ジェイドさん2コマ
「くっ……ふぅ…」
集中力が途切れたら終わりだ。が、ここでさっきの様に力で無理矢理抑える急ターンはいたずらに体力を消費するだけだし、一度冷静になろう。今までと一緒で力は必要無い
「なんだ……この動き!?」
「ど、どういう動きだこれ!?」
「動きが全然読めねぇ!?」
脱力して重心の赴くままに移動する事で、一歩踏み出すごとに進む方向が変わったりする移動法をとると相手はほぼほぼ対応出来てない。さっきまで一人で防衛ラインを作るのは自分の行動を完全に制御出来ないから1方向に動いて事故を減らすという方法を取っていたけど、無駄に体力を使うし、重心移動というかなり楽な移動をするようになったからもう無駄な反復横跳びをしなくても良いのは助かる。惑わされてる間にささっと捕まえよう
「皆!待たせたな!」
「「「ジェイドさん!」」」
おー?ジェイドさんが出てきたぞ?さっきキリキリ姉妹によって悲しみの捕獲をされていたけど、誰か復活させたのかな?
「デバフ防御の準備に手間取ってしまったが、俺が皆を守る!」
デバフの対策をしていたらしいジェイドさんだが……本当に対策してるのかちょっと調べてみるか
「あぁそうなんですか【レスト】」
「俺が抑え……」
えぇ?効いたんですけど?
「……あぁもしかしてそういう事か。検証のお手伝いありがとうございます。それじゃあお疲れさまでした」
かっこいい登場をしたけど、秒で捕まえる事になってしまったジェイドさん。僕の中である仮説が出来た。【レスト】は回復やバフの効果がメインで、寝てしまう効果は単なる付随効果だからデバフでは無く、デバフ対策していようと普通に効いた……それが一番説明としてしっくりくる。おっ?もしかしてデバフが効かない相手でもバフは効くって事はボス相手でも使えちゃうんじゃないかこれ?
「え、ジェイドさん瞬殺されたんだけど……」
「おいおい、瞬殺かよ……」
「デバフ対策とはいったい……」
「はい、次は貴方達の番だよー」
「「「「「あっ、死んだわ」」」」」
ジェイドさんがあまりにもあっけなさ過ぎて、皆感情がちょっと消し飛んでいる。ジェイドさん自身は何も悪くないけど、これ……大丈夫かな?もうやった後だけど、ジェイドさんの心に深い傷を負わせてしまったのではないだろうか……
「デバフが効かないようにしてたはずなのに、睡眠が効くってどういう事だ!チートか?」
「まぁ、どんな対策をしていたのか知りませんが、対策が足りなかっただけでは?」
会話をする必要は無かったかもだけど、チートを疑われたので、拒否だけしておく。自分が理解出来ない行為を全部チートとか言って片付けるの止めて欲しいなぁ。でも、こういうチートと勘違いされるってある意味そのくらい強いって言ってもらってるような物だからある意味誇っても良いだろう
「さぁ、時間も無くなってきましたよ?」
空に浮かぶ砂時計を指差し、時間がもう無い事を教える。あれだと本当に10分あるか無いかじゃないだろうか?
「くそっ!もう突破出来る手立てなんて無いぞ!」
「どうやって突破すれば良いんだよ」
「もう、無理だよ……」
あ、ヤバい。心が折れた人が出て来てしまった。こうなると諦めが伝播してしまうから何か手を打たないと……
「さて、では残った人達を捕まえ……うっ!?」
そこまで言った所で一度倒れて【決闘領域】を消去する。希望が無いイベントでつまらなかったと言われてしまってやっぱりプレイヤーを運営側に参加させたのは失敗だったと言われてしまうかもしれないのは忍びない。僕がここで誰一人通さないのが正解なのか、それとも何十人、何百人に突破されるのが正解なのか……とりあえずここで最後の希望を与えよう
「な、なんだ?」
「何か魔法陣が消えたぞ?」
「というかなんであの人は倒れて……」
「ど、どういう事?あの人はいったいどうしたんだ?」
さて、どういう理由を付けるべきか……急に倒れた事に理由を付けなければ納得出来ないだろうし、疑ってこっちに来ないだろう
「ジェイドさんめ……やってくれたなぁ?」
ジェイドさんを2コマ漫画みたいな捕まえ方をしてしまったから、ここはジェイドさんの信頼回復とかを考えて、あの人が何かやって僕が倒れた事にしよう。これなら「ジェイドさん雑魚じゃん」みたいな風潮にはならずに、「自分を囮にして相手を弱体化させたヒーロー」的な扱いに出来るだろう。捕まった後で既に自分で「何も出来ませんでした」と言いふらして無ければこれで、ジェイドさんの救済は出来たかな?
「ジェイドさん……?まさかあの人が何かやったのか!」
「さっきのめっちゃダサいと思ってたけど、あの時にあの人に何かしていたのか!流石や!」
「とりあえず急げ!」
立ちあがるのに時間を掛ける。体に痺れがあるような演技で動きだせば、逃亡者達も急ぐだろう。というか、別に今は脱出チャンス的なイベントでも何でもないから、脱出には時間が掛かるんだけど……そこは皆覚えているかな?
「仕方ない……こうなったら見せてやろう」
ポン君を呼びだし、最後の変身をする。希望は残すが、やっぱり絶望が迫って来る緊張感が無いとね?