6人の分担
「…………」
正直僕以外全員女の子で何処に行くか分かっていない状態で何か話した方が良いのか、黙っていた方が良いのか分からないのでとりあえず黙って居るけど……中々この空気は辛いから流石に何か喋るか
「ハチさん。これから行く場所は1人手錠で捕まった状態で進むのが他の人が全員楽になるので、手錠を掛けても良いですか?」
「えっ、どういう事……」
ちょっと意味が分からない。手錠掛けられて何処かに連行されるの?
「アイテムがある場所に最短で行くにはまず捕まってる人と連れて行く人。アイテムのある場所への扉を開く離れた位置にあるギミックを稼動させる2人、ギミック稼動中に来る敵を倒す役目の2人の分け方なんですが……」
「最短への道が大分険しいですね……」
ギミックと防衛で4人。で、多分アイテムの所まで行けるのは潜入?の2人って所かな
「で、問題はこのギミックの所なんですが、ガラスで囲まれたような所に入り、4方から来る光を踏み続けないとダメなんです」
それはつまりダンスゲームのアレみたいな事をやってないと扉が開かないと……
「ギミック稼動中は常に敵が出てきてガラスを破壊しようとしてくるので、防衛役はそれをきっちり防げる人じゃ無ければ厳しいです」
えーと……潜入、ダンス、防衛の3つに6人を分けるって事か?で、僕は潜入で手錠を付けて入ると……
「私は踊るのパス」
「じゃあ私踊るー!」
「では私が行こう」
「口惜しいですが、お姉ちゃんの防衛をします」
キリエさんは踊るのをパスして、キリアさんが踊り役を引き受け、ロザリーさんが自分から進んで踊り手になり、アイリスさんがその防衛を担当する。これでギミックと防衛の人は決まったかな
「じゃあ、キリアさんが踊って、キリエさんが守る。ロザリーさんが踊って、アイリスさんが守ると。僕が手錠を掛けられて、チェルシーさんが連れて行く。これで行くんですね」
話し合いの結果を纏めたらこうなるだろう。最初の手錠が本当に要るか分からないけど、これで進める訳だ
「な、なんだこれは……」
フィフティシアからそこそこ離れた海沿いの崖に割と大きな刑務所の様な建物が見えてきた。アレが今回の目的地か
「皆さん良いですか。あの場所に正面から入るのが私とハチさんです。4人はサイドから入ってください」
正面の大きめの門にも外から入ってくるのを阻む為か、中から逃げるのを止める為か、檻みたいな格子があるし、マジで刑務所みたいな場所なのか?
「ではハチさん。これを掛けさせてもらいます」
「はい。ってこれを見せながら進めば良いんですか?」
チェルシーさんが懐から簡易な手錠を取り出し、僕の両手を拘束する……様に見えているが、この手錠。真ん中の鎖が実際には繋がっていない。磁石で鎖同士をくっ付けて拘束している様に見えるだけの物みたいだ。これなら見た目がブレスレットになる前の呪枷の方がそれっぽく見せられたかも……
「とりあえずこれで進むのは問題ありません。ギミックと防衛頑張って下さい」
「任された」
「良いわ。やってあげる」
「いっくよー!」
「頑張ります!」
4人が建物の左右に別れてギミックを解除しに向かった。それじゃあ僕達も動きますか
「連れてきました」
「ほう、早かったな」
「この人でどうでしょう?」
「っ!?」
正面の門に向かって手錠を付けられたまま進んで行くと、チェルシーさんが門番みたいな人と会話をする。何となく面識がありそうだが、何人も連れて来てるのか?
「こ、こんな人間何処で!?」
「私の秘密兵器です」
なんか鼻高々みたいな感じで話しているけど、どういう関係なんだ?
「あの、説明くれません?」
「この人はこの場所に弱い人が入ってこないように守っている門番さんなんです。中はそれなりに危険なので、門番さんが認めた人でなければ入れません」
ある程度実力が無ければ入れない場所という事か
「この人間ならば、行けるかもしれん……頼んだぞ!」
「ここ最近冒険者達が帰ってこないという事件が起こってまして、それがここと関わりがあるみたいなんで、学生とかが入ってこないようにと門番を置き、ある程度実力が必要だと言いました。まさか見るだけで認められるとは……」
認められたのか、ただ怖がっているだけなのか……どっちにしても今の僕の印象は怖いの方向に振れている気がするし、このクエストが終わったらその辺の改善を急いだ方が良いかな
「左右の4人も無事に入れたみたいです。そのまま進みましょう」
横面の入り口にも門番は居たのか分からないけど、あの4人は止められる事は無いだろう
「そもそもこの手錠の意味を教えてくれません?」
飾りの様な手錠。これを装備する事で何か変わる事があるのか……
「その手錠を相手が見る事で私では無く、ハチさんが今回の挑戦者だと理解してもらう為ですね」
手錠があるからターゲットが僕になるのか。単純にターゲット固定するだけならこの両手が自由な手錠を掛ける意味も分かる
「ハチさん。まずは小手調べが来ます」
チェルシーさんがそう言うと建物の中から大型犬位のサイズの丸い玉が転がってきた
「おー、すごい……」
丸い玉が転がって僕の前で止まったと思ったら、その玉がガチャンと開き、本当に犬みたいな見た目になった。こんな玩具あったよなぁ……