場合は危険があるが……
「大きく育てよ~」
「「……」」
黙って後ろを通ってみたら普通に通り抜け出来た。まぁ魔法を使わなくても【ゲッコー】の効果で足音がしないし、ルクレシアさんも意外と忍び足が得意みたいで問題無かった。ちょっと拍子抜けというかなんというか……
「あの先生は植物を育てるのが好きな方なので……」
「温厚そうで良い先生じゃないですか?」
「あの方……生徒にはかなり厳しいので、見つかってたらそれこそ全然学園に来てないハチさんみたいな人だと辞書みたいな量の宿題とか出されますよ?」
「怖ぁ……」
見つかったら宿題とは言われてたけど、辞書みたいな量の宿題はヤバい。バレなくて良かった……
「ルクレシアさん見た?」
「改装中だから図書館にも居ないし……」
「なんかあっちの方で見たとか何とか……」
ルクレシアさんの取り巻きらしい女子なんかがルクレシアさんを探して捜索しているみたいだ。まぁその捜索網はすぐに突破出来るだろう。あっちの方で居たっていう方向に僕達は居ないし、例えそれが嘘情報だとしても学園はあと少しで出られる。街の方まで行ってしまえば後はもう逃げ放題、隠れ放題だ
「ルクレシアさんのルートのお陰でかなり楽出来ましたね。下手なルートだと生徒集団と正面からぶち当たって大変な事になる所でした。街まで出られたのであとは任せてください」
「だとしても直前で察知して避けられるのはやっぱり人間技じゃないというか……」
最後もう少しで出られるという場面でルクレシアさんを探している生徒とすれ違いそうになったけど、【察気術】で来る事を察知して、茂みの中でやり過ごしで街に来た。念の為街に出た段階でルクレシアさんの制服をテアトルクラウンの服で周りにとけ込みそうな私服に変えて、僕も地味な感じの服装にしてあるので、街中でバレる事はまず無い。これでバレるようならクエストがヤバい
「ハチさんやっぱり賞金首とかになってません?逃げ方の本気度が違い過ぎて……この服を変える魔法とか……」
「そんな物ですかねぇ?とりあえず行きますよー」
泉に到達して、遂にワープだ
『特殊クエスト マジナリア隠密脱出作戦 をクリアしました』
やっぱり報酬は特に無しか。これ完全にあの称号の効果だな?
「ここが……空島」
「ようこそルクレシアさん。歓迎しますよ」
誰にも見つかる事なく空島に帰還出来たので、同行する人も他に居なければ宿題も無い。ありがたい話だ
「現状、見える範囲ではまだ空島とは言い切れないですね……」
「あぁ、まあそうですね。それじゃあ城まで案内しますよ」
折角だし、星を見る為に作った展望台に行けばわかってくれるかな?
「いや、空島云々よりここどうなってるんですか!?」
「え?」
「天使が門番していて、ゴーレムみたいなのが城の中に居て、こんな屋根の開く展望台って……」
「楽しんでますねぇ?今の段階でそれだけ楽しんでくれているのなら多分まだまだ楽しめますよ」
冥界門、教会辺りみたらどうなるかなぁ?
「しかも本当に空を飛んでるし……」
「移動も出来ますよ」
「何でもアリですね……」
本当にそう思う。しかもまだまだ開拓の余地が残されてるし
「ここのお陰で地上でいざこざが有ったとしても僕はそれに巻き込まれないで済みますし、ここに居る仲間達と一緒に色々作ったり出来るんです。あっ、忘れる所だった。ルクレシアさんに会わせないといけない人が居るんでした」
「えーっと、もしかして師匠云々の話でしょうか?」
「そうですそうです。その人と会って、話だけでもしてもらえます?別に師匠としてじゃ無く、それこそこうすれば良いみたいな事を紙に書いて渡すだけで良いので……」
チェルシーさんにはそれでも良い気がする
「いえ、せっかくこんな所に来たんですから、やる事はやらせてもらいます」
ルクレシアさんやる気だなぁ?まぁそれは嬉しいけど
「じゃあちょっと待っててください。連絡します」
チェルシーさんにメッセージを飛ばす。とりあえずこれだけ伝えておこう
『師匠になってくれる人なんとか確保しました。今何処に居ますか?』
『ありがとうございます!やっぱりハチさんって優しいですね。今は新しい情報が入ったのでシアターの方に居ます』
チェルシーさん、PV見てるのか。ルクレシアさんと引き合わせに行くついでに僕もPV見に行くか
「ルクレシアさんに教えて欲しい人の位置が分かったので、そっちに向かいます。もう移動しても大丈夫ですか?まだ何か見てたいですか?」
「いえ、問題ありません。案内してください」
早めに終わったら自由に見学してもらおうかな