理解ある者
「来ますよ……最後の番人が」
「最後の番人……どんなのが来るのかなぁ?」
正直不安は微塵もない。次に来るのも多分動物だと思うんだけど……何が来るかなぁ?
「この番人にお前では任せられないと言われました」
「じゃあこの番人が最後ですか」
チェルシーさんの話を聞くとそういう事になるが……まぁ他の番人と敵対してたからダメなのかもしれないな
「今度の奴は中々見所が有りそうだな」
「なるほど……最後の番人はロバ?ですかね?」
「いかにも」
なんか立派な装備を纏ったロバが出てきた。犬、猫、鶏、ロバと来たらブレーメンの音楽隊かな?
「あら?もう終わりかしら?」
「ここは……どうやら終わった様だな」
「あ、ハチだ!」
「ハチ君、大丈夫ですか!」
4人がこのエリアにワープしてきた。道を開ける為にギミックをやってくれたんだからお礼を言うべきかもしれないが、今はこっちのロバと話をしなければ
「お疲れさまです。えっと、ちょっと会話中なんでもう少し待っててください。はい、お話中断してすみませんロバさん」
4人…あっチェルシーさんも含めて5人だった。5人に背を向けてロバと向き直る。いつの間にかロバの横に猫と犬と鶏が並んでいた
「今までの無礼な奴らと比べるとかなりマシな部類だな。だがまだ認めるには早い」
「台詞が変わってる!」
チェルシーさん曰く今までと別の反応みたいだ。でもまだ認めるには早いらしいのでもう少し話を聞いてみよう
「貴様は……あぁ、見込み無しか」
「ムッキー!ムカつくぅ……」
ロバに馬鹿にされてチェルシーさんが怒ってる
「どうどう、ロバさんにとって僕の何が見込みありの判断なのかは分かりませんが、とりあえず僕は門前払いじゃなく、試す位はしてくれると見て良いですか?」
「あぁ、推薦があるからそこは安心すると良い。推薦の無い者は試験をしないだけだ」
「意外とかっちりしてるなぁ……」
ロバさんの言う推薦っていうのは周りに居る犬、猫、鶏たちの事だろう。敵対行動を取れば推薦は無しか何か別の方法があるのかもしれないけど……今の僕にはあまり関係無いか
「では始めようか」
「お願いします」
ロバさんの試験が始まる……いったいどんな試験なのか
「ではまず、その手錠を外してみろ」
あー、そういえば手錠してたな。ここはちょっと外すというより破壊する的な感じで見せるか
「ふんっ!とりあえずこれで良いですかね?」
磁石でくっ付いていただけの様な手錠を体の正面で構え、腕に力を入れて引き千切ったみたいに見せる。パントマイムみたいな感じかな?全く重くない物を重いように見せたりする要領で鎖を外す
「お、おぅ……」
ロバさん若干引いてる?いやいや、外せと言ったのはそっちじゃないか……
「次は何ですか?」
「そ、そうだな。次だ!ここの掃除だ!」
一気に難易度落ちて雑用になったぞ?
「これが……あの試練だって言うんですか!?全然違う……」
「にしてもハチ君、楽しそうに掃除するな」
「家が散らかった時に来て欲しいわね」
正直この程度の事なら棄てられた教会の掃除の方が難しいレベルだ
「このくらいでどうでしょう?」
「すっげー、ぴかぴか……っじゃなくて!よくやった。褒めてやろう」
尊大な態度だけど、まぁ言われて嫌では無い
「えっと次は……」
「何かリラックスする為に音楽でも奏でろとかですか?流石に楽器なんて……」
「楽器を持っているのか!?」
おっ?何か食いついたぞ?
「チェロか?バイオリンか?ピアノか?トランペットか?ホルンか?それともリュートか!?」
怒涛の質問フェイズだ……でもこれはある意味チャンスなのかな?
「残念ながらそのどれも持ってないですね……」
「そうか……」
露骨にがっかりしている。やっぱりこのロバさんは楽器に関する何かがヒットしたに違いない。と言う事は、アレが使えるのでは?
「僕が持ってる楽器はこのカンテレ位です」
そう言って、前に自作したカンテレを取り出す
「カンテ…レ?」
「音色的にはハープが近いですかね?」
ロバさんはカンテレを知らなかったみたいなので適当に1曲弾いてみる。ハープと言うか琴と言うか、中々表現は難しい所だが、久々に披露しようじゃないか
「良い音色だ……」
ロバさんには好感触かな?
「ハチ、あんたそんな楽器が弾けるのね」
「珍しい楽器……」
「なんか癒されますね?」
「ぽろろーんってやるの?やらせてー!」
他の皆にも褒められたけど、キリアさんに渡したら一瞬で破壊されてしまいそうだな……ここはちょっと遠慮してもらおう
「ハチさんって逆に何が出来ないんですか?情報屋としてではなく、人として気になりますね」
「出来ない事は出来るようになるまで可能な限り人に見せないようにしてますから」
ゲームという現実よりも色々試せる場所に居るから色々と挑戦して失敗して、また挑戦してと色々出来るだろう。ただ、その過程を見せないだけだ
「我々に理解もあり、音楽にも理解がある。これはもう我々が守る必要も無い。君に託そう」
ロバさん達4体が光の玉になり1つになる。そして僕の目の前にゆっくりと降りてきたのでそれを受け取る
『渾然一体 を入手』