退路 断たれし者達
「あ、キリエさんとキリアさん。調子どうですか?」
「あんまり来なくてちょっとつまんなーい」
「全く、雑用を押し付けるんじゃないわよ?」
「それじゃあ良い報告が出来そうですね。一応逃亡者達に脱出地点1か所に集まって最終決戦をしようって提案してきたんで、それなりに人が来ると思うんですけど、行きます?」
「「行く!」」
人が来なくてつまらないようだったキリエさんとキリアさんに最終決戦をすると言ったら目が輝いた。この2人、暇を楽しめないタイプだな?
「それじゃあまた運びますか?」
「えぇ、面倒だから頼むわ」
「またあれやるのー?やってやってー!」
なんかキリアさんって戦闘中は結構ぶっ飛んでて怖いけど、こういう時は子供っぽいよなぁ。高い高いする時のお父さんってこんな感覚なのかな?
「「じゃ、行きまーす」」
2人を運んで脱出地点に向かう。多分ハスバさんは既に準備はしているだろうから急がないと……
「流石だな……見た目はふざけている様に見えても中身は一流か……」
「君も触られたらアウトの環境の中で良くやってるよ!」
「「はぁぁぁ!」」
なんか枯れ井戸から出たらハスバさんとジェイドさんが熱い展開を繰り広げていた。これは横槍入れても良いのかな……
「何ボケっとしてるのよ?」
「うぐっ!?」
「アハッ!もーらい!」
「……」
僕に持たれた状態のまま、キリエさんがジェイドさんの足に向かって金属を浮かせてぶつけるという中々痛そうな攻撃をして、キリアさんが僕の体を踏み台にしてジェイドさんを背後から捕らえた。やめて、そんな悲しそうな目でこっちを見ないでハスバさん
「この程度で苦戦してたらこれからのショータイムなんてやってられないわよ?」
「大勝負だよー!」
「……そうだな。今はどれだけ早く捕まえられるかが勝負だ。一人に時間を掛けるべきでは無かったな」
大人だなぁ……絶対熱いバトルって感じで良かったのに
「そういえばあの人達パーティでしたけど……」
「ハチ君がパーティプレイを崩壊させた後にチェルシーを捕まえて、その後レイカを見つけたから捕まえて、ここでジェイドを見つけたから捕まえようとしていた所だな」
「と言う事はまだ、ダイコーンさんが生き残ってるかもですね……」
召喚獣達は全て捕まえたとしても、まだダイコーンさん本人がバイク装備のまま残っている。これはまだ熱い展開が残ってるかもしれないぞ……?
「ね!ね!あれ来たんじゃない!?」
「おっと、思っていたよりも早いですね?もう少し遅くに来るものだと思っていましたが」
「そりゃあ、ハチがロケットばっかり破壊して回ってたからでしょ?気が付いてたか知らないけど、砂時計の底に丸いマークが描かれてたけど、多分ロケットが壊れるたびに消えていったわよ?」
え、初耳……
「私にはそのマークは見えなかったな……」
「僕もです」
「えー?私にもマークは見えたよー?」
「と言う事は2人にはそのマークが見えたと……え、じゃあもうそのマークって無いんですか?」
「「無い」」
と言う事は、もう緊急脱出出来ない?おー、じゃあもうこっちに来るしかないんだな?
「それじゃあ皆さん。ここを突破されないように頑張りましょうか。布陣はどうします?前行きたいとか後ろに行きたいとかあります?」
「前!前が良い!」
「私は中間辺りか後方が良いわ」
「前衛で良いかな?」
前衛2、後衛1か
「とりあえず、僕は脱出地点の手前で陣取る最後衛でも良いですかね?僕の最後の手札的にそこに配置して周りに人が居ない方が色々使えるんで。先に皆さんにバフも掛けますが、多分途中で切れます。そのくらい相手は多いでしょう」
エリアに残った人が全員来ると見ても良いだろう。多分今度は1000人規模で来てもおかしくない。僕がバフを掛けたとしても時間切れになるくらい人が来るだろう
「とりあえず全員にAGIのバフで良いですかね?」
「速さがあれば大抵は何とかなる」
「足速くしてー」
「私はDEXにして。撃つのにも操るのにも使えるから」
「分かりましたー」
ハスバさんとキリアさんがメインの捕縛係で、キリエさんが足止めのコントロール、僕は最後の壁として頑張ろう。さて、MP色々使っておかないとねぇ?
「これがラストバトル……」
「露出が激しい少女2人にスク水の変態1人、そして奥には白ローブの裏ボス……」
「流石に分身はもう使えない……と思う。というか使えないと強過ぎる」
「あの人もそうだけど、まずは手前の3人超えないとだろ……」
「全員で魔法攻撃すればなんとかなるんじゃないか?」
「ヒャッハー!良いかお前ら!後ろは振り向くな!前だけ見て突き進め!仲間が捕まったとかに意識を割くと次は自分の番だ!」
「「「はい!」」」
沢山集まった逃亡者達の先頭に見覚えのあるバイクに乗ったモヒカンが居る。やっぱりダイコーンさんはこういう時に頼りになるって皆思ってるんだろうなぁ
「ヒャッハー!良い返事だ!まずは道を切り開くぞ!魔法部隊!」
「「「「「ヒャッハー!」」」」」
うわっ、ローブを着たモヒカン達が一斉に魔法を使い出した。岩とか炎とか風とか水とかの球体がこっちに向かって飛んで来た。これは3人を守った方が……
「このくらいならば」
「とりゃー!」
「丁度良いから使わせてもらうわね?」
炎と風の球体をハスバさんが大剣モードの四王剣フォー・オブ・ア・カインドで切り裂き、キリアさんがフランキスカを投擲して、水の球体を破壊していた。とりわけヤバいのがキリエさんで、飛んで来た岩の球体を念動力的なパワーか何かでコントロールを奪取。そして他の攻撃に対して盾の様に使用していた。あれはある意味魔法版の【ディザーム】に近いんだろうか?何はともあれ僕が3人を守る必要はなかったみたいだ